すばらしいワタル紀行 1999年11月10日(水)

『創』プレゼンツ 有害指定と自主規制 「完全自殺マニュアル」と「放送禁止歌」


9.質問コーナー(4)

篠田 はい。もう……ちょっと、そろそろ時間だから、あの、なんか発言ある人ちょっと聞いて、そろそろ1回、今回締めようかなと思うんですけど。

ワタル 終電も……

篠田 うん。で、あのー、あ、じゃあ、はい。どうぞ。あれ、鶴見さんそういえばさ、太田出版といま全然没交渉なわけ? ふーん。

ワタル うーん。

篠田 連絡もなくなっちゃってんだ。

ワタル そうで……うーん。そうです。この本に関してはね。

篠田 はい。どうぞ。

質問者13 あの、僕ちょっとこの『完全自殺マニュアル』読んでないんで、

篠田 ああ。

質問者13 ちょっとこの部分で差し引いて聞いてくれれば。あのー、まあ僕のイメージかというと、まあ「有害図書」だと思うんですね。でー、だから規制していいかって言われるとそういうものではないと思うんですが。どう……つまり、かえって、やはりご自身としてはあれはそのー、「有害図書」だけども表現の自由として、

篠田 (笑)本人は「有害」だと思ってないよ。もちろん。

質問者13 あのー、じゃあ割と役に立つ本だという

篠田 役に立つ(笑)。

質問者13 つもりで書いてらっしゃる?

篠田 うーん。

ワタル だから「有害」でないと思ってますね。

篠田 うーん。あのね、でもちょっとやっぱ本を読んだ方がいいかもしんないな。単純に本を……

ワタル ややや、いや、でもね、あの本に、あの本に書いてある、あの本に関してはオレは本を読んでなくても意見言ってもらっていいと思うんですよ。自殺に関する方法を書いてある本がありますよ、と。どう思いますか? ってことだけでいい。

篠田 うーん。

質問者13 でー、まあ僕はあと自殺ってのは、まあかなりいけないものだと思ってるというのが根本的にありますので。

篠田 なるほどね。

質問者13 えー、まあ「有害」と思うんですが。あともう一つ。そのさっきの日本のその表現の自由云々って話で、あのー、日本を脱出してしまえばいいみたいなことをおっしゃってましたが、まあ、アメリカなんかも聞くところによると、例えば性表現だとか暴力表現ってのは日本より規制が厳しいっていう部分もあると思いますし、

にしかた 単純には、それはいえないですよね。

ワタル 厳しいってことはないんじゃないかな……?

質問者13 いいものとそうでないもの、

篠田 システム化されてんだよ。システム化。

質問者13 R指定とかそういうものがありますよね? 日本のアニメが暴力的だと批判されるという。

篠田 うんうん。

質問者13 そういう部分でいくと必ずしも日本の表現というか、そういうま、出版業界とかテレビ業界も含めて必ずしも規制が厳しいということにはならないと思うんですね。むしろああいう『完全自殺マニュアル』というもの自体が割と100万……そういう世の中に出るということ自体が、割と僕はアメリカとかヨーロッパでは許されないことじゃないかなという気はするんですけど。そういうもんからいくと、必ずしも日本が規制が厳しいだとか、そういうことにはならないという。

篠田 あのー、ただちょっと一つ誤解があると思うのは、例えば性表現についていうと欧米の規制っていうのは読みたい人は読めるようにはなってんですよ。ただそれが、日本の書店みたいに誰でもとれるような所に置いてなくて。あのー棲み分けがされてんですね。だからそういうものは、そういうものが好きな人が読めるように置いてある。で、子どもが読めないようにする。そういう、あの、まあ要するにさっき映画でいったレイティングなんだけども、そういう規制なんですよ。日本のはちょっと秩序ができてないんで問題になっちゃってんですよね。

にしかた あの、受け手の側としてはそうですけど猥褻罪に関してなんかで言うと、例えば欧米なんかで多いのは、まあアメリカの場合って州によって違うんで正確じゃないですけど、まあいわゆるポルノ解禁ってことで、猥褻頒布みたいなのはなくしてると。ただそのかわり、児童ポルノに関してだったら、児童ポルノは非常に厳しいわけですね。まあ、あと強姦ものについて厳しいと。つまり人権抑圧、製造行為自体が人権侵害であるようなものについては厳しいと。

