すばらしいワタル紀行 1999年11月10日(水)

『創』プレゼンツ 有害指定と自主規制 「完全自殺マニュアル」と「放送禁止歌」


10.質問コーナー(5)

会場から あの、すいません。死ぬことを、恐れないという……

ワタル あ、でも聞こえますけど。

質問者15 死ぬことを恐れないように、ということで禅の修業がありますね。

ワタル うんうんうん。

質問者15 あれはあのー、例えば自分の師匠に「高い木に登れ」「はい」って登って、今度「じゃあ、そっから飛び下りろ」「はい」って飛べるかどうかが分かれ目になってるようですから、そういうこともはっきりすべきじゃないですか。「有害図書」に。

ワタル 『葉隠』とかね。

質問者15 まあ、そういうことになってくるんじゃないかと。ちらっと思ったんです。

にしかた まあ、あの人たちはタブルスタンダードなんですけど。

ワタル でも思うのは、あのー神奈川県の施行規則ね。施行、施行規則によると自殺を肯定したようなのはダメだというんで※14。もしかしたら太宰治の本で『人間失格』とかね。ああいうのやるかもしんないとこが笑っちゃいますよね。なんかやりそう。

篠田 たぶんね、この鶴見さんのケースが条例改正までいくと、その後『完全自殺マニュアル』以外の本も引っ掛かるようになりますよ。

ワタル 端緒、端緒ってことは要するにそういうこと。

篠田 だから、あのー割と大きい問題であるね。

にしかた あのー、過去文字の本が引っ掛かったのは3例目だっていうんですよね。

ワタル え? とりあえず前回の2例は?

篠田 ま、まあ要するに今まではほとんどもう性表現なんですよ。90何パーセント。だからその鶴見さんのね、攻防戦って大きいの。だからそういう性表現以外でこれだけ問題になってるの初めてのケースなんですよ。

ワタル 幸徳秋水以来だ。

篠田 (笑)

ワタル 三木清とか。

篠田 だからたぶんここで突破口で通っちゃうと、あのー、いろいろ類の本で自殺なんかを書いた本って、もうほんとに危なくなっちゃうんだよ。これから。

ワタル もう完璧突破口と思ってますよね。でもね、たぶんね、あのー、気味が、イヤ、イヤがる……向こうがああ言ってるのは、なんとなくイヤだなと思ってるのは、マニュアルの棚。あれじゃあ、あそこら辺じゃないかなあと思うんですよ。あそこを一度バーっと。

篠田 危ないと。

ワタル だけど、やっぱそこまで広げさせちゃダメ。ヤダね。

篠田 うん。でも、いろいろ危ない……そういう本ってもう俎上に上がってるからね。既にね。「有害」指定をするかどうかっていうの。だからもう時間の問題ですよね。

にしかた 『完全自殺マニュアル』以外はどうなんですか? あのー、他の都道府県では。

篠田 あのー、

ワタル 『世紀末倶楽部』とかなんかね。

篠田 なかなか実態わかんないんじゃない? けっこうやってます。

ワタル 『危ない28号』とかね。

篠田 うん。

ワタル 『殺人術』、『殺人術』なんてあんのにアメリカで全然発売できない。それ訳しただけなののにね。

にしかた やっぱ州によって法律ムチャクチャなんで。

ワタル そうですね。あれっていうのはどういう……

会場から あ、今さんの本はどうなります? あの『家出マニュアル』。

ワタル あれは引っ掛からないんじゃない?

