すばらしいワタル紀行 1999年11月10日(水)

『創』プレゼンツ 有害指定と自主規制 「完全自殺マニュアル」と「放送禁止歌」


1.「有害」指定と自主規制

篠田博之(『創』編集長) えーっと、じゃあ始めましょうか? 始めます。

ワタル えーっと、さっき一番最初に、えーとー

篠田 自己紹介まず。

ワタル あ、えーと『完全自殺マニュアル』著者でフリーライターの鶴見です。

篠田 鶴見さんね。あのー……

ワタル 遅れちゃってすいませーん。(会場拍手)

篠田 その筋ではもう、オーソリティだね。鶴見さん。

ワタル その筋っていうとどんな筋?

篠田 (笑)その筋って自殺志願者。例えば。

ワタル 筋ものであるとか?

篠田 さっきバイブルですってね。

ワタル とりあえずね、あのー、先月号と今月号の『創』を読んでいただければ。

篠田 あ、経緯は、うん。あの、特に先月、11月号かなり詳しく……あ、あそこで売ってます。

ワタル 12月号はいつ発売になったんですか?

篠田 えーっと、9日だから昨日だ。うん。

ワタル これがまたね。これ、これを読んで……さっき、えーっと、映していた議事録なんかが載ってるのが『創』の最新号の12月号で。これを読んでしまうともう……

篠田 絶望的になった?

ワタル うん。オレもう……篠田さんはまだ希望を持っているが、『自殺マニュアル』に関しては……

篠田 とにかく鶴見さんにちょっとショックを受けさせるかなって思ったんだけどさ。

ワタル いやいやいや。違います。違います。オレはもう神奈川県で指定※1になった時点で「あ、もう手遅れだ」って思って。オレはもうこの本は事実上「発禁」になることをみなしているので。その立場から話をしたいと思っています。

篠田 ま、そこんとこちょっとあとで議論しますけど。ま、ちょっと経過をね。

ワタル あとで出ますね。あ、あれ? この時間なったら経過説明もう終わったのかと思ってましたが。

篠田 いやいや。だって……いやだって本人来なくちゃ悪いじゃない。それ。

ワタル あ、そっすか。

篠田 うん。あのー

ワタル いや、その、そのころになってもってオレはいらねえかなと思って。

篠田 あのーいや、ちょっと、えーっと。そろそろ……こないだの早稲田のあれって行った人いるんですか? あ、いる?

ワタル どのぐらいいらっしゃいますかー? あそこで話したこととダブらないようにします。

篠田 ま、でも一応経過ちょっと説明しないとマズイから、ちょっと簡単に説明しましょう。えーーーっと、簡単にってわけにいかないんだよな。ま、要するに、えー、鶴見さんの『完全自殺マニュアル』が既にいくつかの所で「有害」指定をされてたんですけども。えー、今年になって特に東京都の動きが大きかったんですけども、警察が指定をしてはどうかっていう、あのー、行政の方へ持ち込んだわけですね。

 でー、その論拠とされたのが4月と7月だったかな? 自殺者が出て、その自殺現場にあれが置いてあったと。クスリと一緒に『完全自殺マニュアル』の本が置いてあって、ちょうどそれを見て、ま、一人はクスリ飲もうとして死ねなくて首吊ったんだよね。で、そのクスリの、えーとー該当ページが開いたままクスリと一緒に置いてあったってことがあって。ま、それが2件あって。

 えー、要するにこれはもう規制すべきではないかっていう話になったわけですね。で、東京都にあのー、そういう形で持ち込まれたんですが、東京都青少年条例では要するに自殺っていうのは犯罪じゃないんで、あの引っかけるのはなかなか難しかったんですね。条文からいうと。で、とりあえず東京都は見送りということになったんだけども、条例そのものを変えるべきだっていう議論になってるわけですね。で、要するに今の条例だとなかなか引っかけられないんだけども、条例そのものを改正して、そういうのを取り締まるべきだっていう。だんだんそういう動きになってます。で、東京都以外でいうといろんな県で、特に今度10月はいって、三重県と神奈川県で指定されたわけですね。で、割と拡大解釈で、要するにこの本は危険だっていうんで条例で引っかけようっていうに、ま、だんだんそういう動きが広がってます。

