東京都青少年条例騒動の歴史


2000年:区分陳列を義務化へ

【1.コンビニ本部へ要請】

 東京都生活文化局女性青少年部長はアダルト雑誌の区分陳列が不十分だとして1999年11月30日、全コンビニエンスストア本部に「青少年に好ましくない雑誌等の取扱いについて(要請)」と題する文書を送付した。内容は「現況をみますと、いわゆるアダルトものの雑誌が多数見られ、区分陳列も徹底していないなど、青少年の健全育成の観点から非常に憂慮している」「都民からの苦情、通報等も多く、関心も高まっております」として、次の事項の徹底を求めるものだった。

<「青少年に好ましくない雑誌等の取扱いについて(要請)」より抜粋>

1 指定雑誌等の販売禁止
 東京都が不健全図書類として指定した雑誌等は、18歳未満の青少年に販売しないで下さい。

2 区分陳列の徹底
 青少年に好ましくない雑誌等については、成人コーナーとして陳列棚を明確に区分し、『18歳未満の方は、閲覧及び購入することはできません』等、見やすく表示して下さい。

3 区分販売の徹底
 東京都の指定した雑誌や「成年向け雑誌」マーク付雑誌のほか、青少年に好ましくない雑誌については、必ず年齢確認し、18歳未満の青少年に販売しないで下さい。

4 従業員等への周知徹底
 貴社の各店舗におかれましては、経営者をはじめ、従業員など、雑誌類の販売等に従事する全ての方々に、本要請の趣旨及び内容を周知徹底するよう、ご指導方お願いします。

 また東京都が公表した資料によると、2000年2月24日の東京都青少年健全育成審議会で事務局は「区分陳列の徹底等、また状況等につきまして、この2月から来年度の5月にかけまして、都内コンビニエンスストア、大体5,400店ございますが、そのうちの400店を目標に実態調査をしていきたい」と報告。第23期東京都青少年問題協議会も同年3月31日の総会で「不健全図書類の区分陳列を徹底し、青少年に見せない、販売しない取組が必要である」と意見具申したという。(つづく)  
<東京都の慎重姿勢を批判した東京新聞>
 『東京新聞』1999年7月26日付「「捜査現場無視」募るいら立ち 警視庁の「完全自殺マニュアル」通報」という記事は、「警視庁は過去五年間に、年間六百四−千百八十二冊を都に通報したが、実際に指定されたのは九−二十冊。指定率は二・九−〇・八%でしかなく、大半が"徒労"に終わっている」などと指摘。通報に対する東京都の慎重姿勢を批判していた。記事掲載後に指定が増加していることから、この記事がコンビニ本部への要請にも影響を与えた可能性がある。

(2012/10/3 06:30)

【2.実態調査のポイント】

 審議会で報告があった実態調査の結果は2000年7月28日に公表された。発表によると、2000年2月〜6月に都内のコンビニエンスストア422店舗(23区内251店、多摩地域171店)を対象に行われた調査では、成人誌の陳列状況や青少年への販売等を断る旨の表示の有無など、区分陳列に関する項目と、青少年条例およびコンビニエンスストア本部に宛てた要請文の周知度を確認すべく「青少年課職員が調査店舗を訪問し、聞き取り調査を行うとともに店内を実査した」という。

 発表資料では、(1)成人誌を全く置いてないコンビニエンスストアは調査店舗422のうち15店舗、(2)成人誌を独立棚に陳列するなど区分陳列を完全に実施していたのは1店舗のみ、(3)成人誌の区分陳列を実施していない店舗は約7割―の3点が「調査結果のポイント」として強調されていた。なお、実態調査の目的については「東京都青少年問題協議会で検討が進められている『東京都青少年の健全な育成に関する条例』の改正などのための資料とする」と明記されていた。(つづく)

  <成人向け雑誌の区分陳列等実態調査結果>
1 区分陳列状況
  調 査
店舗数
成人向け
雑誌なし
完全実施 概ね実施 一部実施 未実施
合計

422
(100.0%)

15
(3.6%)

1
(0.2%)

26
(6.2%)

83
(19.7%)

297
(70.4%)

※区分陳列の状況は「陳列棚の位置、雑誌の配置、ポップの状況などを総合的に判断して評価した」という。
※ポップとは「雑誌の立ち読みや青少年への販売等を断る旨を表示した掲示物」のことだという。

