Japanese situation becomes more and more serious...

鶴見済の逆襲


 自著発売自粛問題(とプライマル・スクリーム)について鶴見済氏が語ってくれた先号の対談記事には大きな反響があった。
 その対談の大きなテーマのひとつは、結局ぼくらが暮らすこの日本という国の状況にほかならなかった。それにつづく、今回の鶴見済×伊藤英嗣対談は、ある意味でその延長にあるものだ。つまり日本のどこがおかしいのか? それを如実に現したのが昨年の東海村の事故、そしてそこにつながる日本の原子力政策なのではないか、と。この日本の孤立ぶりは、例えば欧米のライヴやイベントに行って、現地のファンやミュージシャンとしゃべりたいなあ、って時にも、なんとなく知っていた方がいいのではないか、と思う。
 世界のスタンダードが通用しない。日本国内だけを見てると頭がおかしくなりそう、という意味で、これは日本と世界の音楽状況の違い(洋楽と邦楽を取り巻く一般的レベルでの状況の違い)にも当てはまるような気がする。最後の結論なんか、まさにそんな感じじゃない?

 

:何か変だなと思うのは、東海村のことって去年最大の事件だったと思うのに、回想したり振り返って話したりもしない。もう安全とかって思ってるわけでもなく…

:「あのバケツの」というキーワードに封じ込めて、ワイドショー・ネタのひとつみたいに風化しそうになってますよね。

:新聞とか雑誌とかの、去年の10大ニュースとかでも、結構扱い小さいんですよ。チェルノブイリでもあれだけ騒いだのに…。

:例えばチャイナ・シンドローム…。スリーマイル島でしたっけ? そのあと、アメリカのミュージシャンがノー・ニュークス(・コンサート)とかやったやつ。そのスリーマイル島とかチェルノブイリは未だになんとなくでかい事として残ってるけど、東海村の事故って…。日本の中で起こった事を考えれば、スリーマイル島、チェルノブイリ、東海村ぐらいに並んでも日本人としておかしくないと思うんですよね。

:実際にレベル4ですから。レベル7がチェルノブイリで、レベル5がスリーマイルで、レベル4が東海村ですから。

:マジで3つ並んでもおかしくない。

:レベル4っていうのは日本が自己申告した数字ですしね。

:そんなの低いに決まってんじゃん(笑)。

:低い価を言うのがこいつらですから。調査で変わる可能性がある、当然上になる。専門家の中にはスリーマイルより酷いかもしれないって言ってた人もいます。伊藤さん、その日東京から逃げましたか?

:いや(笑)、先号の対談のときに鶴見さんが大阪に逃げたって聞いて、そのときは多少大袈裟かなと俺は思っちゃったぐらいで…

:俺は恐いと思いましたね、はっきり言って。臨界状態になった、国内最悪である、我々はどうしていいかわからない、って夜中にそういう報道があった時。

:俺それは全然聞いてないんですよ。

:寝てました?

:うーん、テレビとか?

:ええ。で、なんか松平さんとかが「どうしたらいいんですか!」とかって。

:え、そんな風に言ってたの?

:もう完全にろうばいしてたみたい。

:深夜?

:そう深夜。台風の特別情報みたいな感じでずっとやってたんですよ。それまでは小規模の放射能漏れ事故らしいみたいなこと言ってたんですけど、夜中に、いきなり臨海!ってきたんですよ。人から電話もらって、夜中の2時とかに。いきなり「今、何が起きてるの!?」って言われて。「落ち着いて説明してくれ」って言ったんだけど。俺テレビとかないんで。そしたらそう言うんですよ。それで別の知り合いとかに電話しても、インターネット、チェックしても、どの程度の事が起きてるのか皆誰もわからない。で、逃げるかどうかみたいな話しをしてたんですよ。戦々恐々と。伊藤さんがぐうぐう寝てる間に(笑)。

:いや、自宅(愛知)じゃなくって東京にいたとしたら、多分ヘッドホンかけて原稿書いてたんじゃないかなあ…。事務所のテレビ、2年くらい壊れたままで全然見てないし。

:最初は確か、まず夜中に興奮した奴らを落ち着かせるために、まぁ、臨海とは言っても、ああいったスリーマイルとかチェルノブイリみたいな大型発電所とは規模が違いますから、って発表して。それで皆安心したと思うんですけど、じゃあレベル4って言うなよ!って。レベル4だって言い続けてるって事は…