 あのーこの条例で「有害」指定をされちゃうとですね、あのー要するにその18歳未満に売っちゃいけないってことで大人は別に買っては構わないんですけどね。条例の条文通りに解釈すれば。ただ、要するに誰が18歳かっていう区別がつかないんで、もう書店が事実上置かなくなっちゃうんですね。ですからもう「有害」指定がされた県っていうのは、ほとんど発売禁止に近い状態になってます。

 問題は東京都で……東京都であの、健全……「不健全図書」っていうんですけども、それに指定されちゃうとですね、もう、これ出版社にとっては大打撃で。あの、かつて90年代前半にコミックで「有害」指定っていうのがやられたんですけども、だいたい東京でやられちゃうともう絶版なんですね。事実上。あのー、出版社が出版を停止しちゃいますんでね。ですから事実上「発禁」っていうことになっちゃうわけです。で、えーーー、要するにその東京都の攻防戦が、私はま、これからあの、本格的にやると思うんだけども。鶴見さんはちょっと悲観的なんだけどね。で、要するに、そのとりあえず今の条例では引っかけんの難しいっていうんで条例そのものを変えようっていうふうにやってんですよね。

 で、それが、どういう審理が行われたかっていうのを議事録で明かにしたのがその『創』の今月号で。そこのやりとりを見てると、もう、その審議会の委員は基本的に「不適切だ」っていう判断をしてるわけね。この本はダメだっていう前提で。だけどあの、法律に照らして、条例に照らして、今指定するの難しいからっていうのでとりあえず見送りっていう。そういう論法なんだよね。ですからこのままいくと条例の条文を変えることで、あのー、『完全自殺マニュアル』はもうなくしちゃおうっていう。ま、だんだんそういう動きが進んでるっていうことですね。で、そのー、議事録のアレはちょっとせっかくOHPあるんで、あとで映してちょっと説明をしますけども、えー……

ワタル まあ、詳しく知りたい人は、でも『創』を読んでいただくしかないと思います。

篠田 だけど、あのー、今回のもう一回読み返してみたら、長岡さんっていうライターが書いてる、ちょっと今日なんか父親が亡くなっちゃって来れなかったんですけども、あのー、要するにそこで東京都がですね、とりあえず見送ったんだけども、あの「見解」※2って出したんですね。えーっと、審議会の。

ワタル 何回も審議するのはおかしいから、えーと、審議ではなく議論? 議論をさせるという。これはまたね、あの「不健全」を「不適切」と言いかえるみたいなすごいウルトラ技が炸裂したっつう。

篠田 で、その会長声明が途中で修正されるんですね。議論の過程で。で、それがどういうふうに修正されたかっていうプロセスを、こう細かく追ってんです。どういう議論がなされて、どういう条項がさしこまれたかって。ま、結論的にいうと条例を見直そうっていうのを、条文を入れさせんですね。議論のせいで。ですから、もう条例を変えて規制へもってこうっていう意志は、もう明らかなんですね。東京都の場合はね。えー、ということで……

ワタル それで東京都は条例を改正してまで、えーとー……この本を規制する方針だということをはっきりと打ち出したので。えー、事実上そこで、オレはゴーサインが出たとみなしてるんですよ。えー、「有害図書」っていうのが……

篠田 だから、これが反対運動ないともう確実にそういきますね。

ワタル や、もう確実にそうなってるし。えーとー

篠田 (笑)流れとしてはね。

ワタル そういうこと話してても、もうだから無意味だってことなんすよ。あのー、具体的にどう……じゃあ、どうすりゃいいのかってことから考えないと。これ、今映してんのはオレがねえ、今日話す内容書いてきた、ま、前回はレジュメとかいって配ったような類のもので。まあ、だいたいこんなこと話すつもりであると。原発まで話がいったら、いけたらいいんですけど。篠田さんのご意見は?