篠田 家出はさあ、まあちょっと先じゃない? もうちょっと。

ワタル それが規制できるようになったらほんとにすごい。

篠田 家出はダメなんで絶版にしようってのは、そこまではまだちょっとなってませんね。だから、自殺ほどじゃないんじゃない? まだ。ま、でもグループとしては一緒に期待されてる可能性あるよね。今さんの(笑)。

ワタル だけどまあ、今回の件に関してみなさんが有効な考えを引き出したいんだったら、引き出していただきたいので、なぜね、この本がもう……こんな時期にこの本を「有害」指定。完全に無理があるのにあえて、どーしてもやりたいのかっていうあたりを考えるのが面白いんじゃないかって。なぜでしょうかね? オレも考えてみたいと思います。

にしかた うーん。まあ、

ワタル なぜですか? そこまでこの本を認めたくないのか? と。

にしかた うーん。やっぱりそこんところあんまり……そもそも健全育成って考え方自体、青少年健全育成って考え方自体、根っこはあんまり考えないで、なんとなく悪いとか。

ワタル うーん。

にしかた それでやってるわけですよね。あのー、会長さんがなんか何? 善行会でしたっけ?

ワタル ええ。すごいのね。会長の所属してる団体が日本善行会。

にしかた 日本善行会。善い行い……。

ワタル こういう人ってのは普通あんまりいい人じゃ……(会場爆笑)。「善行会」って名のる人っつーのは「善」じゃないって感じがしてたんですけどねえ。

にしかた すごいですよね。

ワタル 芸能人みたいなね。

にしかた ああ、そうか。それだけの、

ワタル ああいう類の人たちがつくるような会。

にしかた ま、結局根っこまで考えない。人権だったらそりゃもう根っこまで考えてどうこうっていうことできるんですけど。ただまあ、僕なんか本音で言うと、やっぱ児童ポルノの規制は人権だけである程度受け入れられないのもあるのかなと思うんですけれども。ま、でも、なんで、なぜか刑法の特別法なんかでね、僕は、うちの団体としては児童福祉法の特別法にすべきだっていうふうに主張しているわけなんですけど。

ワタル ああ。でもすり替え、すり替え行われたりしますね。

にしかた ええ。で、その、いいものだってことで乗っかって。自民党から社民党からさきがけからみんな乗っかってしまうっていう。

ワタル ほんとは児童なんて、子どものことなんてなんも考えてなくって。

にしかた ええ。

ワタル これを思いっきり排除したいって思ってるっつーね。

にしかた うん。

ワタル なぜか?

にしかた や、結局、結局健全育成ってのは、うちでも言ったことあるんですけど健全育成って管理教育の発想につながってくるんですよ。あの、それは都庁に行った時も思ったことで、やっぱり伝統的な不良少年ってことをとりあえず前提にしてるんですよね。だからこそ、『完全自殺マニュアル』みたいなことについては、ある意味扱いあぐねてる部分ってのは、話してみての感覚ですけどちょっと感じましたね。

ワタル うーん。

にしかた それをむしろ、いかにこの不良少年って鋳型にはめ込んで話を進めようとして……

ワタル 非行とかね。

にしかた ええ。そうですね。

ワタル 逸脱行動として取り扱いたい。

にしかた 逸脱行動っていう考え方にまでなってないんじゃ?

ワタル 社会的……社会の秩序維持のために。

にしかた それはありますね。

ワタル なんとなくみんなの頭に中にそんなイメージがあって。排除……

にしかた 個人、子どもを守るっていうか、子ども……それ自体が子どもを守るっていうんじゃなくて。やっぱり秩序だった子ども全体を守るって、

ワタル まさに体制派。

篠田 はい。えー、もうない? いいかな? あのー、そろそろ11時……あ、なんかまだあんの? はい、はい。ま、いいでしょ。はい、どうぞ。

質問者16 「有害図書」指定なんですけど、あのー

篠田 ちょっとマイクを。じゃあ、お願いします。

質問者16 すいません。えっとー、「有害図書」指定についてなんですけど。性表現やまあそういった、ま、現状では青少年に対してとかいう前提の上で批判がされてるんですけども、本屋さん行くと、まあよくわかるんですけども、ほんとに誘発性の低さ……誘発性の低い作品とか、あと思想的にも……なんていうのかな? レベルが低い作品並びにただの商業的に出された本の類っていうのは非常に多くて。そういった、なんていうのかな? 芸術的にベクトルの……ベクトルっていうか未熟な作品こそほんとの「有害図書」と思うんです。で、発想の点において『完全自殺マニュアル』は、非常な……なんていうのかな? まあ、はっきり言えば僕は純文学……全然話が違っちゃいますけど、素晴らしい本だと思ってますんで。えっと、すいません。ただそれが言いたかったんです。