ワタル 実際にそういう事件が起きてる。社会問題になってるのも根拠があるんです。

にしかた うん。

ワタル で、日本の規制が厳しいように思うのは、それは規制の中でも自主規制が厳しい社会なんじゃないかって感じがします。

質問者13 その自主規制っていうのは、ある種日本流の、まあ知恵というか、必ずしもそういう線引くんじゃなくてやっていこうという知恵でもあると思うんですよね。それでもうちょっと言うと、その『完全自殺マニュアル』なんかのものは、欧米では果たして出版されること自体が有罪とかっていうこともあると思うんですよね。

にしかた や、もうそれは法律、法律と自殺みたいな問題になっちゃうと、ちょっと感じするかなと思うんですけど。そういえば安楽死法がある国ってあるわけですよね。あのーオレゴン州ですけど。あと、えーっと、オーストラリアのノーザンテリトリーと、オランダもそうでしたっけ?

ワタル オランダも自由化しました。オランダ、自殺まで、自殺幇助まで自由化した。

にしかた ああそうですか。すごいなあ。

ワタル オランダはもう、自由の実験国ですから。

にしかた うん。

ワタル だけどそのこと考える自由も大事。安楽死とのつながり。

にしかた ええ。

ワタル 安楽死とのつながり、安楽死も認めたくないがために自殺っつーもんを排除していこうっていうふうに、ものすごくそういうのも見られるかなっていう。

にしかた うん。

篠田 えーっと、他になかったらそろそろまとめに入りますけど。あります? あ、はい。

質問者14 要するにあのー、『自殺マニュアル』と、まあ「発禁」、「発禁」っていう状態にしようっていうのは、それに触発されて死ぬ人がいるっていうことなんでしょうか?

篠田 うん、あ、そっか。

ワタル でも、「いてもいい」っていうことなのにねえ。

篠田 (笑)うん、まあだから、

ワタル ……られてないっていうのが出発点なんで。

質問者14 いや、あの僕なんか考えるとちょっと死んでみようっていうのは、ちょっとなかなか考えにくいことで。他のことならいざ知らず、ちょっと死んでみようってわけにはいかないと思うんですよね。普通の感覚だと。っていうか試してみようっていうわけにはちょっといかないことで。あの、死にたい人が参考にするだけだと思うんですよね。っていうのは、

ワタル 99%そうでしょうね。

篠田 あ、それはそうなのよ。ただ死にたい人でも、さっき言ったようにクスリとかどのくらい飲めばいいかわかんないから、それで多少ブレーキになってるのが、そういうマニュアルがあるとそれが外されちゃう。そういうもんかもね。方法が、方法が書いてあるから。

質問者14 じゃあ、もしその本なくて、そういうノウハウなかったら違う方法で死……誰も死に、死に方がわかんないっていう人はいないと思うんですよね。

篠田 うん。

質問者14 だから違う方法とらせちゃうしか、

ワタル 失敗する人に知識が伏せられていたら、無駄な、考えもせずに切って死ねると思ってる人が手首切って死ねないけど、無駄な不幸が大きくなると思いますね。

にしかた まあ、そこが……あのーあれが青梅だから中央線よく使うわけですけれども、まあしょっちゅう迷惑被ってるわけです。

ワタル でもねえ、あそこにちゃんと、あのー膨大な賠償請求なされるって読んで、あそこで踏みとどまる人の方がたくさんいるでしょうから、そういう知識を伏しちゃダメだと思う。

にしかた それはその通りです。

質問者14 うーん。違う方法探すと思うんで、まあ、「発禁」にしたってしょうがないと思うんですよねえ。

ワタル まったくそうです。

質問者14 だから、あの……でも、統計的に何かあるんでしょうかね? あのー、触発されてやるとかっていう、そういうふうなデータっていうか。

ワタル 台湾なんかだと、実際に遺書に、この本、台湾……中国語訳されてるんですが。「この本を読んだから自殺する」って遺書に書いてあったっつーのが一番決定的な例で。

篠田 そんな辛口な、

ワタル この本があったからね。

篠田 あー。

ワタル でも、あ、それで台湾とかは、もう日本よりもすごい状態になっちゃったりするんですよ。だけど、それはその人が本を読んで決めたことですよね。それって全然悪くないんじゃないかな?

