すばらしいワタル紀行 1999年4月2日(金)

現代的犯罪とその背景


4.ドリル(学校編)

シンジ まあ、通じないよねえ。だから例えば『朝日新聞』とかがね、他のマスコミもそうだけど、学級崩壊を特集するときに、

ワタル はい。

シンジ 必ず「親のしつけがいけない」って話に落とし込むよね。

ワタル ああ。

シンジ 100%そうだよね。

ワタル ええ。

シンジ でー、だから他のこと言ってる、例えばぼくのような人間のことを気にしてて「学校教育のことを持ち出す人間もいるが、やはり問題は親のしつけである」(笑)。どのメディアを見てもそう書いてあるわけですよ。で、ぼくは思うんだけど、親のしつけもね、確かに問題なわけです。でー、ま、それは議論を待たないわけで。ま、それを例えば簡単に言えばね、電車の中とかパブリックな空間での振る舞いの作法を教えないとか、

ワタル ああ、座るとかね。

シンジ ええ。

ワタル 若者が道で座ってるとか寝てるとか。

シンジ そうですね。

ワタル それこそすぐ怒られる。

シンジ そうだね。まあだから、それで言えば昔から別にそんな親はビシッとしてたわけじゃないから、やっぱり学校教育の力が大きいわけですよ。で、昔は……昔は調べればわかるんだけど、家でビシッとしつけて、だから学校でちゃんとしてたんじゃなくて家に帰れば飲んだくれだったり、とんでもない生活破綻者がいっぱいいるのがむしろ当たり前で。学校でビシッとして家に帰ると「家はこれだからよう」みたいな感じだった。むしろ学校のほうがちゃんとしてたんですけど。昔は。

ワタル 学校はすごかったですからね。だって軍隊教育してましたもんね。

シンジ そうですよね。

ワタル あのー、何でいまだに行進してるかみなさんご存知ですかね? あのー、1回、当然GHQは戦後、日本の全面的な……農業であるとか産業であるとか教育システムなんかも全部いったん解放、あのー、全部アメリカ流にしようとしたんですけども、その後レッドパージ

シンジ (携帯が鳴る)!! すいません。

ワタル (笑)女子高生からでしょ。

シンジ (笑)はい、すいません、はい。

ワタル レッドパージっつーのが起きるんすよ。朝鮮戦争が起きて、ずーっと日本からも出兵なんかして。なんか気運的に「共産主義ダメ」って気運が1950年代ぐらいに生じるんですよ。そうすると戦犯として、A級戦犯なんかとして文部省なんかの、元文部省ね、あの戦前の文部省の人間なんかがドンドン全部戻ってくるんですよ。あのー、実際に国会の中とかに。で、自由を標榜してた、GHQとかの言う通りに自由を標榜、自由競争を標榜してた人たちは全員解雇されてしまうというのがレッドパージなんですけれども。歴史の教科書ではここまで教えないんですが。えーとですね、そっから教育、あのー、未だ、未だにある整列であるとか行進であるとか、そういうもんが続々と復活してしまって今に至っているというですね。こういうことみんな教わってんですか? 大事ですよ。で、あのー、「休め!」。オレが一番好きなの「休め!」。みなさん、休め! 休め!!(笑)

シンジ (笑)

ワタル 整列して、休ん、寝たらどうする? 「休め、バカヤロー! 休め!!」っていうんで「休んでんですけど」(笑)。

シンジ (笑)

ワタル 布団敷いて寝たらどうなるのかという。あれも実は軍事教育の、軍事教練の一つなんですねー。未だにやってるんすよ。おかしいと思いませんか?