篠田 あ、じゃあ、ちょっと今の話、ちょっと、あの……ここに今、手元にこの東京都の、えーと審議会の会長見解っていう現物あるんですけども、ちょっとせっかくだから映して、どこがどう変わったかってちょっと映してみて。

ワタル えーっと、とりあえず注目は、会長の見解とこうなっていると。審議会でのあれじゃないんですよね。

篠田 だから審議会ではとりあえず、審議はしないってことになったんです。で、審議にかける前に、これ条文であのー、この『完全自殺マニュアル』を適用させるのは可能かどうかと法的に検討したんですね。で、法的に難しいと。つまり、青少年条例っていうのは、まあ、主に、その性表現なんですね。で、戦後の……

ワタル 性と暴力。

篠田 ま、暴力……まあ、主に性だけどね。まあ暴力も、

ワタル 後付けで暴力。

篠田 多少あるんですけども。ただ、そこの中に自殺を含めるっていうのはかなり無理があるわけですよ。自殺は、まあ、犯罪じゃないんでね。で、要するにその条例で引っかけるのは難しいってことになるんですけども。

 で、審議はされないけど会長見解って出たんですね。3つに分かれてて、問題のやつはこの2項目なんですけどね。えー、ここに……ちょっと見にくいかな? 「条例の見直しを含む適切な対応をとられるようにする」って。この「条例の見直しを含む」っていうのが、この審議会の議論で途中で挿入されるんですね。ですから、最初は条例見直しまでは、この会長見解に入ってなかったんだけども、いや入れるべきだっていう審議委員の、あの、議論が出てきて。で、最終的にこれが入ったんですよ。「条例の見直しを含む」っていう表現がね。だから、東京都としては条例改正を、もう、あの、ま、たぶんそういくと思うんですよね。あのー、そっちの方向目指して動きますよっていうのを表明したわけですね。

 で、最初の、審議会に出された原案だと、この条例の見直しを含むっていうの入ってなかったんですね。言葉として。で、そこで議論をされる中で、1項目入れられると。でー、ちなみにその審議委員っていうのは、例えば朝・毎・読の、そのマスコミの代表なんかも入ってんだけども、だからもう、そういう人も含めてもう規制すべきだってなってるっていう情けない状況なんですね。

 確かに、その『完全自殺マニュアル』っていうのは評判は悪いと思うけれども、とにかくこういう形で条例とか法的規制をするっていうことの問題ってのはすごく大きいんですけども、そのマスコミの関係者が入ってる審議会で、もう簡単に条例見直しすべきだみたいな……なっちゃうっていう。あの、その意味ではすごく恐ろしい状況なんですよね。

ワタル で、要するに、あのー、理由がないはずなんで。この本を「有害図書」指定……でも、強引にやっているということは、もう、あの、理由なんか全部決まってるわけですよね。オレが数えた分では9つの県で「有害図書」に決まってて、東京もその方向で動いているということは、えー、理由なんかなくても恣意的に「有害である」とかそういうこと……「不健全である」とかを決めることができる状態になっているということは大事だとオレは思いますね。

篠田 ただ、あのー、いや代弁するつもりはないんですが、ちょっと背景を説明しておくとですね、やっぱり青少年……あのー、ほら神戸の事件以来、少年事件って頻発して。その青少年対策みたいなことって橋本の前の、あの政権の時に、それよりもけっこうやったんですよ。でも、その中でこの自殺の問題ってけっこうクローズアップされてきてですね。で、今年、その、子どもの自殺っつーの、あの、何件か出てきたことでやっぱり自殺の……青少年の自殺問題っていうのは一つのテーマにはなってんですよね。で、そこの中でターゲットとして『完全自殺マニュアル』が出てきちゃったっていう。まあ、向こう側の流れからいうとそういう流れであるわけですね。