2 「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の周知度
 

店長

家族

従業員

アルバイト

合計

知っている

201
(85.5%)

19
(86.4%)

61
(78.2%)

53
(60.9%)

334
(79.1%)

知らない

34
(14.5%)

3
(13.6%)

17
(21.8%)

34
(39.1%)

88
(20.9%)

合計

235
(100.0%)

22
(100.0%)

78
(100.0%)

87
(100.0%)

422
(100.0%)

 
 

3 東京都の要請文の周知度
 

店長

家族

従業員

アルバイト

合計

知っている

86
(38.4%)

7
(33.3%)

17
(22.7%)

6
(7.3%)

116
(28.9%)

知らない

138
(61.6%)

14
(66.7%)

58
(77.3%)

76
(92.7%)

286
(71.7%)

合計

224
(100.0%)

21
(100.0%)

75
(100.0%)

82
(100.0%)

402
(100.0%)

※調査店舗422店のうち、コンビニエンスストア本部に要請文を送付していない個人経営店等20店は除かれている。

東京都生活文化局「コンビニエンスストアにおける成人向け雑誌の区分陳列等実態調査結果について」(2000年7月)をもとに作成。

(2012/10/10 06:30)

【3.青少年に関する世論調査】

 実態調査と平行して青少年に関する世論調査も行われている。発表によると、調査は青少年の健全育成を阻害する要因や青少年を取り巻く社会環境、家庭環境、学校環境などへの意識・要望を調べるため、無作為に選ばれた満15歳以上の都民3000人を対象に実施。調査会社の調査員が2000年6月20日〜6月25日にかけて個別訪問し、2147(71.6%)の有効回答を得たという。調査結果のうち社会環境に係る速報版は2000年8月23日に、全体版は10月13日に公表された。

<1 青少年への影響>

 青少年が見るつもりがなくても、性表現や暴力表現を目にしてしまうことがあります。次にあげるものについて、あなたはどう思いますか。(n=2,147)

(1)テレビや映画 略

(2)ビデオ 略

(3)雑誌やコミック誌

  問題がある 多少問題がある あまり問題がない 問題がない わからない 問題がある(計) 問題がない(計)
青少年(65) 16.9% 30.8% 36.9% 13.8% 1.5% 47.7% 50.8%
青少年以外(2082) 36.6% 39.9% 16.4% 6.0% 1.1% 76.5% 22.4%
全体(2,147) 36.1% 39.6% 17.0% 6.2% 1.1% 75.6% 23.2%

(4)電車の中吊り広告 略

(5)インターネットを利用した情報 略

<2 成人向け雑誌>

 コンビニエンス・ストアでは、成人向け雑誌が一般の雑誌と一緒に並べられ、青少年が日常的に見ることができる状況もあります。あなたは、このことについてどのようにすべきだと思いますか。(n=2,147)

  成人向け雑誌は、コンビニエンス・ストアには置かないようにする 成人向け雑誌は、区分して別の場所に置く 成人向け雑誌は、自由に中を見られないようにする 特に問題はない その他 わからない
青少年(65) 10.8% 18.5% 35.4% 33.8% 0% 1.5%
青少年以外(2082) 32.3% 29.3% 22.0% 13.4% 1.3% 1.8%
全体(2,147) 31.6% 29.0% 22.4% 14.0% 1.3% 1.8%

<3 自動販売機> 略

<4 不健全図書>

 都では、青少年に対し著しく性的感情を刺激したり、はなはだしく残虐性を助長する図書を「不健全図書」として指定し、販売を規制しています。あなたは、今後どのようにしていけばいいと思いますか。(n=2,147)

  行政による規制を強化する 事業者の自主規制を徹底する 特に問題はない その他 わからない
青少年(65) 40.0% 36.9% 10.8% 0% 12.3%
青少年以外(2082) 46.6% 42.8% 6.4% 1.2% 3.0%
全体(2,147) 46.4% 42.6% 6.6% 1.2% 3.3%

