すばらしいワタル紀行 1999年11月4日(木)

秋の大講演会 鶴見済−対談−宮台真司 in大隈講堂


5.未成年者の人権 その2

シンジ うーん。ていうか、まぁ、あのー、こういうね、先進国的な社会というか成熟社会化ってみんないってますが、そうした動きになると基本的にはねー、あのー、どこの国にも共通に起こってくる問題があるんですよ。それがね、あの一つ、共通の問題は……以前はですね、成熟社会に達する前は重化学工業重視型の段階でね。で、アメリカに追いつけ追い越せとか。日本といえば。どの国もモノの豊かさがとても大事で、そのためには「国民一丸となってがんばろう!」みたいなスローガンが語られた時代です。これは20世紀、すくなくとも前半までの多くの国を支配していた原則です。先進国のね。

 ところが、それが先進国のすべてで状況が変わって、モノの豊かさが一定程度達成されて以降、何が幸いなのか、何が良きことなのかが人それぞれに分化されていくことになります。これはすべての国で例外なく起こらざるを得ない状況なんですね。でー、それと同時にみなが承認する「意味の輝き」みたいなものも消えていくっていうことも起こります。だから当然のことながら、昔存在しなかった軍隊のね、監獄をモデルにした、ま、奇しくも監視するような学校教育っていうのが、昔は輝きがあったから苦役も我慢したんですが、輝きがなくなれば苦役は我慢されなくなります。当然のことながら学級崩壊に類似した現象が多くの先進国で1970年代から生じはじめ、それにしたがって教育改革も行われてきたわけですが、日本だけ遅れた。そういう国際的な、どの国でもこういった条件がある。

ワタル だから日本は、ちょっとあまりにも対応しきれないほどに構造的な、

シンジ そう。

ワタル 限界があってね。

シンジ だから2番目の問題でね、つまり日本に特有の経済活動共同体的な影響のもとにいるべきものに、みなさん、一つわかりやすい例をあげましょうか。日本は、これは政治学の常識ですが、投票率が高い地域ほど民度が低いんですね。で、例えば、これはぼくの主張で言うならば、この間の地方選挙、地方議会選挙でいえば、この辺東京23区内は投票率5割台ですが、青梅市とか五日市市とか行きますとね、投票率は7割台。8割近くいったりするんですよね。投票所によってはですね、数百世帯ありながら投票率100%いくところがあります。

 それを見てみなさん、「五日市市民は、青梅市民は民主主義に燃えとるなぁ」と思いますか? そういうことありえないですね。みなさん、自治会長さんが監視しているから、あるいはですね、ゼネコン関連の動員があるから、あるいは宗教団体関連の動員があるから、投票に行くわけです。ですから、一般に平時における日本の投票率は高ければ高いほど、その地域の民度は低い、というふうに断定してかまわない、っていう状況があります。

 でー、これがですね、日本の状況なんですよ。いいですか? あのー、民主制というのはもともと、各人は共同体から自立した自己決定する個人としてですね、自分の投票する政治家の議会内活動を検証し、質問活動を検証し、そして投票するということがあるべきなんですが、そういったことが一般に日本では存在しない。あるいは、とても稀である、ということがあります。で、これが日本は実は、共同体的であるということなんです。

 ところがですね、そういう中にも、例えばそのー、『自殺マニュアル』含めたいろんな本、マスメディア、ビデオ、テレビ、そうした体系でいえばインターネット、匿名メディア、こうしたものがボンボンボンボン広がって、で、当然のことながら若い世代であればあるほど、昔と違ったね、昔ながらの田舎があるように見えても、その彼らの感受性や想像力はですね、田舎の地域の範囲を越えて、それこそ世界大に、その地平が広がっていきつつあるわけですね。でー、これ自身、例えばぼくなんかの立場で言うとですね、共同体的な意思決定システムを変えるとてもいいチャンスだっていうふうに思うわけです。

 が、しかしながら日本のですね、この行政権力、これエラければエライ人であるほど、あるいは議会さん、議会、議員さんもそうですが、そっちのは共同体の中に自分の権力を維持しているわけです。彼らにとっては共同体が消えてしまうこと、人々が共同体によって動機づけられなくなることは、自分たちが権力の基盤を、あるいはリソースを失う覚悟を、ま、意味しているわけです。ですから当然のことながら、人々がこれら多様なジャンル、マルチメディア化とかマルチ化なんかによって、これと離れていくわけですが、そうした動きに対して非常に大きな不安を持っていまして。で、そのことが、例えばこの間のですね、通常国会における盗聴法とか改正住民基本台帳法の制定に関する動機づけの背景に相当するし、あるいはもう一度ですね、若い世代を含めて、ま、国家にあらためて帰属させなおすというかですね、ま、そういうタイプの日の丸・君が代法案というものに動機づけられているわけですね。

