■横浜市

グレーゾーン対策も検討へ 第2回販売防止対策検討委員会

 横浜市が設置する「有害図書の青少年への販売防止対策検討委員会」の第2回が2004年9月7日、横浜市庁舎で開催された。調査会社のまとめた「コンビニエンスストア販売実態調査」などをもとに議論が進められ、条例に規定する「有害図書」だけでなく、成人誌やグレーゾーン誌の販売防止対策を検討することが確認された。第3回は10月上旬に開催される。

条例強化に「賛成」 コンビニ業界意識調査

 議論の基礎となった販売実態調査では、「有害図書」の有無や陳列方法に加え、チェーン本部や店主を対象とした意識調査も行われた。委員会で配布された資料によると、条例を厳しくすることへの質問には、「賛成である」「遵守する」という答えが多く、出版元やグレーゾーン誌への規制強化を求める意見もあった。厳しくすると万引きが増えるのではないか、という指摘はあるが、規制強化に反対という意見は見当たらない。

 さらに、調査会社が行った資料説明によると、「グレーゾーンに対して行政主導で個別指定してもらった方が良い。どれが有害図書か明確になる」という意見も多かったという。たしかに、分量基準を満たせば自動的に指定される包括指定と異なり、個別指定は指定図書の具体名が示される。また、分量による基準がないため、包括指定の基準に達しない図書についても指定することができる。グレーゾーンを規制するには“好都合”な制度だ。

 この他、売上や集客効果、書店との役割分担などを問う項目もあった。グレーゾーンを含めた「有害図書」の売上は、雑誌全体の10%前後という回答が多く、集客効果については、「ない」という答えがある一方、「繁華街が主力」などの答えもあり、立地条件に左右される傾向が強いようである。役割分担については、「考えていない」というものも多いが、「指定図書・表示図書はあつかわない」という業界の自主規制を意識した回答もあった。

(2004/9/15 07:45)

「成人誌」取扱いガイドライン

 コンビニ業界には、日本フランチャイズチェーン協会(JFA)が作成した「『成人誌』取扱いガイドライン」という自主規制がある。このガイドラインでは、「(社)日本フランチャイズチェーン協会加盟コンビニエンス各社はコンプライアンスに則り、健全な青少年育成及び社会形成を図るため「成人誌」の取扱いについて下記のとおり自主ガイドラインを定め、これを遵守する。(実施日:平成16年7月1日)」として、次の6項目が掲げられている。

1.各都道府県の指定図書類及び出版倫理協議会の表示図書類は取扱わない。
2.それ以外の雑誌については、各都道府県青少年保護育成条例で定められた未成年者(18歳未満者)への販売・閲覧等の禁止に該当する雑誌及びそれらに類似する雑誌類を「成人誌」と呼称する。
3.前項で定義された「成人誌」のシール止めをされていない雑誌は販売しない。
4.「成人誌」を陳列する際は、上下段の区分(仕切り)什器を導入し、前面に18歳未満の方への販売・閲覧禁止の表示板を取り付ける。
5.「成人誌」をサンプルディスプレイに使用しない。
6.未成年者(18歳未満者)への販売・閲覧防止に努め、年齢確認の徹底を図る。

注1 「シール止め」とは、出版社が幅3センチほどの透明のシールで「成人誌」の表紙と裏表紙をつなぎ、中を見られなくする自主規制である。コンビニ業界の要請を受け、各出版社の判断で行われている。

注2 「サンプルディスプレイ」とは、ガラススクリーン側(外側)に向けた陳列をいう。

 委員会では、上記ガイドラインや各チェーンの取組み状況をコンビニ業界の代表が報告した。「これよりきついガイドラインを作っているところもある」といい、また、出版社が行っている「成人誌」のシール止めについては、「JFAから(出版業界に)申し入れをした」と説明。書店の代表も、「出版社はしたくない。コンビニの努力だ」と解説した。なお、出版業界の代表は当日欠席していたため、シール止めに対する見解を聞くことはできなかった。

 シール止めの説明を受けた委員からは、「シール止めで(区分陳列義務を)逃れてしまうことはないのか」という質問があった。これに対し、市側は「シール封印で完結するものではなく、(県青少年保護育成条例施行規則の)ビニール包装、ひも掛けとはみなさない」「書店が区分するときの目安。それ自体が区分かというとそうではない。条例とは一線を画し、あくまでも自主規制だ」と述べ、シール止めは区分の目安にすぎない、という認識を示している。