 で、あの、忘れないうちにこれ、ちょっと見せときましょうね。えー、はい(帯付き『完全自殺マニュアル』を取り出す)。要するに太田出版なんですけど。これ売ってるのね。太田出版はこれに自主規制の措置として、このビニールパックかけて“18歳未満の購入ご遠慮ください”っていう。ま、ビニ本、エロ本方式なんですけども、これで一応出版社側としては自主規制をすることによって、指定を回避しようっていう。そういう考え方なんですね。で、あの、鶴見さんはこれは、あのー……要するに「有害」であることを自ら認めるようなもんだっていって反発して。だから太田出版と対立しちゃってる状況になってます。

ワタル えーっと、まあ、その話はオレは重要じゃないと思うんで今回は省かせてもらって。えーっとですね……前回、この本が発売されて、93年の時……93年から94年、『自殺マニュアル』騒動って起きたんですが、えーとーそん時に福岡県で少年が飛び降り自殺をして、警察が、警察とその親がこれを「有害図書」に指定しようっていう動きがあったのが『自殺マニュアル』騒動と言われるもののピークだったんですが、福岡県がそん時に、どう考えたってこれは指定できないって見送ったんすよ。だけど……で、それで、あのー「有害」する、しないっていう話、騒動は収まったはずなのに、今回あえてこういうことをして。より厳しい状況の中でなおかつ通ってしまうということは、えー、まあ、何か後押しする力があったとしたらその「帯」以外ないはずなんで。その「帯」っていうのは、やっぱりオレは、あのー、作戦としてダメだったなっていうしか思えないんですけどね。結局、

篠田 ま、まあ。

ワタル 「そのせいだ」って言っても過言じゃないっすよ。

篠田 あの、そのことは『創』11月号ですごく詳しく、あのー書いてます。

ワタル あ、そうですね。でも、ここに来てらっしゃる方々、みなさんは読んでるんじゃないかと。

篠田 あの、けっこう『朝日新聞』とかも大きくやったからね。この「帯」について※3。

ワタル インターネットでもわざわざ打ちこんでくれてね。全部読めるようにしてくれた人とかもいる。

篠田 だから結論的にいうと一番、ま、絡んだ太田出版の落合さんも来てもらおうかなと電話したんだけど連絡つかなくって。

ワタル ダメダメダメ。かく乱させ……あの、こっちが言いたいことを

篠田 いや、ま、そりゃいいんだけども。

ワタル かく乱させられちゃう。

篠田 あのー、だからとりあえず『朝日新聞』なんかはこう報道して。けっこう業界なんかでは話題になったのは、要するに著者の了解を得ないで版元が自主規制しちゃったっていう。そのちょっと別な問題に仰天だったわけね。で、要するに鶴見さんの意向を無視してっていうか、まあそれは太田出版の対策なんだろうけども、断わりなく出版社の判断でビニールパックをかぶせて帯を付けちゃったわけね。で、あのー、まあ、個人的にその太田のやり方の是非論っていうのは、これはたぶんね、業界で議論しても分かれるところだと思うんですけども。やっぱり著者に何の断わりもなくっていうのは、やっぱりちょっとこれは問題じゃないかなっていうのが、たぶんコンセンサスですよね。今んとこのね。ま、そのへんは太田、太田の考え方っていうか見解はあると思うんだけどね。はい、じゃあ、ちょっとこの話入りましょうか?

ワタル そうですねー でも、オレはあんまりもう関心は……

篠田 鶴見さんが関心なくなっちゃたら終わりだよ。

ワタル 関心がある点は、えーとー、要するに、例えば三重県の……長岡さんが三重県の、その最新の原稿を書かれたのを、三重県の、その青少年教育委員にどうしてかって聞いたところ、「ウギャー」とか「グエー」とかそういう部分が残虐性を誘発するからだとかね。そういうことになってるんで。これ口で言ってもしょうがねえと。口でいくら言ってもダメなんだというふうにオレは見なして。で、オレはやるだけやったつもりで。はっきりいって成功したかなとさえ思ったんですが、そういうことを平気でやっていると。じゃあ、今までのやり方じゃダメなんだっていうふうにって、そっから出発しねえと。オレの本だってまだありますから、それらを取り上げられないためにもですね、有効な議論とかそこじゃねえかなとオレは思うんですけどね。

