■東京都

分量基準は是か非か 文教委員会

 東京都青少年健全育成条例改定案を審査していた都議会文教委員会は2004年3月22日、改定案を賛成多数で原案通り決定しました。改定案は30日の本会議で可決される見通しです。

 改定案に反対したのは、曽根はじめ委員(日本共産党)と福士敬子委員(自治市民'93)。曽根委員は、図書指定の基準が内規から規則に格上げされることに触れ、分量による基準が盛り込まれれば、「包括指定に近い制度になりかねない」と指摘。また、福士委員は「青少年自身の判断力を強化すべきだ」などと述べました。

 ただ、個別指定には分量基準がないからこそ、一部の表現を理由に指定される可能性があります。例えば、2003年11月17日開催の第524回青少年健全育成審議会では、毎日新聞の瀬戸純一会長代理が「1ヵ所でも、あるいはちょっとでも、それこそ犯罪的なものがあれば、それは短くてもだめ」と述べています。


<新条例について>

 「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」3月30日の本会議で原案通り可決された場合、新たに施行される「東京都青少年の健全な育成に関する条例」は次のページで確認できる。
▼「生活文化局が改定案を説明 文教委員会」
http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/26.htm(「有害」規制監視隊)

<個別指定と包括指定について>

1.他の道府県が導入している包括指定では、「卑わいな姿態等」を被写体とした写真または描写した絵が一定の分量に達していた場合、審議会に諮られることなく、自動的に「有害」図書とみなされる。
 これに対し、個別指定では、1点1点審議会で審査を行うものの、性表現に限らず、暴力や犯罪、さらには自殺に関する表現なども「有害」指定することができる(個別指定の規制対象はこちら。包括指定の規制対象はこちら)。さらに、個別指定では、写真や絵だけでなく、文章表現も「有害」指定の対象となる。また、秋田県は2003年10月に包括指定を導入しているが、「有害」規制監視隊の意見に対し、「包括指定の基準に至らない図書類については、従来どおり「個別指定」により行う」と回答している。つまり、個別指定は包括指定と比較してより厳しい規制を行うことが可能なのである。
 曽根委員は、指定基準に分量が盛り込まれた場合、「事実上、包括指定に近い制度になりかねない」と述べている。しかしながら、個別指定は分量による基準がないからこそ、「包括指定の基準に至らない図書類」でさえ、「有害」指定できるのである。実際、指定の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会でも、「基準というのは一種の透明性というのはあったほうがいいのですけれども、その基準というのが、例えば何ページとか、何分とか、それが透明性ではないと思う」「1ヵ所でも、あるいはちょっとでも、それこそ犯罪的なものがあれば、それは短くてもだめ」という意見が出ている。分量にかかわりなく指定できる個別指定に問題はないのだろうか。

2.水野達雄青少年課長は、2004年1月15日開催の第526回東京都青少年健全育成審議会で、「指定図書の選定基準はあるが候補図書の基準はない。それを具体的にして、積極的に諮問をしていきたい」と述べている。
 個別指定は、1点1点審議会で審査を行うものの、「包括指定の基準に至らない図書類」でさえ、「不健全」指定できる制度である。諮問図書の増加は、指定図書の増加に直結する可能性が高い。なお、東京都の個別指定は出版業界の自主規制(後述)と連動していることに注意が必要である。
▼「諮問のあり方見直しへ 文教委員会」
http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/news/archive/2004/27.htm(「有害」規制監視隊)

3.出版界の業界団体・出版倫理協議会(日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会の4団体で構成)には、東京都の「不健全」図書指定を連続3回または1年で5回受けた雑誌に対し、次の号から「18歳未満の方々には販売できません」という帯紙をつけるよう通知する自主規制(帯紙措置)がある。帯紙をつけない雑誌は取次で扱われず、たとえ帯紙がついていても書店から注文がない限り送品されない。この帯紙措置を適用されると、「流通部数が極端に減ってしまうために、休刊(実質的な廃刊)を余儀なくされてしまうのが通例」(長岡義幸「東京都「不健全」図書指定に宝島社の反撃」『創』2001年1-2月号、115頁)だという。
 したがって、指定図書が増えれば、3回連続または1年で5回「不健全」指定を受け、「休刊(実質的な廃刊)」となる雑誌が増える可能性がある。なお、最近の例では、コアマガジン発行の雑誌『お宝ワイドショー』(隔月刊)が、2003年8月、10月、12月の東京都青少年健全育成審議会で連続3回「不健全」指定を受け、休刊している。
▼東京都「不健全」指定状況一覧
http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/jyourei/sitei/tokyo.htm(「有害」規制監視隊)

<個別指定を行う東京都青少年健全育成審議会について>

1.東京都青少年健全育成審議会の委員名簿や近年開催された審議会の議事録等は次のページで確認することができる。
▼「審議会等」
http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9files/singi.htm(東京都)

2.東京都青少年健全育成審議会には新聞社から3人の委員が選ばれている(他県の健全育成審議会にもメディア関係者が委員として参加しているケースがある)。ところが、こうしたメディア関係者の審議会参加には様々な批判がある。例えば、朝日新聞紙面審議会の渡辺正太郎委員は、『朝日新聞』2003年10月10日「変わる政治 深い視点で 朝日新聞紙面審議会 03年度第3回」という記事で次のように述べている。

「既存の体制と距離を置き批判することも新聞社の大きな役割のひとつである。例えば、政府の審議会に新聞社が入って政策提言に参画すると、自らそれに縛られ、政府の先棒を担ぐ結果になる。慎重な対応が必要だ」

 この意見に対し、吉田慎一・東京本社編集局長は「政府の審議会への記者の参加について、朝日新聞は、抑制的に考えるのを原則にしている。参加要請があった場合は、数人の委員会で参加が適当かどうか検討して判断している。場合によっては報道の公平・公正、不偏不党の根幹にかかわりかねないからだ」と答えている。
 メディア関係者が委員として審議会に参加することは、「政府の先棒を担ぐ」以外にも、様々な弊害が考えられる。メディアに依存する記者や文化人、さらにはメディアを敵に回したくない人々が審議会問題について書けるのだろうか? メディア関係者の審議会参加は「報道の公平・公正、不偏不党」という枠を越えて、市民の「知る権利」を脅かしている可能性がある。

3.メディアと審議会の関係については、以下の文献が詳しい。
(1)天野勝文「「取り込まれる」ジャーナリスト」『総合ジャーナリズム研究』第128号(1989年) 46-52頁
(2)天野勝文「「取り込まれる」マスコミ人 全国版」『総合ジャーナリズム研究』第144号(1993年) 72-79頁
(3)天野勝文「政府審議会は記者のウバ捨て山か 記者クラブ同様これも一つの癒着ではないか」『文芸春秋』1993年11月号 296-303頁
(4)天野勝文「新聞人の各種審議会への参加について」新聞労連編『新聞記者を考える』(晩聲社、1994年) 187-211頁

4.「有害」規制監視隊は2004年2月2日に東京都へ提出した意見「「公平・適正」な体制を、東京都が責任を持ってつくるために ー審議会の運営改善策等についてー」で、個別指定の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会の運営改善を主張している。
▼「「公平・適正」な体制を、東京都が責任を持ってつくるために ー審議会の運営改善策等についてー
http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/opinion/08.htm(「有害」規制監視隊)


【関連リンク】

▼東京の青少年
http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9.htm(東京都)

▼「有害」規制法案・条例の状況 ■東京都「青少年健全育成条例」
http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/jyoukyou/tokyo.htm(「有害」規制監視隊)


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