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TOP すずめのさんぽ 2004年 8月19日
 ミステリー三昧(仁木悦子)
これは夏だからってわけではなく、いつものこと。
何せ、持っている小説の約95%がミステリーだし。
(ちなみに全く無いジャンルは「恋愛小説」)

実家から持ち帰った本の中に、懐かしい作家の文庫本があった。

仁木悦子。

作家として最初に江戸川乱歩賞を受賞した人であり、日本の女性推理小説家としては草分け的(いや、一番目か?)な存在である。(1986年、58歳で病没。)
高校時代に、本格推理の面白さを私に教えてくれた日本人作家の一人である。(もう一人は泡坂妻夫だ。)
最近は江戸川乱歩賞全集に載る受賞作「猫は知っていた」や、稀に氏の作品の探偵役のうちの二人である仁木兄妹の作品集が店頭に並ぶだけになってしまっているのが、寂しい限りである。
手元にあるのは、角川、講談社、光文社から出版された文庫本、26冊。これらを入手するのは、古本屋でも困難になっていそうだ。

あれから十数年、すれっからしのミステリー読者になりはてた私には、「毒」の薄い彼女の作品はもう楽しめないかと思ったが…。

…やっぱり面白いや。

奇天烈なトリックも、強烈な探偵役もなければ、鋭い社会風刺もないのだが、その分、飽きがこない。
華麗な本格推理がゴージャスなケーキならば、こちらは醤油せんべいと言ったところか。
もちろん、今の時代には無いものが存在し(国鉄等)、必須のものが存在しないが(携帯電話等)、本質的に「今の時代では成立しない」という物語が少なく、いつ読み返しても、「ああ、わかる」と登場人物に共感できる。
何よりも、日本語が練れていて簡潔明瞭。読みやすい。(この辺り、昨今のやたらに長い小説を書く諸氏に見習ってほしいものなのだが…。大概は半分の分量で済むと思うぞ、個人的には。)
物語の雰囲気からコージー系ミステリとみなされがちだが、構成や内容は晩年の作品まで硬派な本格推理だったと思う。

今ひとつ不当に評価が低いような気がするので、再評価と全集の刊行を熱烈希望。