シンジ うん。

ワタル というのが破綻しかけてるのが学級崩壊じゃねえかな? っていうふうに露骨に思いますけどね。いい加減気づくでしょ。

シンジ でも気がつかない、なかなかねえ。あのー、おとといかな? 「ニュース23」に河上亮一が出て……昨日か、出てきて。あのー、河上亮一って知ってますよね? プロ教師の会でビシッとさせる教育の専門家(会場笑)。

ワタル あのー、激、激ビシッ、激ビシの人たち。

シンジ でー、もうみなさんご存知のようにね、彼らが80年代後半、今から10数年前に出てきた時には、校内暴力が多くってね。84、5、6ぐらいになって

ワタル ええ、ええ。

シンジ で、86年ぐらいからいじめの増加っていうふうに。その背景には例えば管理教育化があって。で、管理教育批判ってのもあったんです

ワタル ええ、ええ。

シンジ けども。

ワタル あの人たちはわかって管理教育をあえてやるという立場ですね。

シンジ 実はそうなんだよね。だから一回管理教育に対する反省があってね、それに対する自由化が行われてすらこの体たらくなんです。

ワタル ええ、ええ。

シンジ つまり基本的な、社会的な作法を身に付けないガキどもが増えてきて、力関係でも教員がますます弱者になる。で、教員を支援してくれたはずの地域社会も今はその、だらしない子どもたちの味方である。そうすると学校がビシッとするしかない。

ワタル 何言われても、「じゃあ、お前がやってみろ」って言われたら

シンジ うん。

ワタル 返す言葉もないですよね。

シンジ うん。だからまあ、教室を団結しようとすれば管理教育でやるしかない、っていうのが彼らの言い分だったんだけど、ご存知のように河上亮一さん、だんだんだんだん90年代入ってしばらくすると立場が後退してきて。一つにはやっぱり、やっぱり管理教育をしても仕方ない……彼は非常に優秀な教員、教員ですけれども、授業も面白いし。ま、話しててわかるんだけどね。でも、それでも授業で落ち着かない。だから管理教育でも、管理ができなくなった。でー、でも彼がさらにね、言ってるのは、もちろん親や地域の問題も言ってるんだけども彼は比較的現実主義者で。だったらね、「親や地域ちゃんとしろ」って言って、ちゃんとした学校がちゃんとするのか? そしたらちゃんとしない。だから「たぶん、これが永久に続くんでしょうね」って話しを、終わるんですよね。

ワタル バカじゃない人ですよね。

シンジ バカじゃないです。でも、やっぱ彼が昔とった杵柄つーか、いろんな人間関係やしがらみがあって、「クラスやめちゃえ」ってぼくみたいなことは言えない。

ワタル オレなんか、学校行かなくていいんじゃねえか? と思いますけどね。

シンジ うん。

ワタル 法律を破れ!

シンジ うん。というかもう……

ワタル だって朝寒いじゃん。ねえ(会場笑)。学校で教わってることは、ちなみに僕は東大合格するまで学校で教わったこと全部アタマにつめ込みましたけど、一切使い物にならないことを保証しますね(笑)。

シンジ そのことを学んで今こういうことをやっているという意味でね、あのー、例えばさあ、辻元清美とかさあ、なんとかとか、そういう教育関係に対して色々意見言うやつって愛知県出身者すごい多いんですよ(会場笑)。でー、愛知県って日本最大の管理教育県でほんとにとんでもない事が色々あるんですね。で、それはまあ、江川達也さんっていう『東京大学物語』描いた

ワタル マンガ家の方ですね。

シンジ マンガ家の人も……まあ、最近はねえ、キャバクラとかにはまってますけれども(会場笑)。あのー、一時テレクラにはまったんです(笑)。ぼくの影響でね。でー、ま、それはどうでもいいんですけど、あのー、

ワタル 変な影響与えないで。

シンジ 彼もやっぱり数学の先生でしたよね。愛知教育大学出て、で、数学の先生なろうと思ったんだけど、やっぱり途中で嫌になって。本宮プロに入るんですね。

ワタル 『Be free!』っていうのがデビュー作ですね。

シンジ そうですね。

ワタル 教師の……

シンジ 天才的マンガ家である事がよくわかるんです。本宮ひろしタッチになったかと思えばね、いろんな人間のタッチを真似しまくって。

ワタル そういや『まじかる☆タルるートくん』

シンジ そう。

ワタル 爆発的に。余談ですが(笑)。

シンジ いいんですけどね。だからまあ、愛……僕が言いたかったのはね、結局最も激烈な部分でね、つまり猛烈な体験がおこって、で、それに反対する人間も出てくるが、ぼくの周りでやっぱり教育関係でリベラルな振る舞いをする人間はね、やっぱり愛知県のやつ多いっていうことからも示される。するとやっぱり鶴見氏もね(笑)、

