すばらしいワタル紀行 1999年11月10日(水)

『創』プレゼンツ 有害指定と自主規制 「完全自殺マニュアル」と「放送禁止歌」


11.原発まめ知識

篠田 しかし考えてみたら、今日鶴見さんの本を持ってきて会場で売ればよかったね。丸山真男みたく。

ワタル いやいやいや。

篠田 サイン本。

ワタル 今は言うだけでいいです。

篠田 いやいやいや(笑)。でも……まだ、けっこう書店にあるよね。ビニールかぶってるけどね。

ワタル ある時フッと消えると思うんで。お早めにお買い求め下さい。

篠田 (笑)はい、じゃー、そういうことで、もう終電の時間もあるんで。まあ、あれだね。もう、あの、鶴見さんは割とほら、もうなんか「発禁」っていうような雰囲気だけども、まだ、たぶんね、あと1年ぐらいこの攻防戦あると思うわけね。

ワタル はい、ちょっ、時間的に……

篠田 この、このままいく……

ワタル 「発禁」は時間の問題であると。

篠田 や、このままいくとするとね、あと1年半くらいで「発禁」になるよ。

ワタル オレがいつも考えてんのは、波及を食い止めることかな。

篠田 だから、まだあのー……そういうことで……だからあれだよね。えー「有害コミック」の時にも、エネルギー持って結構いろんなことあって。あのー、あれだから、頒布禁止なんでけっこう盛り上がったからね。あの、そもそも……ま、ちょっと私はなんかあの時のエネルギーはちょっと疲れてて(笑)、どうかなって気がすんだけども、それはやり様があるんで。少なくとも、まあきちっと議論をしていくと。で、そこには審議委員になったらマスコミが代表みたいなシステムはあんまり考えないで。あれ規制に賛成してる可能性大だからね。

にしかた うんうんうん。

篠田 そういう人にむかって議論していくっていうのは、まあ、それなりの有効性はあったよね。コミックの時はね。だから方法はまだあると思いますんで。えー、まあ、なんか機会を見てまたやりましょう、ってことで。

ワタル 少なくともこういうようなことを書くと思いますんで。出た時は読んでみてくださーい。

篠田 はい。ああ、そうね。はい。なんか早稲田、この間早稲田からお呼びがかかったから、今度別の大学ね(笑)。でさあ、その早稲田の人たちっていうのは規制は反対って雰囲気なの? 学生は。

ワタル や、元々そのことは全然知らずに僕のとこに依頼が来て。で、そういうネタを振った。

篠田 それはなんで? その自殺について関心をもってる人ってわけでもないんだ。

ワタル 人物研究会ってのは要するに人物について、

篠田 人物研究会ね。いやいやいや、ま、人物研究会って昔からやってそうだけどさ。うーん、でも、だけどそのなに? 鶴見さんの本って大学生ってのは読者としてけっこうあるわけ?

ワタル え? あ、中心読者層じゃないっすか。

篠田 ふーん。あ、そっか。でも、ま、宮台さんのあれもあったからな。あれは。

ワタル 宮台さん、でもオレが……

篠田 宮台さんのファンは学生だよな。

ワタル ま、こんな感じで。

篠田 はい。そういうことで。えー

ワタル 最後にじゃあ、原発まめ知識いきます(会場笑)。興味のある人は是非。付録。別にこれはあのー、本編とはなんも関係ないんで。いいっすよ。全然ザワザワしちゃって。

篠田 はい。どうぞ。じゃ、手短に。

ワタル 手短にっつーと、あのー、時間外に話しますんで。

篠田 そうだ。ごめんごめん。あの我々はいいんだけども、店はずっと4時までやってるから。あのー、あと……だから4時間やれるよ。原発まめ知識(会場爆笑)。

ワタル オレは終電でとっととトンズラするから。

篠田 (笑)

ワタル 被曝量は距離の2乗に反比例するという物理、物理学的法則

篠田 なるほどね。

ワタル を知っていれば、概ね誤らないんじゃないか。

篠田 え? なに?

ワタル 被曝量は距離の2乗に反比例する。どういうグラフかというと、こういう感じのグラフになってきます。

にしかた 2倍離れれば4分の1になる。3倍離れれば……

ワタル だから、これはもう世界的には常識なんですが、日本の……まあ、あそこで、あのー、窓を閉めるとかそういうのがいかに関係ないことかっつーのよくわかりますね。あんなもん。えーっとねー、

にしかた 屋内退避は非常に大きな勘違い。

ワタル いまは『危険な話』※18って実は買えないんですけど、買ってない人は読んでみると愕然とすると思いますよー。えーっとー、みなさん死ぬんですよ(会場笑)。当たり前だよね。でも、ガンで死にたくないからねえ。だから放射能が……あ、放射能と放射性物質の違い。放射性物質っつーのは、これ……放射線っていうのは、放射性物質が出すエネルギーのことで、α線、β線、γ線。X線なんかもそうですね。これ放射能っていうのは放射能、放射性物質……放射線を出す物質がそこにある状態のことを「放射能がある」という。で、放射能が出ているという、ある所から出ていると思ったとき被曝したくないと思った人は、距離を離れれば離れ……ちょっとでも、2乗に反比例するってことは、ちょっとでも離れれば離れるほど、もう、あのー、ガクンと、1歩でも2歩でも下がった方が被曝量は減ってしまう。

 ただし、放射性物質が体内に入るというのはどういうことかというと、これはくっ付いちゃってるわけですから距離がゼロになってしまう。そうすると、その放射性、放射線を出す量、例えばセシウムであるとかヨウ素であるとかが、どんなに微量であったとしても被曝量はグラフ的にいうとどうなるかっていうと、この線は交じらないわけですから、ガーッと無限大になってしまう。そして被曝量を、どこまで逃げたとしてもこの線もこっち側は交じらない。っていうことは、どこまで逃げても被曝するってことなんですねえー。以上!(会場笑)

篠田 もう、もういいの?