:発電所の事故だろうが再処理だろうが、別に放射性物質が臨界に達する事に変わりはない。

:そう。臨界に達するんだったらそれなりの量があるはずですから。第一報は爆発とか火災って言ってたし…。これがね、良い資料でドイツの新聞。「事故から10キロの範囲では世界中の原子力を危惧する人たちの恐れたホラー・シナリオが展開した。30万人以上が屋内待機を命じられた」。ホラー・シナリオだって。当然ですよね。30万人以上がそこから離れることができなかったわけだから。

:要するに本当は離れなきゃいけないのに、何でそこで自宅待機を命じるのか、人々はそれにおとなしく従ったのか、みたいな。

:そん時は本当は逃げるしかなくて、そんな所にいさせちゃいけないわけなんですよ。

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:一応基礎知識として言っておくと、放射性物質というのは、すべての物質の元になる原子核が自己崩壊を起こしてて、原子を構成している粒子が飛び出てる。それが放射線。その粒子、放射線が当たった別の原子も放射性物質になっちゃったり、人体とかに悪影響を与えたりするわけですよね。その粒子は、ものによっては屋内だろうが屋外だろうが、普通の壁とかどんどん通過して飛んできちゃう。

:それから、俺は昔から広瀬隆さんの本とかを読んでたんで、あん時の原発ブームにはまったクチなんで、ある程度知識があったんですよ。まず、交通を押さえるはずだと思って。急いで調べてみたら、最初、9月30日の日中、小規模の事故だとなだらかに報道してた頃から常盤線がずーっと止まってるんですよ。人身事故人身事故人身事故って。

:マジ?

:その頃は、まだ戒厳令とか出してないんですけど、もう電車止まってるんですよ。とっくに手打ってんじゃん、とか思って。これはもう広瀬隆が、政府はまずそうするだろう、って言った第一段階。

:なるほどねー。

:そこに居ろ、って言う事は、壁なんか通り抜けるわけですから。お前ら放射能浴びてもいいから秩序を守れ、って。酷いんですよ。

:俺、広瀬隆にははまらなかったけど、昔から破滅もののSFが好きで。マンガでも小説でも。なんか、ほとんどそんな世界ですね。

:いや、もうSFそのまま、へたしたら越えちゃってるんじゃないですか。今でも全然解決してないですから。

:ポリティカル・フィクションと破滅SFの最悪のケースが合体したもの以上、かも。政府の姿勢の気味悪さも含めて。

:最初10キロ圏内の野菜は収穫禁止って言ったのに、ヨモギとかからヨウ素とかストロンチウムとかの放射性物質がガンガン発見されてるのに、いきなり安全宣言の後は収穫出荷OK。これは俺はとてもじゃないけど信じません。

:安全宣言、って何なんでしょうね。放射性物質とかって、雨で流れ落ちてあとはきれいに、みたいな単なる汚れじゃないんだから。

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:俺、もう本当に日本て嫌だなと思うのが、当たり前じゃんていう事が、一生懸命説明しなきゃ、当たり前だと思ってもらえない。本当疲れますね。

:当たり前だと思ってくれれば、まだいいでしょう。何言ってんのこいつ、って人もいるんじゃないですか。説明も聞いてくれなくて。

:最終的に本当に当たり前である事さえもわかってもらえない。

:そっちの方がむしろ多数派みたいな。

:大阪逃げてた時に、俺とにかく海外の情報聞こうと思ってたんですよ。BBCとかアメリカのヘラルド・トリビューンとかがやってるラジオ番組とか。なんかイギリス2チャンネルくらいあって、アメリカとフランス、ドイツってあったんですけど、全部日本バッシングでしたよ。

:いかに日本の報道と向こうの報道が違うかって事ですね。

:日本が北朝鮮みたいな感じがしました。

:あぁ、わかる。日本人が北朝鮮に対して言うみたいに、日本人に対してそういう報道がなされてるって事だよね。謎の国みたいな。そうなっちゃうのも当然だと思いますけど。

:それで日本ではもうトップ・ニュースでなくなってるのに、向こうはこの後も何日かトップニュースでしたね。「7時のニュースです」って言って、最初に、「Japanese nuclear accidennt became more and more serious」とか言って。全然日本と違うんですよ。うーん、とか思ってね。国内の情報は全部同じ。朝日、毎日、読売をずっと見ててびっくりしたのは、みんな同じ写真と同じ見出し使ったりしてるんですよね。

:写真だけじゃなくて見出しも?