篠田 じゃあ、ちなみに鶴見さんとしては、今はこの2ヵ月くらいやってきたのがダメだったとして、あの、

ワタル ええ、ええ。

篠田 ま、ちょっといきなり結論から言いたいことじゃなくて、

ワタル や、これも全部が戦略だと思ってやったことが全然ダメだったと。

篠田 どこが、どこがマズかったって評価してるわけ? 鶴見さんとしては。

ワタル うーんとね……や、自分としてはベストの戦略だっつーふうに思ってやってたわけじゃ。とりあえずこれが一番いいだろうと思ってね。雑誌に、『FOCUS』※4に出たりとかやったんですが、それじゃあダメであると。じゃ、どーすりゃいいんだと。次にオレの本、もう人……新聞記事なんかでも『人格改造マニュアル』なんていう言葉が出ているぐらいなんで危ないと。非常に。

篠田 うん、まあ、そうだね。規制進むとたぶん、鶴見さんの他の本までいきますよ。これ。

ワタル マニュアル本全体を規制しようというような、ちょっと動向も感じられますね。あのマニュアルの棚全体。
 それから今回の「児童ポルノ法」。これも重要。「児童ポルノ法」って、「児童」なんていうと、あのー、本当に欧米とかで話題になってる少女虐待とか、そういう話のように思ったら、実は未成年者全員を指していると。高校生とかね。19歳の女の子がエッチ本とかに出ていてもそれを「児童ポルノ法」によってポルノ……ポルノって言い方もすごいすけど、まあ全部ダメになるんですよ。だから『べっぴん』『デラべっぴん』『投稿写真』『熱烈投稿』とかああいったもの全部ダメでしょ。三和出版は倒産ですよ。きっとね。三和出版、英知出版倒産。

 こういうふうに、ゆゆしい……しかもそれに限らず、それにとどまらず、なんと紀伊國屋書店が「児童ポルノ法」では規制されてもいないのに猥褻なマンガ本をどんどん返本しているというですね、この事実。弱腰。書店の自主規制問題。なんちゅう……なんたるバカどもかと。なぜこういうことが起きるんですかね?

篠田 うーん。や、あの、それちょっと注釈をいれてみますけど、あのーたぶん鶴見さんとこいってんだと思うんですけど、これ太田出版とかあの関連だけども、ま、要するにこういうFAXが回ってるんですね。業界をね。要するに、えー、ま、紀伊國屋は典型なんですけども、マンガそのものを置かないってんでどんどん返本しちゃってて、マンガコーナーがガラガラらしいのね。で、要するに何らかの形で、その少女の絵が描いてようなカットがあるやつ、マンガは、とにかく危ないんで置くのはやめようっていうんで……あ、要するに「児童ポルノ法」ってこの11月1日施行されたんですよ。あのー、その法案については前ここで議論しましたけどね。ついに11月1日から施行されたんですね。で、今、取次なんかはちょっと注意せよってような警告流した。で、それが過敏な反応を生んでまして。紀伊國屋はですね、その危ないマンガは全部返本しちゃったらしいのね。で、なんか棚がガラガラなんで話題になって初めて発覚したっていうことが。

ワタル 紀伊國屋チェーン店全店に言えることなんですかね?