ワタル はい。どうもありがとうございます。でも、「有害」って思った本って、例えば思う本ってどんな類の本なんですか? オレ、本とかって「有害」だなんて思ったことももしかしてないかもしれないなあ。

質問者16 あー、そうですか。理由は非常に難しいんで、

ワタル どういう、どういう本を例えば「有害」だと思われますか?

質問者16 えっとー、具体的に述べちゃうと……村上春樹(会場爆笑)。あと、

篠田 それはつまり作品として低いって意味ね。「有害」っていうよりも。

ワタル 「有害」とは違うし。

篠田 うーん。

質問者16 ああいう、そういった文学的っていうか芸術性に、

篠田 要するに、ま、つまらないと(笑)

質問者16 そういった作品を流通させ、流通させて、

篠田 なるほどね。

質問者16 こういったレベルの低いものが……

ワタル 村上春樹レベルが低いと。

質問者16 レベルが低いものが、

ワタル 「有害」指定レベルだと。

質問者16 はい。低レベルなものが流通して、若い世代がこういうのを、ほんと、なんていうのかな? ……思いこむこと自体「有害」だと。

ワタル うーん、やれやれとかいって、夏に1回、今日1回きりの逃しちゃうの「有害」であると。

にしかた まあ、や、

篠田 いやいや、でも、あのー鶴見さんの本読んでない人のために言っておくと、あのー、あれはたぶん出た時に立花隆が書評しててね※15。『文春』かな? で、要するにほら、評判を聞いて、なんか自殺のやり方書いてあるって割と面白い本かと思って読んだら、そうでもなかったっていう。まあ、割と評価はされたんですよ。その意味でね。

ワタル 実によく調べてあると。

篠田 まあ、それもあるけども、

ワタル あの人にしか、たぶんそういう書評は書けないでしょうね。

篠田 調べてるってこともあるけど、やっぱほらある種の思想性っていうか哲学……

ワタル や、そうじゃないです。

篠田 そうじゃなかった?

ワタル 実によく調べてある、ちゃんと書いてある、と。

篠田 や、だからそのちゃんとってさあ(笑)。調べてあるってことも一つの評価対象だけども、

ワタル 立花隆には、はっきりいって取材量ではかなわないと思いますけど、

篠田 かなわない。

ワタル やっぱある程度、そこまで行った人じゃないと、そういう難しさっていうか困難さっつーのは、オレはわからないと思うんで。だから立花隆だけそういうこと言ったんだと思います。

篠田 うん。まあ、それはそう……そうかもしれない。ま、でも作品全体としての評価ってのはあったよね。あの『完全自殺マニュアル』ね。はい、じゃそろそろ……あ、どうぞ(笑)。

質問者17 えっと、自分今22なんですけど、自分と同年代でもけっこう『完全自殺マニュアル』って言葉出すと嫌がる人とかいて。でもそういう人ってだいたい読んだことない人なんですよ。で、それだけ聞くとそう思うかもしれないけど、自分はすごい、あの本の「まえがき」と「あとがき」ってすごい良いと思ってて、そこを読めば全てがわかると僕は思ってて。実際「発禁」もここまでいってるてのは、ここまで来るまで知らなかったんですよ。で、そういうリアリティを作者としてどの辺まで感じてたのかな? ってちょっとお伺いしたいんですけど。