東京都政策報道室「青少年に関する世論調査<速報版>―青少年を取り巻く社会環境―」(2000年8月)をもとに作成。

 速報版では「コンビニで、成人向け雑誌が一般の雑誌と一緒に並べられている状況については、「コンビニには置かないようにする」など、何らかの対策を求めている人が8割を超えています」という結果が示された。これらの調査を踏まえ、第24期東京都青少年問題協議会は2000年12月20日、東京都に「成人向け図書類の区分陳列を健全育成条例に明確に規定し、その違反に対しては何らかのペナルティを課すことにより実効性を担保することが望ましい」と提言している。  
<都内コンビニエンスストア出店状況>
 東京都生活文化局「コンビニエンスストアにおける成人向け雑誌の区分陳列等実態調査結果について 」(2000年7月)によると、1999年6月末現在の都内コンビニエンスストア出店状況は、日本フランチャイズチェーン協会の加盟店が4514(83.5%)、非加盟店が894(16.5%)だという。日本フランチャイズチェーン協会は2002年4月から東京都の諮問候補図書について意見を述べる「打合せ会」に参加。同年10月からは東京都青少年健全育成審議会の委員を務めている。

(2012/10/17 06:30)

【参考:朝日新聞の誤報】

 『朝日新聞』(東京版)2012年11月10日付29面に掲載された「チェック石原都政 表現者萎縮の可能性を危惧」という記事には「都は2004年、都指定の「不健全図書」を子どもが立ち読みしないよう、包装と区分陳列を義務づけた」とある。しかしながら、第24期東京都青少年問題協議会の提言(本文参照)に基づき、東京都が区分陳列義務化の条例案を都議会に提出したのは2001年2月である。条例案は3月に原案通り可決され、区分陳列は同年10月1日から義務化されている。

 つまり、区分陳列義務化を「2004年」とする朝日新聞の記事は誤りである(包装義務化は2004年3月可決、同年7月1日施行なので間違いではない)。なお、記事には「石原氏は就任後、青少年対策に力を入れる」とある。ただし、東京新聞が「不健全図書」指定に慎重な東京都を批判していたこと(1999年7月の記事掲載後に指定増加)や、出版業界が石原慎太郎知事らに書籍の買受け規制を要望していたこと(2004年に規制新設)など、規制強化運動についての説明は一切ない。

<2001年10月1日から施行された区分陳列規制>

 

旧規定

新規定(2001年10月1日施行)


(指定図書類の販売等の制限)
第9条 (略)

2 何人も、青少年に指定図書類を閲覧させ、又は観覧させないように努めなければならない。

(指定図書類の販売等の制限)
第9条 (略)

2 図書類販売業者等は、指定図書類を陳列するとき(自動販売機又は自動貸出機(以下「自動販売機等」という。)により図書類を販売し、又は貸し付ける場合を除く。)は、東京都規則で定めるところにより当該指定図書類を他の図書類と明確に区分し、営業の場所の容易に監視することのできる場所に置かなければならない。

※第9条第2項の規定に違反した者は警告の対象となり、警告に従わず、なお、第9条第2項の規定に違反した者は「30万円以下の罰金又は科料」。


(指定図書類の区分陳列の方法)
第14条 条例第9条第2項の規定により指定図書類を他の図書類と明確に区分する方法は、次の各号のいずれかの措置をとり、かつ、指定図書類を陳列する場所(第一号に規定する措置をとる場合にあつては当該場所の入口、第三号に規定する措置をとる場合にあつては当該仕切り板の表面)の見やすい箇所に、容易に判読できる色調及び大きさの文字を使用して、当該場所に陳列されている図書類は、青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は閲覧させ、若しくは観覧させることが制限されている旨の掲示(以下この条において「青少年制限の掲示」という。)をすることとする。ただし、第五号に規定する措置をとる場合における青少年制限の掲示については、これを要しない。
一 営業の場所に、間仕切り、ついたてその他の方法により容易に見通すことのできない場所を設け、当該場所に指定図書類を陳列すること。
二 指定図書類を、他の図書類を陳列する陳列棚の外周から60センチメートル以上離れた陳列棚に陳列すること。
三 陳列棚の指定図書類を陳列しようとする棚板の前面と直交する鉛直面上に、当該棚板の前面から二十センチメートル以上張り出した仕切り板(透視できない材質及び構造のものとする。)を設け、指定図書類を、仕切り板と仕切り板との間に陳列すること。
四 指定図書類を、床面から150センチメートル以上の高さの位置に、背表紙のみが見えるようにしてまとめて陳列すること。
五 前各号に掲げる陳列方法をとることが困難な場合は、指定図書類をビニール包装、ひも掛けその他の方法により、容易に閲覧できない状態にして陳列すること。

(2012/11/14 06:30)


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