篠田 や、もう全店でとられていると思います。

ワタル 全店ですよね。紀伊國屋の方針と。

篠田 だから、今課題になっている理由だけど、

ワタル 相当な販売力。日本一の販売力を持つ。

篠田 それとだから……それを受けて、版元がけっこう調べたりしてるんだけども、池袋のなんだ? 池袋なんかもそうだってなってるらしくって。

ワタル それもオレ聞いてないです。

篠田 うん。その新宿の紀伊國屋のあれが、こう広がってるんですよ。今ちょっと。で、あのー

ワタル そうそうそうそう! そうね。

篠田 これ、すごくバカバカしいのは、あのー

ワタル 業界第1位の書店がそうするんだっつーことを、なんかそれに従う傾向がね。

篠田 うん。あのーすごくバカバカしいのは、このコミックがどうなんだっていうのは、その「児童ポルノ法」の法案の審議の時すごく問題になって撤回させたんですね。絵っていう表現、表現が入ってたのを撤回させてコミックは問題ないっていう言質までとりつけたのに、それがちゃんと伝わってなくてもう現場で混乱しちゃって。あの、コミックが危ないんじゃないかって。ま、たぶん昔の「有害コミック」騒動が頭にあるんだと思うんですけども、コミックが危ないっていってマンガ返本しちゃってんですよね(笑)。だから、まったく、あのートンチンカンな対応なんだけども。

ワタル トンチンカンな対応っていうか、それから学ぶべきことは、コミック有害指定に反対する動きっつーのはまったく無効だったってことじゃないっすか。

篠田 ははは、それは違う。

ワタル や、違わないんじゃないですか。

篠田 でも紀伊國屋の混乱はね、たぶん取次で説明して、ま、要するにこれ、既に議論されて問題ないっていう答弁も引き出されているので、たぶんこの混乱はある程度収束すると思うんだけども。要するに今業界が何を恐れているかっていうと、摘発第1号っていうのがもう新聞でバーンってやられんですよ。必ず。これ法律が施行されるとね、新聞がニュースになるために摘発された第1号って相当大きいニュースに扱いますから。要するに自分のとこがそれにやられたくないっていう。あのー、ことなんですね。で、前の「有害コミック」騒動の時は神田の書泉ブックマートとか

ワタル 逮捕されたのね。

篠田 摘発はいって逮捕されたのが、もう大々的に報道されたんですよ。

ワタル それもう完全に越権行為でしょ。

篠田 そうなるとね、そこの本屋ってもう大打撃受けるわけね。なんか悪いこと……

ワタル 大打撃どころの騒ぎじゃなくて、どうしてそういうことができるのか、オレはわからないんすけどね。

篠田 それから、まあ、ある種のだから警察にとっての見せしめなわけね。法律施行されて、そして第1号近々挙げるっていうふうに今なってるわけですよ。で、要するに自分とこがそれにひっかかりたくないってんで、もう戦々恐々としてて危ない本は全部返本しちゃえってなってんですよ。

ワタル だからケーサツのやってることっつーのは、全然法律に基づいてないからやってるわけで。要するにケーサツは、あの、前回の『創』にも書いてありましたけど、ケーサツっつーのは本来青少年の問題を考えるような機関じゃないんですから。勝手やってると。勝手なことをやってるのを、我々は止めることができないってことですよね。だからあれはたぶん暴力団であると見なした方がいいですね。で、実際暴力団といわれてる人たちは、オレは敬意を表して「ヤクザ」と絶対書くことにしてますけど。実際暴力団っていうのはケーサツのこと。

篠田 警察用語ですね。

ワタル あれ、あれはもう単なる「暴力団」。なぜ我々はケーサツを恐れるかっていったら彼らは暴力を使うのがうまいからでしょ。

篠田 や、そりゃいいけど、ちょっと、ちょっと鶴見さんのじゃあ、あれでね、時間とりますから。せっかくレジュメ作ってきたから。

ワタル えーっとですね。うーんとー……勝手にじゃあ最終的にはその話に関して有効であるような形にしますんで、とりあえず、えー……

篠田 だから今日できたらさあ、あのー、ほら、要するに「有害コミック」の時のけっこう市民運動とかいろんな動きができたんで、あのちょっとそういうところまで論議そろそろ始めたいな……まあ、そろそろっつたって、