注3 回答した人物については確認ができなかった。委員会には県職員らがオブザーバーとして参加しているため、市職員の発言ではないかもしれない。

(2004/9/17 07:35)

どこまでが「有害図書」か

 別の委員からは、コンビニ業界の自主規制を疑問視する声があった。チェーン本部へのヒアリング結果には、「前提として『有害図書』は取扱わない」という答えがある。しかし、「うちの近所には有害図書が置いてあった」というのだ。どこまでが「有害図書」で、どこからが「成人誌」か――。書店の代表が「統一見解をつくらないと」と提案する一方で、ヒアリング結果にある「有害図書」の定義を明らかにするよう、市民局長が調査会社に詰め寄る場面もあった。

 こうした議論を受け、青少年課長は、「調査員は(条例の)有害図書として調査している。有害図書の基準が分かりにくいという結果を反映している」と説明した。県条例に基づく「有害図書」とは、個別指定されたもの、または包括指定の基準に達していたものである。現在ほとんど行われていない個別指定は、審議会が「有害図書」か否かを判断し、指定図書の具体名も示される。これに対し包括指定は、販売店が「有害図書」か否かを判断し、指定図書の具体名は示されない。

 したがって、分かり易い「有害図書の基準」とは、個別指定だということになる。コンビニ業界の「グレーゾーンに対して行政主導で個別指定してもらった方が良い。どれが有害図書か明確になる」という意見も、こうした事情を反映している。だが、個別指定は、分量に係りなく指定でき、また、写真や絵だけでなく、文章も規制の対象となる。さらに、性表現に限らず、様々な表現を規制することも可能だ。個別指定には「有害図書」の範囲を広げかねない、という危険がある。

<個別指定と包括指定の規制範囲――書籍または雑誌の場合>

  個別指定 包括指定
性表現

暴力表現など

写真、絵

文章

分量基準(下限)

なし

あり

(2004/9/22 07:25)

グレーゾーン対策も検討へ

 「有害図書」の範囲は、販売防止の対象を確認した際にも問題となった。ある委員が「成人図書やグレーゾーンを視野に入れるのか」と確認したところ、市民局長は委員会の名称に使われている「有害図書」の定義について、「条例に規定されるもの以外を含めた広い意味で使っている」と述べ、さらに「中高生向けの図書にもどぎついのがあるが」という別の委員からの指摘に対しては、「そういうものも含めて(販売防止対策を)検討する」と答えている。

 県の条例では、「性的感情を著しく刺激」するものと「粗暴性又は残虐性を甚だしく誘発し、又は助長」するものであれば「有害」指定できるとされている。ところが1999年10月には、鶴見済『完全自殺マニュアル』(太田出版、1993年)が個別指定されている。「条例に規定されるもの以外」を指定した解釈指定の典型だ。横浜市も県にならい、「有害図書」の定義を「広い意味」で使うこととなれば、条例上は「有害図書」と考えられない図書まで規制される可能性がある。

 委員長は最後に「自主規制をお願いするだけでなく、ここでどういうことができるか意見を出してほしい。何が有害図書かいろいろ意見を出していかないと、販売防止にも結びつかない」と議論を促した。ただ、委員からは、コンビニ業界の努力を評価し、「有害図書が溢れているという印象はどこからくるのか」という意見もあった。委員会は今後、「効果を挙げている先進事例の調査」や「青少年の有害情報入手先の調査」なども参考に、年度内に検討結果をまとめる予定だ。

<第2回「有害図書の青少年への販売防止対策検討委員会」席次表>

注4 委員会の公式資料には席次表が含まれていなかった。これは傍聴人のメモをもとに「有害」規制監視隊が作成したものである。なお、委員10人のうち、鈴木委員と戸田委員が欠席している。また、委員会を取材した記者は1人もおらず、傍聴人は2人だった。

(2004/10/6 19:20)

【関連リンク】
▼「「有害図書の青少年への販売防止対策検討委員会」を設置します」
http://www.city.yokohama.jp/me/shimin/seishonen/yuugai.html(横浜市)
▼「横浜市 コンビニでの陳列方法が問題に 第3回販売防止対策検討委員会」
http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/38.htm(「有害」規制監視隊)


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