ワタル これ、老人の悪あがきなんつってのもありますよね。

シンジ まさにそうです。老人の悪あがきだと言っていいです。しかしながら日本ではですね、先進国と比べてもまさにその老人に権力が集中していて。同時に権力が集中していく理由は、先ほど申し上げましたような共同体的な権力構造なんですね。そういった老人であればあるほど共同体的なもの、あるいは共同体的な集団を脅かすような鶴見さんの本、あるいは様々なインターネット、携帯情報ツールなどを通じたコミュニケーションネットワークの広がり、そして、ま、それを通じた感受性や想像力の広がりを何としてでもおしとどめて、共同体の範囲に収め、年長者が識別可能、コントロール可能、あるいは見通すことができるような、そういう性質のものに、ま、とどめておきたいというとても強い願望がですね、諸外国にも増して、この日本に存在していると。

ワタル 覚醒剤の、あのー、麻薬取締法の中心人物もだいたい、あのー、原発をなんか最初推進してた人とかも、えーとー、今ね、「有害コミック」規制とかで暗躍してる、その、なんか、そういう中心人物の人がいるんですけど、みんな80歳とか。これを最後の仕事にして、みたいな感じで、強引になんかやろうとしてる動きがあるんですね。これが、いままでのなんとなく。

シンジ 結局ですね、あのー、ま、「有害コミック」規制の動きは97年から…ごめんなさい。鶴見くんの本に対する規制措置は97年から起こっていて、ちょうどそれに先立つ1年ぐらい前からテレクラ規制条例の運動っていうのが起こっていて。東京でも買春処罰規定を、制定を求める運動というのが起こり、でー、その延長線上にですね、児童ポルノ・児童買春禁止法案を制定しようっていう動きが起こり、そして、ま、今国会での先ほども申し上げた一連の法律が存在し、

ワタル (「吸う」!!!)

シンジ !!!

ワタル どうぞどうぞ♪

シンジ …………。

ワタル これは禁止じゃないっすよね♪ いいじゃないっすか♪

シンジ あのー…

ワタル (再び「吸う」!!!!!)タバコ吸ってないっす♪(会場爆笑)

シンジ ま、あのー……

会場から バカー!

シンジ 何? 誰か叫びました? いま。

ワタル もうそろそろ、元気がでてきます♪

司会 お時間の方になりましたので、あの、質疑応答の方を……

ワタル あ、ちょっと待ってくださいよ。オレが話してる時間が異様に短かったんで、私の言いたいことを言わしてください。えーっとね、要するに何が言いたかったかっつーと、えーっとー……そもそも人権宣言とかってフランスとかでやった時に、彼らは、人間には、あ、「人間はみな平等だ」とかいって、その後第二次大戦が始まった後とかに、黒人を自分とこ連れてくると。そーいった時に、まだ、あのー、でも、黒人の人権なんつーのは彼らは気づかないんですよね。同じ人間であるはずが彼らには黒いってだけで認めないとか。いわゆる人権を認める認めないなんてのは、その程度脆いものであって。そうやって、例えば女性は参政権を得たりとか、マルコムXとかですね、キング牧師とか、彼らによって黒人なんか、アメリカの黒人の人権は逆に市民権を得たりとか。そういうふうな歴史があったわけです。

 だから、あのー、決して人権を認めてる社会といえども、人権を認めてない層っていうのが必ず今までいたわけなんですけども、我々が見逃してたのは目の前にいるっつーか、これ、オレ最近気がついてうっかり忘れてたと思って。子どもっていうのは、まだ参政権を認められてない。彼らは、このー、一応、基本的人権とか、自由、人権、平等っていうのを建前としてる社会の中で、それらが一切、あのー、それから除外されてる存在であるということに気がついてしまって。えーとー、本来であれば『自殺マニュアル』とか、そういった何の違法性もないような本を取り締まれないはずなのにもかかわらず、そこに例外点を見出すことによって、例えば、ほんとは外人だって重要な話なんですけども、子どものためだっていう理由で排除するっていう態度にでたってのは、今回の、ま、宮台さんのやってた児童ポルノ・児童売春禁止法であり、オレが迷惑を被った青少年育成条例の「有害図書」指定であったりする。で、未成年者っつーのは、この中で未成年の方ってどのぐらいいるんでしょうか? 未成年の方いらっしゃいます?

シンジ 18歳までの方?

