すばらしいワタル紀行 1999年4月2日(金)

現代的犯罪とその背景


8.キーワードは「自由」

シンジ でもほら朝日新聞とかいろんな新聞がね、ほら、だめ連ってのあるじゃないですか。

ワタル はいはいはい。

シンジ でー、ま、だめ連ってみなさんご存知ですよね? ご存知ない方いらっしゃったら……だめ連はみんなご存知ですよね。はい。一人も知らない人がいないってのは、とても民度が高いですねえ。あのー、

ワタル いま旬のね。

シンジ いま旬ですよね。でもあれも、ま、いろんなほんとは問題があるところではあるんだけど。だからそのー、ま、その意味でいうと、鶴見くん的な人間ってのはある意味増えてると思うだよね。で、ちょっと話し変わって別の質問なんだけれども、あのー、ほら体がついてるってことをさあ、

ワタル はいはい。

シンジ 再発見しようじゃないかっておっしゃったけど、でも、例えば90年代入るころから、10年前ぐらいから、体に対する関心っていうのは逆の意味で出てきたじゃないですか。

ワタル ニューエイジ的な文脈で。

シンジ まず、まずそれ出てきましたね。まずそれが出てきて。

ワタル ええ、座禅とか。

シンジ 座禅とかリラクゼーションとかね。

ワタル オウム真理教とか。

シンジ あと一方でほら、ストリート系の連中もピアッシングっていう形で、

ワタル あー、はいはいはい。

シンジ 穴あけたり、ペインティングしたりとか。

ワタル ええ。

シンジ あるいは、ま、いろいろ……エステみたいなのもそうですけど。

ワタル はい。

シンジ 美肌、美白とかっていろいろ。あのー、昔の単なる人にね、良く思われたいっていうタイプのいわゆる化粧、化けるんじゃなくて

ワタル はいはい。

シンジ 明らかに、要するに自己改造的なね、あるいはその、セルフコントロール指向のそういう「体いじり」っていうのが増えてるって思うんだけど。そういうのはどう思います?

ワタル いや、自分の体を自分のもんって思うって、それは当然だと思ってるところってすごいいいですよね。

シンジ うん。

ワタル オウムに関して、あれドリルだと思いますけどね。

シンジ うん。

ワタル 体ガチガチじゃないですか。だけど山崎哲さんなんかは当時から主張、あのー、指摘していて。なんで、オウムにハマっちゃう人はハマっちゃうのか? つーのは、この人「ポイントは体だろう」ってずーっと言ってんですよ。

シンジ そうだね。

ワタル だけどその人の主張を誰も理解できなくって。俺も最近やっと理解できたんですけど。

シンジ 受講者たちはみんな理解してるね。その辺は。「オウムは体の問題だ」って。

ワタル ええ。体が気持ちよくなっちゃうことには逆らえないっていうのがあって。今まで頭で感じた快感よりも圧倒的なもんを感じちゃうから、彼らはあそこにハマっちゃてるんじゃないか? 当時から山崎哲さん指摘してましたよね。

シンジ 演劇やってるからね。彼はね。

ワタル そうそうそうそう! だからこそわかったんだと思いますねえ。

シンジ うん。

ワタル ずーっと今でも言ってますよ。

シンジ うん、それは僕もね、空手部にいたんで1回エクササイズ……やった場合のドーパミン効果って

ワタル うーん……。

シンジ いや、でも、ハンドボールやってりゃ同じだよね。

ワタル や、毎日毎日、校庭5周しますから。

シンジ うん。

ワタル あの、ランニングハイみたいなの当然わかってるんですけど、あれドリルですよ。

シンジ うん。

ワタル 間違いなく。苦痛以外の何物でもないですね。

シンジ うん、でもやるよね。

ワタル うーん……。

シンジ ランニングハイに動機づけるよね、人を。十分。

ワタル そうですか?

シンジ うん。

ワタル そうかなあ……。俺気持ち悪かったですけどね。もう4周目ぐらいになってきたら、今まで死にそうな思いしてたのに、まったくなんともなくて。もう、あのー、何にも感じないって感じでしたもん。ランニングハイっつーふうに言えば言えるのかもしれないんすけど。足がもう勝手にね、どんどんどんどん、トコトコトコトコ……だからどんどんどんどんスピードアップできるっていうね。

シンジ だからね、それはその辺に実はその、けっこう危うい境界線ってあるじゃないですか。だからどうしてもね、

ワタル あれはもうさすがに……。

シンジ 反復的なドリルってあるような気がするのね。

ワタル ええ。

シンジ だからそれと、いわゆる「体は自分のものだから自分で好きに使うぜ」っていう境界を……やっぱりどっかにあるよねえ。

ワタル あ、それを、

シンジ どっかにありますよねえ。

ワタル やっぱりキーワードは「自由」じゃないですか。

シンジ うん。

ワタル 自由、自由。結局みんな自由が好きなはずだ……それはもう疑いようのない事実だと思います。

シンジ うん。

ワタル そんなのは、だって人間がね、あの歴史が……有史以来、人間は自由が好きですもんね。自由を求めてきた。

シンジ 例えばエステにハマってる連中の「自由さ」ってどこにあるんだろ?

