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山形県の倫理委員長が、11月後半に発売されたアンアン他4誌を有害図書指定

:あのー、プライマルがそうやってエヴリシング・オッケーみたいな感じだったり、カムトゥギャザーだった時期、鶴見さんもやっぱりそういうエヴリシング・オッケーっていうか、世の中まあいい、これはこれで悪くないんじゃない、っていう前提があって。まあそれは俺にもあった。で、『自殺マニュアル』っていう本は、そういう…宮台さんの言葉かどうかは忘れたけど「終わりなき日常を僕らは生きる」っていうんじゃなくて、一応なんかその終わりなき日常っていうのの中で一つの脱出口っていうか。もう、終わりなき日常って見えるものも、まあ、それは楽しいんだけどそうじゃないところもあるよ、って言ってるような気も少しはしたんですよ。

:死んでもいいっつってますから。でもそれは、別に死ぬのを推奨してるわけじゃないですからね。それが、自殺はなんで悪いのかとか、後押しする危険性はないのかとか、そっから始まっちゃってね。死にたくなること自体が生きもの的に大変な不幸なんですけど。

:もうひとつの本の感想言うと、かなり笑えましたね。マニュアル書のパロディみたいな感じじゃないですか、書き方として。

:ええ、そうなんです。デート・マニュアルとか、そういうものがよくあったじゃないですか。それなら、自殺があってもいいんじゃないかと。それは勿論自分もそういうのほしかったし、あっってもいいんじゃないかという、それぐらいの…。

:「注意が必要」とかさ(笑)。

:「要チェック!」とかね。あれ実はバカ受けする人達がスゲェ多いんだけどね。

:最高。

:自分で今読んでもすっごい笑うんですよ。

:いや、本当に今読んでも笑えたから。

:なんかそういう部分って大事だなと。

:だから、そういうセンスから言っても、鶴見さんとしては「終わりなき日常」的な装置は使ってるわけじゃないですか。あー、なんつーかな。前提として「終わりなき日常」というものはあって、ただそれを生きるべきだとは思わない、なんかあがいてる、みたいな…。例えば、やっぱり昔の左翼の人とかって世の中が簡単に崩れるみたいなのを前提としてる部分あるじゃないですか。

:世界同時革命(笑)。

:そうそうそう。革命を起こせとかね。

:プロレタリアがいなくて困ってやんの。政治的な主張そのものが、笑っちゃうものではなかったんですよね。

:当然シリアスで…、まず思想、理念ありきってかんじだったのかな。

:俺なんか自分の本が事実上そういうふうな事に…、発禁だって俺は思ってますけども、なってくうちに、自分がこれやってるのに気付いたって感じなんですけどね。

:うん。逆に言っちゃえば、鶴見さんがクスリに関して日本が“Just say Know”じゃなくて未だに“Just say No”であるところが問題だって言ってることが、変な話、よりリアリティを帯びてきてますよね、今の状況だと。

:ドラッグに関しても、やらせてもらえないのと、自分の意思でやらないっていうのは全然違うことですから。自由を奪われてるよ、って事を言いたいのかな、多分。そこが大事だと思ってますから、俺は。

:そうですね、確かにそうだと思います。

:そうか、選択といえば、この話はしてなかった。(新聞の記事のコピーを取り出して)山形県の倫理委員会が、11月後半に発売されたアンアン他4誌を有害図書に指定、みたいな。これは結構知らない人多いんじゃないですか。

:これ大きいですよ、絶対。

:山形県の倫理委員会、おこがましいにもほどがありますよね。

:何つーか、スゲェ図に乗ってますよね。

:お前らがそんな事言う権限は明らかにない。

:かなりヤバいよねー。

:アンアンって本当に革新的でもあり、なおかつ大衆的でもあるという。売れてますから。宝島みたいなああいう革新さではないにしても、女性誌で間違いなくトップですよね。戦後、女性の意識をリードしてきた雑誌、出版関係者なら誰もがリスペクトせざるをえない雑誌なんですよ。アンアン伝説とか色々あるんですけど。セックスできれいになる特集なんて、誰も発想すらしなかったのをやっちゃうっていう。

:最初の頃、アンノン族みたいな言葉が出来てたじゃないですか。

:そっからしてもう影響絶大ですもん。

:で、それから比較的アートっぽいノリでファッショナブルになったり、セックスできれいになる特集とか、その都度何か…

:好きな男嫌いな男とかね。

:そうそう!

:勇気があるし、それがいちいち当たってるんですよね。でもそんなことすら山形県の倫理委員会は知らないようで、単にコンビニにある雑誌とか思ってるんじゃないんですか。それが、たまたまセックス特集やったのを見て。

:俺的に言えば、例えば鶴見さんの『自殺マニュアル』が規制されたと言っても、例えば読む側としては身近じゃない人もいると思うんですよ。『自殺マニュアル』を禁止されたとか言っても、ちょっと自分は関係ない事かな、って思ってる人いるかもしれないけど…

:特別な例、特別なケースだろうって…

:そうそうそう。アンアン禁止されたら結構ヤバいんじゃない? みたいに思うんじゃないかな、なんか…

:俺の周りの反応では、山形県で指定したなんて笑っちゃうよね、みたいのが多いですよ。他人事。やっぱり、まだここまできても他人事なのかって。

:うーん…

:会社もコメントとか見ると、びっくりしている、こんな事は初めてだ、と。ふざけるな!くらい言えよ、って。自分達のところの雑誌が18禁にされてるわけですから。条例っていうのは県の法律ですから。