ワタル や、

シンジ 『檻のなかのダンス』とか見ると、やはり過剰適応気味ですよね。学校で。

ワタル メチャクチャそうっすよ。

シンジ うん。

ワタル ほんとに。それがなかったら普通に苦しんでた人間だったと思いますね。

シンジ うん。

ワタル アタマ狂うまでいかなかったと思いますね。

シンジ うん。

ワタル マジメな……これ、このシステムがまた、ドリルシステムの一部だと思うんですけど、この受験とかも。マジメなやつほど乗りやすいというですね、このシステムにはまっていくという。一番卑劣な……あれなシステムなんですよね。

シンジ うん。

ワタル マジメなやつほど損する。

シンジ あのー、鶴見氏の場合はね、ちなみになんでそんなにドリルシステムにはまったというか、学校に適応しようっていう力が強かったんですか?

ワタル えーっとですね、うーん……まあ、褒美を与えられたことが第一ですね。

シンジ うーん。

ワタル あのー、成績優秀者って発表されると優越感を感じてしまうと。

シンジ うーん。

ワタル もっともっと、10位よりも3位の方が優越感が高いんじゃないかと思ってますます勉強しちゃうとかですね。

シンジ うん。

ワタル それとかクラブ活動っていうの、これクラブ活動と受験勉強っていうのが2大ハードルだったんです。一番ハードなやつだったんですけど。

シンジ そうですね。

ワタル なんか知らないっすけど、運動部に入んないと人間的に格が下っていう雰囲気ありません? ありますよねえ?

シンジ 今はないかも。そういうのはね。

ワタル 今は、今はだんだん緩くなってると思いますけど、当時としては甲子園全盛だったりとかして。運動部に入ってない人間、とくに帰宅部なんつったらもうイジメの、もう帰宅部って言っただけでイジメですからね(会場笑)。今だってそうだと思いますよ。きっと。なんか知らないんすけど、そういうふうにもってく、もってく雰囲気があるっていうですね。で、下手に耐性が強いばっかりに「まあ、いいや」って投げ出さないで熱心にやっちゃったっすよ。

シンジ うん。

ワタル そしたら頭ぶっ壊れたっすね。

シンジ うん。あ、あの……

ワタル そういう神経質が多いんじゃねえかと思いますけどね。

シンジ 鶴見氏は高校どこでしたっけ? 場所は。

ワタル 立川高校。

シンジ 立川……。あのー、

ワタル 市立二中。

シンジ そっか……。鶴見さんって僕よりも5年ぐらい下ですよねえ。

ワタル 宮台さん麻布ですよね。

シンジ ややや(笑)、でも立川っていうと比較的都立の中でも割とリベラルな方ですよね。

ワタル あ、そうです。

シンジ うん。

ワタル オレは麻布なんて……中学からですか? 宮台さん。

シンジ そうです。

ワタル どういう教育になってるのか? だって、最初っからもう中学とか高校に入った時点から3年分の教科書渡すとかっていう話じゃないですか。

シンジ あの、中学3年までで全部高校3年までやっちゃうんですよ。

ワタル そうなんですよねえ。全部大学受験まで、のためにバーッて突っ走ってるカリキュラムが組まれてるんでしょ。灘中とか灘高とか。

シンジ そうですね。でもね、あそこがいいのは……雑談ですけどね、結局高校に入ってからは大学みたくなっちゃうんですよ。あの、先生が勝手に自分の好きな教科書使ってね、大学の教科書使って授業やるわけですよ。で、授業も出なくてもいいわけ。受験にも関係ないわけです。

ワタル うーん。

シンジ 受験教育も全然やらないで、大学の教科書とか使ってやってるから

ワタル あー、

シンジ 聴いても聴かなくてもいいんですね。だから出ないやつは

ワタル あ、じゃ宮台さんは塾に通ってましたか?