ワタル えーっと、エアロビクスなんていうのは、

シンジ うん。

ワタル 例えば、みんなでダンスっちゃあ、ダンスなんですけど「ハイ、ワン、ツー、スリー、フォー」っていう、あの先生の踊りに従ってみんな合わせて踊らなくちゃいけない。「止めろ」って言ったら止めなくちゃいけないじゃないですか。あんなところにトランスはない、楽しみは全然なくって。部活でも一緒なんですけど、みんな同じフォームを強制されるんですよね。で、一緒に「ダッシュ」っていったら全員でダッシュ。で、「パスしろ」って言ったら全員で同じようにパスするっていう。そんなところには自由がないのは当たり前で、面白くない。

シンジ なるほど。やっぱり一つはそのモデルが、その、強迫的なその反復練習とかね、

ワタル そっす。

シンジ 反復した存在そのものになるほどモデルがあるかどうか? ってことで自由かどうかって決まる。

ワタル そうですね。もしそういうのが気持ちいいって言っちゃったら、じゃあ、行進だって整列だって気持ちいいじゃねえかって話しになっちゃう。

シンジ うん。

ワタル リズムに合わしてねえ、体を動かしてるんですから。でも行進は気持ちいいって言う人は一人もいないと。だから自由じゃないですか。自由。

シンジ うーん、でもそうすると多くの人間がね、そのー、例えばその鶴見くんが仰ってるような、あるいは多くの人間が今自由に動いているようなね、方向を嫌がる理由もわかりますよね。

ワタル わかります。

シンジ モデルがない状況で、苦しいですよね。

ワタル だけど

シンジ 暴動もできないんじゃないんですか?

ワタル そういう、あのー、なんか「規範がない」とかいって、そういう「その方が不安だろ」「私たちどうしたらいいんだ」とか言う人、「甘ったれんなよ」って言いたいですよね。

シンジ うん。

ワタル それ「自分で考えろ」って言うしかない。嫌だったら自殺すれば。そういう時代になっちゃったんだから。

シンジ うん。

ワタル そういう人に、そういう人っつーのは「本当にそういうふうに思ってんのかな?」とさえ思っちゃいますけどね。

シンジ うん。

ワタル そんなもん規範なんか、縛りつけるものなんかない方がラクに決まってるっつー感じがして。

シンジ でも鶴見くん、じゃあ、もう一つね、ややこしい質問をちょっとしたいんだけど、

ワタル はいはい。

シンジ 例えばそういうふうにモデルがないね、「自由に生きる生き方がいいんだぜ」っていうふうに言うでしょ。

ワタル ええ、ええ。

シンジ そうすると、

ワタル メチャクチャになっちゃう?

シンジ や、いいんです。それはいいんですけど、その先の問題ってあって。「わかった。でも、どうやったらそれはできるんだろう?」っていうことで、やっぱりその鶴見くんをモデルにしようとか、

ワタル ええ、ええ、ええ。

シンジ モデルのない人生がどうやって生きていいかわかんなくて。やっぱりある種アノミーになって。モデルがない人生っていうイメージが、一つのモデルになって。

ワタル うーん。

シンジ それに絶望したりとか。

ワタル だめ連なんか割とそうですね。

シンジ うん。そういうのってどうですか? 僕けっこうそういう情景目撃するんですけどねえ。

ワタル 僕自身だって、

シンジ うん。

ワタル そうだったですもんね。やっぱり。大学の時なんか割と今と同じような生活してるくせに、寝てばっかいるくせに「寝てるのは不毛だ」とか思っちゃってたっていう。

シンジ うん。

ワタル だからある程度、脳ミソにインプットされてるプログラムっつーのがあって、体にも刻み込まれてるんですけど脳ミソにも刻み込まれていて。それらを無視するということじゃないかなーと思いますけどね。で、自分で考え、考えられることつったら、自分はそれらを一旦全部無視してみて、ほんとに自分はどうなりたいのか? と。何が自分を幸福にしてくれるのかをマジメに自分で考えてみると。だいたい……そもそも国のこと、受験が嫌だとか、ドラッグ解禁しろとかそんな文句言ってないで「外国行きゃあいいじゃん」とかね。