ワタル そうですね。

篠田 ちょっと鶴見さんがちょっと最後かもしんないけども、

ワタル それに内容の是非。

篠田 あのー、具体的にどうするかっていうふうに進めていかないとダメだと思うのね。

ワタル そうっす。

篠田 建設的にならないから。

●注
※1 神奈川県児童福祉審議会文化財部会は1999年10月18日に『完全自殺マニュアル』の「有害」指定を決定した。
※2 『完全自殺マニュアル』に関する東京都青少年健全育成審議会(会長=石崎富江・日本善行会常務理事)の会長見解は1999年8月26日に発表された。修正前/修正後の内容は以下の通り。

修正前   修正後※下線が変更部分
1 本審議会は、株式会社太田出版発行の「完全自殺マニュアル」について、自殺の手段・方法等を詳述し、自殺を誘発するおそれのある内容であり、青少年の健全な成長を阻害するおそれがある不適切なものと考える。しかしながら、審議会としても、現行条例の規定のもとでは、本書の不健全図書類指定は困難であるという、今回の東京都の判断は適切なものと考える。

2 自殺を誘発するような記述・描写をしている図書類は、青少年の健全な成長を阻害するおそれのあるものであり、関係業界はもとより、東京都においても適切な対応をとられるように要望するものである。

3 根本的には、このような図書類による青少年の問題が生じることのないように、条例等による規制のみならず、自他ともに人の命の大切さや生きる喜びの理解等、青少年の生きる力や判断力の育成・強化へ向けた、家庭や学校、地域等のより一層の取組みが何よりも重要であると考える。

  1 本審議会は、株式会社太田出版発行の「完全自殺マニュアル」について、自殺の手段・方法等を詳述し、自殺を誘発するおそれのある内容であり、青少年の健全な成長を阻害するおそれがある不適切なものと考える。しかしながら、審議会としても現行条例及び認定基準の規定のもとでは、本書の不健全図書類指定は困難であるという、今回の東京都の判断は妥当なものと考える

2 自殺を誘発するような記述・描写をしている図書類は、青少年の健全な成長を阻害するおそれのあるものであり、関係業界はもとより、東京都においても条例の見直しを含む適切な対応をとられるように要望するものである。

3 根本的には、このような図書類による青少年の問題が生じることのないように、条例等による規制のみならず、自他ともに人の命の大切さや生きる喜びの理解等、青少年の生きる力や判断力の育成・強化へ向けた、家庭や学校、地域等のより一層の取組みが何よりも重要であると考える。

※3 『朝日新聞』1999年9月4日付朝刊「自主規制、自由に勝る? 完全自殺マニュアル 版元が「18禁」の帯」のこと。この記事には以下のコメントが掲載されていた。

読者や世間を欺く行為
鶴見済さんの話 6年間にわたり、未成年者を含む100万人以上がこの本を買ったが、自殺の誘発性などなかったことは、自殺率などのデータを見れば明らかだろう。
 今回の出版社の措置はこれまでの姿勢を翻し、全く独自に本が「有害」だと認めている。著者の自分だけでなく、読者や世間までも広く欺いた行為で、許し難い。
流通させることが肝心
太田出版の話 有害・不健全図書に指定されると、実質的には一般の書店に並ばなくなり、18歳以上の人に買ってもらうことも難しくなる。
 今の時代に必要な本だという認識は変わっておらず、自主規制することで指定を避け、きちんと流通することを目指している。

 

出版社は信念を持って
 浜田純一・東京大学社会情報研究所教授(情報法)の話 青少年健全育成条例などで図書類を規制する場合、対象は出版そのものではなく、あくまでも売る側だ。出版の自由は憲法で保障されているのに、今回は出版社自らが、表現の自由を制約した形となっている。もっとも、帯をつけることで話題性を高めようとする判断があったのかもしれない。
 著者の承諾なしに、販売対象を限るのは問題だ。「いい物だ」と判断して本を世に出したのなら、出版社は信念をもって臨むべきではないか。

※4 『FOCUS』1999年9月29日号に掲載された「trouble 「完全自殺マニュアル」著者が版権引上げ宣言!――ベストセラーの有害指定問題」のこと。


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