篠田 や、だから、あのーほら、今自殺の統計って出てて、少年の自殺ってこのごろは減ってたんですよ。で、去年また増えちゃったんだけども、やっぱりそれ、鶴見さんの本ってのは原因ではないんですね。自殺をしたいって社会的な背景からくる要因ってのあって。あのー、因果関係からいくとそういうことなんだけども、要するにその人が死のうっていう時に、手助けをしてるってことで一応反対でてるわけだよね。で、もっとひどい規制……どうしようもない人は、なんかそれが原因だっていう風に思い込んじゃってる人もいて。これはまあ、本末転倒なんだけども、あのー、そういうふうにしてたぶん大多数の人は、まあそういう社会的な背景があることは認めつつもね、それはいいかえてブレーキをかけるべきなのに方法を提示しちゃいけないって。たぶんそういうことだと思うんですね。あの、規制派の多数派はね。

質問者14 まあ、規制派はそう考える……はい、わかりました。どうも。

にしかた それはやっぱり、前提にあるのはやっぱり「生きることは正しい」ってことでしょう。

篠田 うんうん。

ワタル オレはやっぱり、戦後の、あのー戦後に、玉砕とか特攻とかああいうものをものすごく恥じて、教育方針として大々的に……えー他の国、例えばドイツだったらナチス、ナチス式の敬礼すら取り締まっちゃうような感じのヒステリックな対応をした流れを汲む……

にしかた あの、つまり戦争中に死ぬことを奨励したからその反動で。

ワタル そうそうそうそう。それまでの切腹とかする習慣を恥じたんですよね。思いっきり。

にしかた まあ、でも戦後民主主義みたいなことになるかもしれないんで、

ワタル なります、なります。だけど、

にしかた 結局、戦後民主主義は死ぬ覚悟とですね、あのー置きかえられて今まできちゃったのかなあって気も。

ワタル まあ、戦後日本に限っていえば問わない。

にしかた そうです。

ワタル ないことにして物事を考える。

にしかた や、そもそも脳死の法律できるまで死ぬことを定義する法律ってなかったわけです。

ワタル そういう、あまりにも「生きる」ってしかないともいえますね。こういう。

にしかた ええ。

ワタル もちろん「有害コミック」騒動、「有害コミック」規制もそうだし。なんでなのかなあ。うーん。世界が変わってるんだから……うーん。その当時としては、例えば最初はエロ本は本屋に置いてあったはずですね。

にしかた ええ。

ワタル それを自販機に移そうとか。なんとなく納得いくかな? っていうような感じを……条例だったはずですものね。

にしかた そうですね。

ワタル それを頭の固い人たちがずーっとやってるのかな、とか。

にしかた まあ、そういう形になるでしょう。あとちょっとあのー、こういう、僕がこういうこと言うの変な話なんですけど、

ワタル はい。

にしかた 青少年教育って、やっぱり東京の方はまあそういうふうに今回問題になるにしても、比較的まあまあまだ緩やかな方で。もしかしたら東京のですね、都庁の力にあらがえない地方の叫びなのかなあと思うこともあるんですよ。

ワタル ああ、なるほどね。うーん。

篠田 なに?

にしかた や、東京のワーッてくる、東京からくる情報の洪水に耐えられない地方共同体の叫びだとか。が、まあ青少年条例の一応支えになってるのかなあと。文脈としては思うこともある。

篠田 はい。えーっと、そういうことでいいかな? ちょっとまとめで、具体的に鶴見さんとしてはなんか今後こういうことやろうってのは今のとこないの?

ワタル うーん。

篠田 だからあのー、この、

ワタル 反原発運動でもやろうかなと(会場笑)。

篠田 でもこの間のね、鶴見さんのあれって、たぶん我々からみるとね、けっこう頑張った方だとは思いますよ。で、あのー、たぶんね、これからもうなんか運動起こすとしたら、個人の力の領域越えてるからねえ。そうじゃない運動をやんないとダメだと思う。個人でどっかに働きかけてみたいなことのレベルでは、今の行政の流れって止められないんですよね。

ワタル そうですね。だから本にも書いた通り、えーっと、今まで通りのやり方では絶対ダメだとオレは思ってますから。「相手が想像もしなかったようなやり方でやるなら、あるいはうまく行くかもしれない」という立場で攻めていこうと思います※12。

篠田 想像もしなかったってのは、ゲリラってふうになるわけね。

ワタル うーん……うまく思いつかないで、考えあぐねてる。

にしかた ま、それはほんとに色んな方法あると思うんですよね。

ワタル うん。

にしかた この前あのー、

ワタル 正攻法も方法の一つ。

にしかた ま、そうです。あの、ある日おたくが選挙に出るとかいうのは、要するにあれ、正攻法とも……

ワタル うんうんうん。オレがやっぱり、

篠田 おたくが入ってるのっていうのなに?