:なんか俺、ちょうどクリミナル・ジャスティス・ビルの頃に、もしかしたらちょっと前かもしれないけど、それこそ出版禁止の問題でいうと、有害マンガとか一時ちょっと話題になってたじゃないですか。

:あれが実は有害図書の歴史を変えたんですよ。あそこから警察が入ってきたんですよ。

:ですよねー。

:それ以降、なんでも自由自在に有害指定して、発禁にできる。

:あの時になんか、竹熊さんの…敢えて相原コージじゃなくって竹熊健太郎さんの、と言いますけど『サルマン(サルでも描けるマンガ教室)』で、それをコケにしてたじゃないですか。それこそ、プライマルとかがクリミナル・ジャスティスに抗議するために「レペティティヴ・ビート」ってEP出したみたいに。大体仰々しく法文化されてる反復ビートって、一体何なんだ、みたいな。

:反復ビートでぇーす(笑)っていう。

:でもあの時は『サルマン』見て、日本もこんなこと言ってる人がいるんだなー、こういう部分はあんまり(イギリスと)変わらないんだなー、と思って。でも、4、5年経って…、もう全然変わってますね。

:そうですね。実際にこういうのっていうのは、波及効果を期待して第一歩をやるんで、この事自体はいいんですよ。この後が問題。前例があるってことで、もうゴー・サインって事になっちゃう。それ、しきりに言ってるんですけど、なんかみんなリアリティがないっていうか。

:そこがまた歯がゆい…

:この記事によると、下着姿の男女が写っており、それが著しく性衝動を誘発する…らしいですよ(笑)。

:あー、そうですかー、みたいな(笑)。

:「他4誌」には、ホットドッグ・プレスも入ってるんですけど、ホットドッグ・プレスには何が写ってたんですかね。

:あまりに速いよ…。前号の青木君た手塚さんとの対談で僕は、自分が見たいものとかが規制されることは今のところないような気はするけど、なったら恐いよね、って言ってたんだけど、なんか、なんか、もうこれなってんじゃん!

:忌野清志郎は昔から“言論の自由”とか、そういう曲歌ってましたよね。

:初期のRCサクセションの頃から、なんだっけ、“♪本当のことなんか、言えな〜い”とか…。だから…、清志郎さんが言ってもあんまりリアリティがない気がするんですよ。

:昔から言ってるね。

:昔から言ってるプラス、僕らぐらいだとギリギリRCとか聴いてるけど、多分若い子ってその頃のこととか全然知らないと思うし。

:伊藤さんおいくつなんですか?

:僕、今36です。

:俺、35です。

:ほぼ同世代。

:そうですね。

:僕らにしても、清志郎さんだけをクローズアップしたところで、古い人が何か言ってる、みたいな気持ちもわからなくはない。清志郎さんには悪いかもしれないけど…。自分としては、ちょっとなっちゃうような…。そういう意味でボビーが…

:レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとか?

:レイジは俺あんまりわかんないとこあるんですけどねー。

:俺も…、フリー・チベットどころじゃなくて。

:そうそうそうそう(笑)。

:自分の人権を守るのに忙しくて、そんな、自分に無関係なやつの人権考えてる余裕ないからね。バンド名が「キカイに対する激怒」ですしね。

:俺、忙しい時にマックとかが壊れると、そう叫んで気を気を紛らわせるの(笑)。だけどボビーがそう言い、鶴見さんがそういうところに投げ込まれた時点で…

:いつの間にやら…

:うん。

:政治的な発言をしてたっていうか。

:だってうちらって、鶴見さん35だって言ったけど、どっちかって言うと80年代的青年だったというか、ノンポリ青年というか。それが自分らの根本じゃないですか。

:変わらないんだ、みたいな。何言ったって無力なんだ、みたいな。でも、無力なんだって言ってるだけ、まだいいんですよね。それさえも言わないっつーふうになったらダメなんだっていうようなことを(『無気力製造工場』に)書いていて。そこんとこを強調してるんですけど。

:俺の感じとしては、若い子がどう思ってるか知らないけど、ギリギリ無力なんだ、って言った人が追い込まれてるっていう方が、レイジよりはリアリティがある。清志郎さんより全然リアリティあるかな、って思ってますけどね。

:キカイより、俺の人権侵害に激怒してほしいです。マジで自分の人権を守るのにどうしたらいいんだろう、って思っちゃって。やっぱり、裁判が機能してないし…。弁護士とかにも突き放されるんですよ。

:そうなんですか?

:そんなの私は面倒臭いからやりませんって。きっと勝てないからだと思うんですけど。この国は実は戦前みたいなもんですよ。完璧に理由のない理由で本を発禁状態にできてしまうなんて。でも、みんな関心なくて、自分自身が実は人権与えられてないことを。未成年者って基本的人権ないんですよ、それわかっててそうなんですかね。

:選挙権がないということは、いわゆる人権も保証されてないわけですよね。

:例えば条例に反対する人間つーのは有権者に限られてる。彼等はこういうことが決まって、自分らが本を読めない一番の被害者であるにも関わらず、反対すらできないんですよ。だから昔、奴隷とかが人権をよこせって言ったみたいに人権をよこせって言うはずの立場なのにね。

:子供の権利を守る国際規約みやいなものがあるのに…

:ええ。世界的な約束はあって、それを他の国は国内法に取り入れようとしてるのに、日本は批准すら先進国の中でも最後の方だって。嫌々やったみたいですよ。

:日本は、そういう傾向が強い国ですよね。

:未成年者の声って全然外に出ないじゃないですか。「お受験」とかが話題になってても、本当に一番の被害者である大勢の子供には目が向かない。誰も子供に言わせようとしない。


ナチズムって、たぶんフーリガンとも関係があると思うんですよ

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