ワタル ああ、そうですね……「まえがき」と「あとがき」に関しては、本をさっき読まなく、読まなくてもいいっと言ったんですけど、まあ、本来読まなくてもいいんですが、誤解されないためには読んで欲しいっすよね。是非ね。あのー、自分の書いた文章の中で、あの「まえがき」ってやっぱベストだと思ってるんで。うーーーん。まえがき……でも、「まえがき」読んでもわかんねえっつー人たちだと思うんで。よくわかんないんすけど。よくわかんないの。いきなりさあ(笑)

にしかた うーん。わかんないと。わかんない……

ワタル そうそう、いいと思ったらみんなでいいって言おう! って感じね。言わせ、言わせてるばかりでオレたちは一体……情けないじゃ、情けないっていうかオレたちやってらんねえぜって。

篠田 だからたぶん、ほら今までの「有害」指定の論議の中で欠落してるのは、割とたぶん本をきちんと読んでないで、まあ、要するに「自殺の方法が書いてあるんでいけない」みたいな。それで切り捨てられたっていう面あるから。そこはちょっと微妙なとこだよね。あのー、少なくとも作品……や、これが文学だったら作品としてどうかみたいな論議になると思うんだけども、すごく単純に片づけられちゃってるね。そもそもね。

にしかた そこんとこは、でも、

篠田 ま、たぶん審議の人たちってほとんど読んでないと思うよ。あれは。

ワタル でも山本直樹の『Blue』なんか読んだってやっぱり否定するでしょう※16。きっと。

にしかた うん、まあ結局あれも表現的な、

篠田 や、そのわかったうえで「やっぱり有害だ」っていう人は、それはいいんだけども。あのー、わかんないで要するに方法が書いてあるからダメだっていうような切り捨てられ方だから。いまんとこね。だからあれじゃない? 読んだうえで、しかも「やっぱりこれはなくした方がいい」っていう人は、それはそれなりに議論にはなると思うんだけどさ。

質問者17 鶴見さんとしてはそれを書くときにある程度……僕も読んでないんですけど、そういうものを受けるというのを覚悟のもとで書かれたんですよね? そういうものだと。

ワタル や、今以上に自殺の方法だけを書いて出版するってのはものすごい厳しい状況であったにもかかわらず書いた、書いて出したので、当然そういう想定してました。

篠田 だからあれは、出版するときはけっこうあれだよね。あのー、決意がいったよね。

ワタル 普通やらないですよね。

篠田 うん。で、ほら、そんな何百万部も売れると思ってないから。まあ、だから太田出版は、まあ割と決断ですよ。きっと。あれを出すときは。取次なんかもう嫌がってるわけだからね。最初から。

質問者17 こう言っちゃなんですけど、そうしたやっぱそれは、今そういう「有害図書」というか、ま、そういう「悪書」というものを浴びせられるっていうのは、ある程度しょうがないことじゃない……

ワタル 出ました「しょうがない」。「しょうがない」って言わないことから始めたいと。

篠田 ま、だから想定はしてたよね。

ワタル もちろん。だけど、どんな、あのー……クレームが来ても突っぱねられるような形で発言してる。

篠田 うん。

にしかた 僕なんかの発想だと、言われること自体は、まあほんとにしょうがないかもしれないけれども、法、法的に規制されるのは別だって言い方です。僕らとなりますけど。

ワタル 法は分けて考えて。うーんとー……そうなんですね。

にしかた まあ、法的以外にただの経済的な自主規制とか、そういうものも含めての話になると思うんですけど。そういう形を……言われる、言論戦だったらいいんですけれども、そうじゃなくて形をもって、ある権力をもってですね、政治権力なんかでも経済権力でもいいんですけど、そういう形をもって規制しようっていうのはやっぱりちょっと違うかなあと。

ワタル そういう少数意見っつーので、有効なフィードバックになっていくものがものすごいあるわけですからね。体制側にとってはそれが全然、ほんとは生じないほうが体制のためにいいはずですよね。