にしかた そういう、そういう“売り”にはなっている。

篠田 (笑)

ワタル 一生懸命働いてますっていう、おたく党だっていうのもいいんじゃないですか。

にしかた ああ、面白いです。

ワタル だけどオレが一番やっぱり突きたいなと思ってるのは、青少年に選挙権……未成年に選挙権を与える。未成年が発言するとかそういう状況が一番ベストな。

にしかた それはそうですね。子どもの権利条約とか言ってるわけですけど。

ワタル そうそうそう! 条約でしょ? 立法化してないんですね。

にしかた そう。あれをいかに、こう立法化していくかって話になるんです。

ワタル そうです! 世界では一番ダメなんじゃないですか?

にしかた や、でも外国でいくとやっぱり、や、うーん。

ワタル 批准、批准法とかってあるとね。日本にね。

にしかた 批准もそうですよね。まあ、外国でいうと、とりあえず子どもを強制的に誘拐して徴兵して最前線に立たせるみたいなのがありますんで。で、そのまま地雷原引き込まれて、あれはアラーのなんとかっての、そういうふうのありますんで。まあ、ちょっと、一番悪いとは言えません。

ワタル 子どもの権利どころじゃないの。全員虐待受けてる。

にしかた そうですよ。

ワタル 子どもに鉄砲もたしてやってる。

にしかた ええ。

篠田 あ、それとね、さっきちょっと話してて思ったんだけども、

ワタル アフリカとかも。

篠田 あのー、「有害」指定に対してね、憲法違反だって訴訟起こした例ってあったんですよ。「有害コミック」の時に。だから鶴見さんが個人でやるっていったら、それはけっこう方法としてはありえると思いますけどね。たぶん新聞必ず報道するから。それは。だからどうして「有害」なんだっていうのに「自分は有害って思わない」っていうので行政に対して訴訟を起こすっていう方法はあると思いますけどね。だからたぶんね、私が個人の領域を越えてっていうのは、やっぱり「有害コミック」の時に、まあいろんな、こう組織的な広がりを作ってったわけね。その例えば出版界でどうするかみたいなことでやってね。だからたぶん方法としてはそういう方向だろうと思いますけども、鶴見さん個人の方法としてはね、さっきこの裁判って簡単に否定しちゃったような気がしたんだけども、それはそれでありうるとは思います。あのー、ただ判決文の関連などあるから、具体的に判決でなんか勝ち取るって実効性はないんだけど。問題提起にはなるよね。裁判起こすってのね。

ワタル 有効だとは思ってないですね。オレとしては一番有効でないと思います。

篠田 うーん。や、でも、あのーそうでもないのよ。あの時は、どっかのほら、なんかゲームソフトの会社かなんかがやって※13、

にしかた ああ、ガイナックスですね。

篠田 そう。けっこう報道されたよね。

にしかた まあ、だいたい。

篠田 あのー、うん。そういうのに関心持ってる人にとってはすごく大きな話題になりましたよ。それ。

にしかた うんうんうん。まあ、そうでしょう。ガイナックスの時と、京都のとあるおじさんがやったというのは……おじさんっていうか、まあ……

篠田 裁判じゃなくて行政に対する抗議みたいなのね。

にしかた や、あれもそうなんです。

篠田 あ、裁判しちゃってんだ。

にしかた ええ。

ワタル 判決がでる前に絶版になっちゃったら話になんないですからね。

にしかた だからそれはもう、あのー、ま、それはそれで正攻法的なやり方もあるということで。

ワタル うーん。

にしかた それを取るかどうか、結局鶴見さんの判断ということになると思いますけども。

ワタル うーん。まあ、こうやって話してること自体が、私の考えた方法論でもあるわけですよね。

にしかた そうですね。あのー、例えばもうあちこちに講演して回るとかですね、それも方法の一つかも。受けるっていう人がいるかどうか、またあるんでしょうけどね。だからそれをもとにして、その死ぬことってどういうことなのか、死ぬこと……例えば死ぬことを防止と人権の関係とか、死ぬことを法律がいかに扱いあぐねてきたか、みたいなことをやるっていうのは面白いかもしれないですね。

ワタル そうですね。

●注
※12 『檻のなかのダンス』91頁参照。
※13 宮崎県は1992年7月、「宮崎県における青少年の健全な育成に関する条例」に基づき、パソコン用ゲームソフトを「有害図書類」に指定した。ゲームソフトメーカーのガイナックスは条例が憲法第21条等に違反し、無効であるとして、指定を取り消すよう訴えを起こした。第1審(宮崎地判1994年1月24日)、第2審(福岡高判1995年3月1日)ともに原告敗訴。最高裁第3小法廷は1999年12月14日、原告の上告を棄却した。


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