シンジ うん。

ワタル なんで安保反対とか、「そんなに安保が嫌だったら外国行きゃあいいじゃん」とかね。そういう発想ってないのかな? とかって。

シンジ うーん。

ワタル そういう行動の自由とか。そういう発想も奪われてたわけですから。うーん……

シンジ でもね、鶴見くん、じゃ、こういう例は? 例えば僕と鶴見くんが「踊れば気持ちいいぜ」って言うでしょ。

ワタル ええ。

シンジ でも、踊っても気持ち良くない。「散歩したら気持ちいいぜ」って例えば僕たちが言ったとして、

ワタル はいはいはい。

シンジ 散歩しても気持ち良くない。

ワタル ああ、宮台さんのとこによく来る質問ね。

シンジ だから……そう。「僕は何をしたら気持ちいいんだろう?」っていうのって来ない? そういうのは。

ワタル 来ます。来ますね。

シンジ それはどういう?

ワタル あのー、いきなり、いきなりそんな「寝ろ」って言われたって困っちゃう、とかね(会場笑)。手紙ですごい来ます。

シンジ うん。

ワタル じゃ、「困ればいいじゃん」って思いますけどね。困れば(笑)。別に、あのー、世の中はヒドイとこですからね。

シンジ うん。

ワタル 誰も助けてくれませんから。いきなり(笑)、いきなり厳しくなっちゃうんですけど(笑)

シンジ いきなり厳しく(笑)。

ワタル いきなり厳しくなるんですけど。

シンジ うん(笑)。

ワタル だって当たり前じゃないですかね。正しいことして頑張ってる人ばっかりがいい目見るわけはないし、

シンジ うん。

ワタル 悪い奴が勝つことだって当たり前のように起こるし。

シンジ うん。

ワタル 世の中はヒドイとこなんだから、何もあんたがマジメに生きてたからっていい目にあうとは限らないよ、って言うだけですよ。

シンジ うん。

ワタル 一生困ってりゃいいじゃん。嫌なら「自殺」って思ったらできますよ。

シンジ そっかあ。でも、その冷たさがあるにも関わらず、でも本を書くじゃないですか。『檻のなかのダンス』とか。

ワタル や、でも、そういう風潮は高まってくれば自分もラクになるじゃないですか。実際に、実際そういう効果が若干あったかもしれないし。

シンジ あ、自分にはね返ってくる。

ワタル そうっすね。ええ。

シンジ ポジティブな

ワタル とくに覚醒剤は

シンジ うん。

ワタル 本当はこんなふうに悪くないんだ、って書いて広めれば……

シンジ うん。

ワタル そんなことするより外国行っちゃった方がラクだっていうふうに思ったんですけども、実際に覚醒剤やりやすくなるとかですね、そういう効果を狙った部分って多いですよね。やっぱり自分の幸せのみ追求って感じですね。今でもね。

シンジ なるほど。

ワタル 宮台さんと若干ちがうと。

シンジ あのー、今日15分遅れだったんですけど、15分遅れ……15分延ばしてやりますけれども。あのー、質疑をとりましょうか。せっかく来てらっしゃるので。はい。何か鶴見さん、主に鶴見さんに。私に対しては、

ワタル こんなもんでいいんですか? 宮台さん。

シンジ はいはい。や、もう、いやいや質疑応答まだありますんで。この講義ってまだ終わってないんで。これからです。

ワタル あ、そっすか。

シンジ はい。

ワタル 時間なんかいくらでも延ばしてもらって構わないですよ。

シンジ はい。今日は、あのね、

ワタル 文句言われるようなら延ばしてもらって。

シンジ 僕が今までやったのと違うのはね、

ワタル みんなが帰る、最後、最後一人、一人残って最後の人が帰るまで話すつもり。

シンジ 女の人がすごく多いけど。

ワタル 宮台さん帰ってもいいですよ。俺は続けます。だって家帰ってもヒマなんですもん(会場爆笑)。喋りますよ。早く帰ってどーする? ちゅーねん。ねえ。こんなみなさんの前で話せる機会があるというのに。

シンジ ということだそうなので。みなさんエンドレスでできますよ。僕はしませんけど(会場笑)。

ワタル (笑)僕はでも時間気にしてないんで。どんどん質問してくださーい。


9.質疑応答

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