まちづくりデザインワークス


そんなに悪い建物じゃないんだが・・・・

 大学通り北側

 すごい裁判になっているので、さぞかしひどい建物かと思って内心期待していたのだが、実はそうでもなかった。私も、業界ボケしていたと言うべきか。開発業者も「こんなに配慮したのに、とんだ災難だ」と思っていることだろう。
 各地で紛争になっているマンションは、これよりよっぽどひどいのだ。それでも裁判になったりしない。それが「紛争の相場」なのに、ここでは都市計画変更まで実現し、さらに裁判で争っている。これは、地域住民の力のほうを評価すべきなのだろう。
 一方、開発業者側は、どうして設計変更しなかったのだろう。意地になって工事を続けて建物は完成したが、販売はどうするのか。それにしても、既存不適格で建て替えできないマンションを売るとは・・・ 

大学通り南側

これって単なる「業界の常識」だったのか

 

  • 開発計画が明らかになってから、それを阻止するために住民が都市計画変更で対抗する。というのは、米国では当たり前のようだが、日本では珍しい。ようやくここまで来たかと思ったが、司法判断は揺れている。駆け込み着工に対して是正を命令しない都の対応は違法と判断したかと思えば、一方で市に賠償を命じるという有様だ。
  • この経過で思うのは、都市計画変更前にわずかでも着工してしまえば、当初計画のとおり工事を続ける権利が得られるという従来からの建築行政に疑問が生まれたことである。これって単なる「業界の常識」だったのか。

大学通り側歩道沿い

歩道側公開空地は広く取られている

 

  • 大学通り側の歩道沿いは、第一種低層住居専用地域だが、公開空地が広く取られていて、歩いていて圧迫感は感じない。マンションの1階から歩道とのレベル差も大きいので、歩行者の視線が気になるようなことはなく、これだけ広く空地が取れれば立派なものである。小さなところだが、ここにはデザインが感じられる。
  • だが、メインの大学通り側から各戸にアプローチを付けるタウンハウス的な造りに比べると、集中型のエントランスを奥まったところに付けているので、いかにも地域に背を向けた感じがする。この通り沿いにある他の住宅だと、1階は「ちょっと気の利いたお店」が多いというのに、これじゃ少しもったいないと思った。

南側鉄塔下

鉄塔多摩橋線のおかげで南側も広い

 

  • 北側は斜線制限がそのまま建物の形状を形作るように建築制限ぎりぎりで造られており、それ故、北側車道に沿って歩いても建物の圧迫感は感じられない。
  • 同様に、南側も、たまたま東電の鉄塔多摩橋線が通っているために建築制限があって、その結果、かなり広い駐車場、広場状の敷地内空地になっていた。
  • 要するに、この建物は、敷地を取り囲む周囲の道路境界からは、かなり遠く離れたところに壁面があることになる。その点で言えば、十分に近隣の環境に配慮していることにはなるだろう。

東側

だけど、近隣から見ると明らかに異形の存在

 

  • こうしてみると、この建物の外観は、外側から与えられた各種の建築制限で決まったかのようである。敷地が決まって、法規を調べて、建築制限が決まると、あたかも自動的に外観が決まったのかと思うくらい、素直に「法律を遵守している」のだ。設計コンセプトは「法律ぎりぎり」ということのようだ。
  • だけど、国立駅前から1,100mというこの場所にあって、これだけのボリュームの建物はこれ1棟だけである。駅前からここに来るまで、こうした高い建物を見ていない。近隣から見ると明らかに異形の存在である。中低層のタウンハウスで同じような戸数を稼ぐという計画でもよかったかと思うが、検討はしてみたのだろうか。 

つみ重ねたものは何ですか?

果たして売れるのか? そして、売った後の責任は?

 

  • 司法判断が割れている要因のひとつには、近隣・地域住民の地区レベルのまちづくりルールを重視するか、それとも、大東京都・都市住民の市街地レベルの標準ルールを重視するかという考え方の違いがあるかもしれない。裁判官の住んでいるところにだって、これよりひどい建物はいくらでもあるだろうから、それが許されるのに、「ここでは」これが許されない理由となると、裁判官には難しい問題になるだろう。
  • だが、ビジネスとしては、住み替え層である近隣住民をターゲットとして考えていないようで、この点が不思議だ。近くの住民にとって魅力を持たないような計画のあり方は、すなわち近隣の中古住宅との競争を放棄したも同然ではないか。都心でもなく、駅からも遠いところで、しかも低層住宅が多い隣近所とは明らかに異質なマンションが、果たして売れるのか?
  • そのうえ既存不適格である。現況と同じように建て替えることのできない建物なのだ。値引きして売れば、売った側の責任を果たしたことになるのかどうか。残念ながら、開発業者には、値引きした分の差損を裁判で取り戻そうという姿勢しか見られないようである。(2002.3.6)

違法建築買うのは誰?

とりこわし裁判中です



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