篠田 はい。あ、まだあるね。はい、どうぞ。はい。

質問者18 さきほど鶴見さんが、「まえがき」と「あとがき」がほんとによく書けたってこと言って、僕も非常に、

ワタル まえがき。

質問者18 まえがき、まえがきだけですか? あの本、この逆説、逆説的なこと言っちゃいますと、もう本文の自殺のやり方はどうでもいいんですよね。どうでもいいっていうか、ほんと「まえがき」と「あとがき」にこそ、あの本の意味みたいなものがあると思いまして。一番肝心なセリフはやっぱり「デカイ一発はこない」。あの一言だと思うんですよ。やはり99年7月には何も来なかったという。ま、恐怖の大王がバケツだったっていう下らないオチなんですけど。あの「まえがき」の「デカイ一発は来ない」、あの一言のためにこの99年をなんか過ごしているような、そんな1年なんですけどね。僕的には。

ワタル でも、それまで誰もあんなこと書いてなかったから自分が書いたんですけどね。終わりなき日常的なこととかね。言われてなかったんすよ。だれもが思ってると思ったのにね。そういってもらえると力強いですね。非常に。

にしかた クライシスがいつか来て、それが恐いってのは別に右だろうが左だろうと、まあ、あるいはノンポリだろうとけっこう感じてんのかなって。ある意味で僕は「自自公が恐い」とかですね、今言ってる人たちもちょっとそういう、ちょっと傾向感じなくも実はないんですよね。

ワタル 常に危機ですからね。マスコミ的には。

にしかた うん。

篠田 (笑)はい。そろそろ……まだあります? もう、あれだね。終電あぶないからな。あ、はい。じゃあ、ま、最後にしましょう。

ワタル じゃあ、質問が終わったら最後に「原発まめ知識」

篠田 (笑)

ワタル を発表して終わりますから。

質問者19 えっと、この間の『創』っていう雑誌で清水っていう方が、「まえがき」とか「あとがき」に書いてあった部分にも、「違和感を感じる」みたいなことを書いてあったと思うんですよ※17。それで、その、子どもを持つ親になってみればわかるはずだっていうような発言をしてて。それと対応させて、あのー青少年のうちっていうのは、「ちょっとしたことで自殺をしたくなるようなことがある」って言って。もう、その、子どもを持った親の考える感情と、子どものうちに感じる苦痛とかそういう苦しさみたいなのは、全て「ちょっとしたこと」っていうふうにとらえるような感じっていうのは、すごく腹が立ったんですけれども。

ワタル 「甘ったれるな」とオレは言いたいですね。あのー、さっきの長崎攻子さんとかね。そういう人も「子どもを失った親の気持ちがわかるのか」なーんて言ってますが、

質問者19 だから……そこでだから、じゃあ、あなた子ども……子どもなのに死にたいと思うような、子どもの気持ちがわかるのか? っていうようなことを

ワタル まったく。だって、だって子どもを失った親の悲しみで、その人死なないじゃん(会場笑)。子どもは死ぬほど苦しいんだからさあ。そういう人たちまでが子どもを死んだ親の悲しみのために「お前は苦しみながら生きろ!」っていうのかよ? っていうね。甘ったれんじゃねえよ。バカヤロウ! って。子どもなんかもっと苦しい状態を我慢して生きてんじゃねえかって。子どもを失った親の悲しみなんて、もう、そんなもん当たり前ぐらいの人なんだっつーことを言いたいですね。お前の苦しみとかなんか……ヘロヘロになるんだったら、あんたこそねえ、もうちょっと……