シンジ 全然行ってなかった。

ワタル あれ、そうっすか。

シンジ ええ。

ワタル じゃ、えー

シンジ 高校3年生のときに、その地元の塾に女の子ナンパしに(笑)行ってたんですけど。女と付き合えるんで。

ワタル え!? 予備校通いませんでした? 全国統一模試とかそういうの受けませんでした?

シンジ 受けてない。

ワタル えーっ! ちょっと異常ですねえ(会場笑)。じゃ、もしかしたら麻布高校の教育だけで賄えるってことなのかもしれないですけど。

シンジ や、僕は一浪してるもん。だからあのー、

ワタル じゃ、一浪したら宅浪ですか?

シンジ うーん、まあ、だからそれは……いや、あのー

ワタル 他の教育機関には頼らなかった?

シンジ やっぱり一浪は宅浪じゃないよ。だから駿台高等予備校、駿台予備学校です。

ワタル あ、オレと同じですね。

シンジ うん。で、やりましたけど。

ワタル オレも駿台行きました。

シンジ うん。

ワタル だけど塾産業があるっつーの、実は日本だけなんですよね。

シンジ うん。

ワタル そんなこともみなさん知られていない、教えられていない。

シンジ うーん、でもそれは、あのー……やっぱり日本の場合ねえ、例えば学校以外に、例えば地域の活動があるわけでもサッカークラブがあるわけでもねえ、ボーイスカウト、ガールスカウトがあるわけでも教会があるわけでもないから。やっぱりある種の多元的所属をしようとすると、今の小学生でもそうだけど学校行って、塾行って、

ワタル や、多元的所属番号じゃないと思いますねえ。学級崩壊なんかもすごいわかる気がするのは、だって学校で教えてることっていうのは、

シンジ うん。

ワタル 僕なんかの時代ですらそうでしたけども、

シンジ うん。

ワタル 受験とまったく……ま、受験と関係ないっていうか何の役にも立たないじゃないですか。僕たちの役に立つと思ってるのは、要するに受験の役に立つってことですから。そしたら教師が言ってることなんて聴いたってしょうがないわけですよねえ。せいぜい内申書をよくするとかその程度のことでしかないんで。学校なんてなめきれに決まってますから。なめきってますから。

シンジ うん。

ワタル 中学校、中学時代から遅刻してましたからね。オレね。

シンジ うん。

ワタル ああいう学級崩壊的なことって、当然上の方でも相当起きてるんじゃないんですか。

シンジ うん。

ワタル 意外と。

シンジ そうか。じゃ、鶴見くんは学校なめきってたけども、でもビシッと適応しようと思った。

ワタル あ、そうですねえ。

シンジ うん。

ワタル や、社会の風潮が割と「学校いいから、いい大学に入れ」と。

シンジ うん。

ワタル で、「いい会社に入れ」と。

シンジ うん。

ワタル で、何で東京海上火災が一番人気なのかわかんない。みんな(笑)、今でもそうですか?

シンジ 今でも、東京海上は損害保険会社だから難しいけど

ワタル 何でみんな、保険会社に入ろうとして生まれてきたわけないだろ! って思っちゃいますけどね(会場笑)。一番人気会社がずーっと海上火災、東京海上なんですよ。

シンジ うん。

ワタル 東京海上に入ることが、例えば大学では東大合格に近かったっすよね。なんで? なんじゃいそれ? って思いますけどね(笑)。

シンジ うん。

ワタル みんな保険屋になりたかったのかって。日本人は保険人、保険屋願望が強いんだ(会場笑)

シンジ (笑)

ワタル そういう全部ランクづけじゃないけど、

シンジ うん。

ワタル それにはまったんですよ。


5.自己決定論と社会学

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