ワタル や、20歳以下。この人たちっつーのは、参政権、選挙する権利ない。投票権ないっつーことは、この人たちを代表する人たちっつーのが世の中に存在しないわけなんで、どーにも声を上げようと思ったところで声を上げることができないと。声を代弁してくれる人がいない。オレがほんと子どもの時辛かったの、たぶんそれだと思うんですけど。このような、さんざん子どもに声を発声させるということができれば、えー、子どもたちの意見を聞きゃいいわけですから、ほんとにそれが青少年の健全な育成の奨励になる、あ、育成につながるのかつながらないのか? ま、子どもがっつーか未成年者ですね。それの、その後「おめえらバカ言ってんじゃねえよ」って言えばすむことなのに、それらの声はすべて未然に塞がれるという、この気持ち悪い社会が実はあって。レジュメの通り喋りますが、そうなってくると彼らは当然この社会の中で最も抑圧されてる階層になってるはずだと。

 それはもう、ストレスたまるのは当然です。鬱屈します。で、最近考えてる社会問題の多く、中学生の自殺であり、暴力であり、それに教育問題とか。そこに依拠しているこういった規制問題とかそういったものっつーのは、子どもの方をちゃんと、ちゃんとしてかないと結局解明できないことでもあるような気がするし、ここんところちゃんとすれば意外と簡単にスルッとなっちゃうんじゃないか。要するに子どもの声を聞けと。子どもに喋らせろと。そうすると、例えば中学生以上だったら、もう、別に、参政権。こんなもん先進国でも実現されてないですけど、参政権、選挙権を与えれば、こんなにデタラメな社会にはたぶんなってないでしょう、っていうような状況ですよね。

シンジ 鶴見くんさー、「公聴会で子どもを呼べ!」っていうようなことを主張しないの?

ワタル え?

シンジ 「公聴会を開いて、子どもを呼べ!」ってことを主張しないの?

ワタル そうそうそうそうそう! 勝手に子どもの、子どものために「いい/悪い」っていうのを、子どもの意見を聞かない人間が決めてるっつーのはどう考えたっておかしいでしょ。

シンジ この日本以外の先進国はねー、公聴会で子どもを呼ぶってのは当たり前のことによって起こっているわけ……

ワタル あ、そっすか。

シンジ 起こるわけです。あの、ありますよ。あの、当たり前です。中学生、高校生の場合は日常茶飯です。子どもの問題については。ところがこの間ですね、参議院ですねー、あの青少年問題特別委員会に参考人として出ていったときに、たまたま乙武くんと一緒だったんですね。で、乙武くんが、えー……何歳だったかなー? 彼が最年少記録を更新したんだそうです。当時19ぐらいだったと思いますが、19か20くらいかな? 実は前例がなかったので乙武くんを呼ぶということも、実は青少年問題特別委員会としては大英断。

ワタル へーーー!

シンジ そうなんですね。つまり、選挙権のない人間を呼ぶということ。あるいは、ま、被選挙権のない人間を呼ぶということ自体が、この日本の政治文化の中では、ま、アブノーマルという、非日常的なものだというふうに考えられていたんです。

ワタル それに、こう、我々が代表だといって出る人だって、子どもの、子どもを守る公約なんてしたってしょうがないですから、子どもを守る公約なんかしないですよね。政治家は。票田じゃないですから。子どもは。そんなことしても自分は当選しないから。子どもっつーのは、ものすごく、実は、未成年っつーのは虐げられてるっつーか、市民権を与えられてない。奴隷階級みたいなもんなんじゃっていうふうに、あのー、未成年の方、思っているんじゃないかと思うんですよ。でー、実際に、みなさんの、未成年である場合、自分らの声を社会に反映させたいと思ったとき、どう考えたって無理でしょ。無理すぎちゃって、もう、反映させたいとも思わないでしょ。ほんとのね、だから『自殺マニュアル』が発禁になって一番困るの未成年なんじゃないか。オレたちなんかは、その規制のほんの一部のそばつゆくらってるだけで、一番損してるのは未成年。

 だから、みんな大人、大人っつーかやっぱ、青年という、成人といえますが、成人は自分らの利権を獲得しようとするために、子どものため子どものためっていう口実使って、子どもを矢面に立たせてね、こう、日教組は「子どものため」って、文部省は「子どものため」って、お互いこうやって、子どもの盾の後ろでバン、バーンって銃撃ち合ってるようなもん。で、その流れ弾受けてるの全部子ども。未成年。彼ら、だって口封じられてるわけですから。そういうような残酷なことが行われてるってことをみなさんよくわかってくださいって感じで。で、オレや宮台さんがある程度彼らの代弁者だったんだとすると、その声にならない声たち、ま、パワーっていうか、そのうめき声、オレなんかねえ、あのー、その声にならない声たちに、なぜオレが人気でんのかよくわかんない、っつーか、オレの本が売れるのかよくわかんない。大人の人たちからはまったく評価されてない。ものすごい、ものすごい後ろから……

司会 大変申し訳ないんですけど、質疑応答にさせていただきます。それでは、客席の中から質問ある人は挙手してお願いします。誰かいませんか? 誰かいますか?


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