ワタル 以上です。

会場から 反原発運動が全然盛り上がらないってのはどういうわけですか? あの、反原発の機運が……

篠田 いやいや、それ反原発じゃなくて市民運動っていえば停滞の一途をたどってますね。

にしかた そう言えるんですか?

篠田 そうだよ。

ワタル 何で広瀬隆さんは、広瀬隆さんは、

篠田 反原発だけ……

にしかた 反原発の市民運動は衰退してるってことですか?

篠田 反原発に象徴される……

ワタル なんかねえ、いや、なんかあのー、混乱してる。

篠田 まあいいや。その話はまた(笑)。

ワタル 同じ、同じ問題ですよ。

篠田 市民運動って大きな力になってないよ。いま。

にしかた 地域化されてるんじゃないですか?

篠田 別な、別な形での市民運動ありうるかもしれないけども、かつての例えば原発反対運動、運動って……あ、地域化されてるか。大きな力になってないぞ。いま。

会場から 『危険な話』みたいなころ、みたいな感じはどうしてないのかなってな感じ……

ワタル オレもそう思いますね。

にしかた まあ、そういう国民的な盛り上がりって、まあ、だから原発の時には……

篠田 いや、例えば、うーん……

ワタル 『危険な話』っつーのは、要するに東海原発が爆発した話ってことなんですよ。

篠田 盗聴法にしてもさあ、その小林よしのりなんかにしても、市民運動っての遅れてるよ。いま。

ワタル や、オレが自分で、まあオレも『危険な話』とか熟読しましたから。東海で、東海でああいうことが起きたっつーのはメチャクチャ、すげえ恐いと思ったんで、いろんな人に「恐い、恐い」って言ったんですけど。なんかねえ……狐につままれるみたいな感じで。で、もう言うだけ損だと思って、もう言うのもやめちゃったっつーね。そういう感じのことを、例えば広瀬さんなり、土田さんなんかも経験してきたんじゃないかと思うんですよ。だからやめちゃったんじゃないかなーと思って。声高に言うのはね。

篠田 だけど広……ま、いいや。広瀬さんの本ってねえ、ちょっと危ないとこあんですよ。

ワタル だけど、オレ同じジャーナリストとして、例えば自分が覚醒剤の問題を日本国民が誰も知らないようなことを自分が知ったと思ったときに、この広瀬隆って人がやったことってのはとてつもないなと思いますもんね。それだけでオレはもう、尊敬しますよ。

篠田 アジテー家なんですよ。広瀬さんって。

ワタル ニュースソースが1ヶ所しかない問題を覆すっていうことはものすごい難しいことで。まだ覚醒剤だったら、えーっとー、自分の体験であるとか、周りにも使用者がいっぱいいるとか、そういうことでなんとかそういう情報を頼りにできるんですけど。この人は、えーっと、高度に専門的な情報っつーのは非常に難しいですね。それを覆した人間っつーのはかつてないんじゃないか?

篠田 や、その『危険な話』ってのはなに? 新書と文庫になってんの?

ワタル なってないんですよ。どうなっ、どうしてなんでしょうかね? これを今読んでみたらと思いますけどね。これ今手に入りませんから。広瀬さんの本。えー、文庫になってんのもありますんで参考までに読んでみてください。すごく、あの、オレは、オレはけっこうね、本気で泣いた。泣いた、泣いた。ドイツのね、ドイツの反原発運動の人たちの取材に行くんですよ。その、あれが書いてあって。当然日本の状況と、こう、対置させながら書いてあって。うーん、非常に文章的にも力強く、同じ物を書く人間としてもこれは立派な仕事っつーか、たいした仕事だなと感服しました。

篠田 はい。ま、まあ、その話はまた次の機会ってことで。

ワタル まめ知識?

篠田 とりあえず、あの、お開きにしましょう。で、お店の方はたぶんまだやってると思いますので、時間がある方は残って話してください。じゃあ、あのー、そういうことで。お疲れ様でした。(会場拍手)

おわり

●注
※18 『危険な話 チェルノブイリと日本の運命』(広瀬隆著、八月書館)のこと。ちなみに『無気力製造工場』45頁には「以前広瀬隆の『危険な話』を読んで、目の前のスパゲッティが放射能の塊みたいに見えたことがある。実際、スパゲッティはしばらくの間食べなかった」とある。『完全自殺マニュアル』の「はじめに」にも『危険な話』が出てくる箇所がある。


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