:そうそうそう。有害指定で騒いでた俺のところにイギリスのガーディアン(編注:これが国内で最も信用できる新聞というイギリス人も多い)の特派員でワッツっていうやつが取材に来てくれて、それ以来ちょっと話すんですけど。彼が東海村の取材してたんで、「東京は大丈夫と思うか?」って聞いてみたら、「東京どころじゃない、日本どころじゃない、世界もやっぱり危ない」と。「世界が危ないと思うよ」って言ってた。ドイツの環境省みたいなのがあって、環境大臣。早ければ10日で放射能汚染された雲がドイツにやってくる、とか言ったりね。向こうはピリピリしていたと。そういうのを聞いて、大阪の街中に出ると、大阪なんか東京よりももっとのんびり流れてるんですよ。確かに離れてるんでそれだけ実際に安全ではあるんですけれども。シュールでしたね。

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:日本のやってる、使った核燃料をもう一回リサイクルしよう、という変なリサイクルが(笑)。あそこから放射線が全部漏れまくりなんですよ。

:日本がやろうとしてる再処理システムっていうのはイギリスとかフランスがやらなくなっちゃったシステムなんでしたっけ?

:いきなりやめちゃったんですよね。最初一個で実験してみていきなり失敗で、全然駄目だとわかって。それでも日本はやるっていう。新たに20基原発増設!って、向こうの人が聞いたら本当にカミカゼとか玉砕とか思い出しかねないですよ、ここまでいったら。

:そうですよね。ここまで大人しくしてるって事は玉砕してもいいのか? みたいな。

:全く。マスコミは政府の言ってる事を何の批判もなく伝える。だからたまたま今戦争してないだけで、戦争してたら「我が軍連戦連勝」って書いてますよね、きっと。それをみんなが黙認する。あと、核の再処理ということでいえば、出来上がった核燃料が、あれ実はイギリスから来たんですよね、船で。ちょうど良いタイミングで上陸したじゃないですか。イギリス人それに震え上がったみたいですよ。そのワッツから聞いたのかな。

:ガーディアンの人から。

:そうそう。せっかくイギリスでは核燃料再処理などというものはやめて、欧米が一致して原発廃止にむけて努力してるのに、あの子供が火遊びしてるみたいな国に、核弾頭何十本分もドーンと送られていくのかい? 更にはその国の再処理をイギリスが国内で手伝ってやってるとはどういうことだ、みたいな。

:面白いのはわりと最近かな、ちょっと前かな? 朝日新聞の一番下の記事の、一段の3分の1くらいの小さな記事で、そういうことに関してイギリス人がわけわかんない事言ってる。それで、イギリスの外相とかが日本に対して否定的な見解をとって、けしからん、みたいな口調で新聞に書いてあった。全く逆。

:「鬼畜米英」みたいだな(笑)。

:そう、毛唐がわけわかんない事言ってやがるから、日本人の外相がんばれみたいな(笑)? そこまで言ってないけど、もちろん淡々と事実を述べてるんだけど、ノリとしてはそういう論調で。

:どうしてイギリス人は怒ってるの? と。

:そうそう。なんで怒ってるの? みたいな。

:ドイツなんかスッゲーすよ。せっかく緑の党が政権取って、やっと全廃の方針が出来たっていうのに、日本が自分の国だけでは廃棄物のリサイクルできないから、イギリス、フランス、ドイツあたりに金払ってやらせるんで。せっかく全廃してるのにまた核の放射能が来るじゃねえか、って事でムチャクチャ怒ってるんですよね。『TIME』でも去年のワースト事件だし。

:なるほどねー。

:要するに彼等の努力が意味のない事になってしまう。日本人がやった事で。「日本の市民は何をしているんだ」という押し殺したような叫び声が聞こえた、と。


つづき

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