にしかた 子どもを失った悲しみ、みたいなことを、こう、延々と言う人ほど、子どもを虐待するってこと理解できないでしょうね。

ワタル なんちゅう些細な悲しみか、っていうね。

質問者19 それで最近鶴見さんは、言いたいことがあったら我慢しないで言った方がいいっていうことを言ってますけれども、あのー、例えば中島義道さんっていう人の本読ん……お読みになったことありますか? ないですか? あの、その人も「何でもいいから思ったことを言え言え」って。大学教授をやってて、で、そういうふうに「自分の意見をどんなことでもいいから言ってみろ」って言っても、教室中がこう、水をうったようにシーンとしちゃって。誰もその、周りの空気とか、そういう言っちゃいけないって言われてるようなことに圧倒されて発言できないっていうふうなことを書かれてるんですよ。で、それはあのー、そういう、なんていうのか……言うべきことしか言っちゃいけないっていう教育をずーっと受けてきて、だからその条件反射で、突然そういうふうに言えっていわれても頭の中が真っ白になっちゃって言えないっていう状況になってるっていう。それが私なんかの対人恐怖症の原因にもなってたんだと思うんですけれども。

ワタル うんうん。

質問者19 あの、それはもう不治の病なんでしょうか(笑)?

ワタル まず……他人がどう、他人からどう思われるかなんて、そういうことってよく考えてみたら自分の幸福となんの関係もないんですね。そんなこといいんです! 無視しましょう! 他人がどう思うか……他人によく思われたって、一生懸命努力してよく思われたところで自分の幸福に関与してくれないんです。悪く、仮に悪く思われたところで、結局実はそんなこと関係なかった。だから……だから自分の親しい相手とか、その人には悪く思われたくないな、なんていう人に対して気を使えばいいだけで。見も知らずの人間なんかにどう思われようと、そういう人がAと思おうがBと思おうが、何かを思おうが思われまいが自分とは関係ないんだというふうに。

 あのー……今までね、そういう他人にどう思われるかっつーことを考えて生きるような、そういう社会的な、社会全体としての決まりがあったんですけど、やめましょう。もういい加減。テメエのことだけ考えましょう! だって生きてらんないんだから。そんなことばっかり考えてね。オレだって対人恐怖症な感じだったんすよ。ほんとに。いつもそういう時考えてたことは他人の内面ばっか。他人の内面読みをもうやめる。ヤメタ! だから他の生き物は内面がないから好きなんですよ。

質問者19 ありがとうございました。

ワタル 非常に勇気ある発言だったと思います。

篠田 はい。(会場拍手)

●注
※14 「神奈川県青少年保護育成条例施行規則」には「有害図書類」の指定基準の一つとして、「自殺、自傷行為、虐待等を肯定し、かつ、誘発し、又は助長するような描写をしているものであること」と明記されている。
※15 週刊文春に掲載された『完全自殺マニュアル』の書評は『ぼくはこんな本を読んできた』(立花隆著、文藝春秋)に収録されている。同書241頁には次のように書かれている。

「最近評判の鶴見済『完全自殺マニュアル』(太田出版 一二〇〇円)を読んでみた。どうせ水準の低いハウツー本だろうと思っていたのだが、なかなかどうして、これが面白いのである。実によく調べて、各種の自殺法を懇切丁寧に図解入りで書いている。内容は科学的で、信頼性が高い。(中略)実用性ももちろんあるが、自殺するつもりが全くない人にも実に興味深く読め、人の生と死について考えさせられるところが多い。説教じみたところが皆無で、淡々と無感情に書いているところがいい」

※15 『有害図書の世界』(メディアワークス)によると、東京都は1992年3月に『Blue』(山本直樹著、光文社)を「不健全図書」に指定しているという。
※17 『創』1999年11月号に掲載された清水英夫「図書規制強化をめぐる最近の動き」(インタビュー記事)では、『完全自殺マニュアル』の「おわりに」で示された考え方に対し、「これには抵抗がありますね」と述べている。この発言に続いて「子どもを持つ親になってみればわかると思うのですが、この年代はデリケートで繊細、ちょっとしたことで死にたくなるものです。そういうとき、一般的にこういう本が若い人に読まれるということには躊躇を感じます」と話している。


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