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だってあの時、エッグストーンに来てる人って、
コアでしかありえないでしょう

:まあ彼等はイギリス人なわけですけど、心情的には、それこそプライマルが今回ああいうのを出してくれたっていうので、結構そういう意味で心強いんですけどね。

:プライマルも途中からなんですよね、そんな政治的になったの。南北戦争の南部軍のハタ(『ギブ・アウト、バッド・ドント・ギブ・アップ』)のジャケット)程度で。

:うん、だってもうノンポリの代表格みたいなもんだったじゃないですか(笑)。

:“♪ハイヤ〜・ザン・ザ・サ〜ン”とか言って。伊藤さんはどの辺りのプライマルが好きなんですか?

:僕はやっぱり…

:ファーストが好きなんじゃ…

:そうですね(笑)。

:やっぱり(笑)。クッキーシーンの編集長なら。

:やっぱ、あの頃まず盛り上がって…

:あの頃って気付かれてました?

:というと?

:プライマル・スクリームの存在に。

:うん。シングルから割と聴いてて。レコード屋に勤めてましたから、バイトで。

:邦盤出てました?

:邦盤…、いや、出てなかったですね。

:『ソニック・フラワー・グルーヴ』(ファースト)って、ものすごい後から邦盤出たような気が。

:うん。多分CDで出た時が初めてだったんじゃないのかなあ? LP出てたのかよく知らないですね。

:本人達的にはあれ、どういう位置づけなんでしょうね。

:いや、もう無かった事にしたいんじゃないですか(笑)。

:セカンドのタイトル『プライマル・スクリーム』ですからね。

:それに初期の頃って、もう一人メイン・ソングライターがいたじゃないですか。

:そっちの人の方がメインだったんですか?

:いや、俺的にはそういう予想を立ててたんだけど、そのジム・ピーティって奴が、その後でやってきた事を考えると、いや、意外にそうでもなかったかなとか思って(笑)。あと、97年の来日公演で、はじめて当時の曲やってたし…

:ボビー・ギレスビーはキャッチーな曲書くの上手いですからね。

:ですよねー。あー、確か鶴見さんと初めて会ったのって、まだ日本でスゥェディッシュ・ポップ・ブームなんて一般的には全然なかった頃の、エッグストーンの来日コンサートだったじゃないですか。六本木のアール・ホールかなんかのとき、杉本(拓也)君が紹介してくれて。

:でもカーディガンズとかは流行ってたんじゃ…

:輸入盤屋さんとかでは盛り上がってましたよね。荒木(陽路美)さんのいたクアトロ・ウェイヴとかで。だけど、ガンガン売れるようになったのは、あれからちょっとしてからじゃないかな。

:ヒットしてなかった。

:いわゆるマス・レベルでヒットしてなかったはず。

:エッグストーンは渋谷系内でも地味でしたね。

:で、僕はあの頃杉本君達と一緒にミニコミみたいな、スプーキーってのやってたから…

:読みましたよ。

:実は鶴見さんに何か書いて欲しいと思ってたんだけど。

:いや、ただでさえ音楽評は書かないのに…。

:あの頃『完全自殺マニュアル』がもう出てたはずですよね。

:『TVブロス』に書いてた頃ですかね。

:『自殺マニュアル』とか書いたネーム・バリューある人と知りつつ、なんとか頼めないかなんて思ったり…

:エッグストーン観に行ったところを見られてしまったがために。

:うん、だから自分にとっては、あれで完全に…

:こいつはコアな人間であるなって。

:(笑)だってあの時期にエッグストーンに来てる人って、コアでしかありえないでしょう。

:しかも北欧一、あれが好きだったっという…(笑)。けど、なんでですかねー。漫画評とか書くくせに、絶対自分は音楽の事とかに口出ししまいって。詳しくないし。

:ちょっとだけあったじゃないですか、『人格改造マニュアル』で、こういう時にはこういうのを聴くってコーナー。あれ結構、最高だったですけどねー。面白かった。完全に実用向けというコンセプトが好きだし、そのセレクションも、すげーピンと来た。「元気が出る・覚醒する曲」の一つ目がブー・ラドリーズだったのも、俺的には嬉しかったし(笑)。

:あん時、本当に好きだった。後書きに、誰それと誰それと、あとブー・ラドリーズに感謝しますって書こうかって、人に相談したんすけど。

:(笑)

:本当に、あの本はあれ聴きながら書いたんですよ。“ウェイク・アップ・ブー”だな、と思って。でも、そういう事しないのがあんたのいいとこなんじゃないか、って言われて。

:で、何でボビーに結びつくかっていうと、表面的な事じゃなくて、鶴見さんの本を続けて読んで感じられるスタンスが…

:本読むだけで、まさか気付かれるとは。俺ん中ではもう、恥ずかしながら敬意まで表しちゃってる感じ。ボビー・ギレスビーって人には。そこまで惚れ込んでる人物だったんですけど…、バレるとは思わなかったですね。

:というか、なんかシンクロしてる感じがしたんですよ。でもそれは多分ね、今じゃなかったら気付かなかった、いや、それはわかんないけど、今だったら気付きやすかったってのがあるのかもしれない。何でかっていうと、多分ボビーの中の政治的過激さ、ダラッとしていても過激であり、言う事は言う、っていうところが今突然前に出てきて。

:俺が政治的な話なんかするようになったのも最近ですからね。

:それから、プライマル・スクリームって名前が『人格改造マニュアル』なんじゃないかっていう。

:どうして『人格改造マニュアル』?

:なんでかって言うと、僕は最初このタイトル見たとき、ちょっとネガティヴ・イメージ持ってしまったんですよ。失礼ながら。僕は、何に頼るとしても人格は改造しない方がいいのではないかっていう、古いタイプの人間なのかも知れないけれど。で、そのネガティヴ・イメージは、プライマル・スクリームっていうグループ名を80年代半ばに最初に見たときにもあって…

:やっぱそんなの抵抗感ありますよね。オシャレな時代に。

:いや(笑)。オシャレっていうんじゃ全然なくて、やっぱ、僕は本当に古いタイプの人間…なのかなあ。よくわからないけど。

:プライマル・スクリームっていうのも普通に知られてる名前では心理療法の名前の方が多分有名だと思うんですよね。

:ジョン・レノンがやってたっていうので僕は知ってたんだけど。

:有名ですよね。

:原初の叫びでしたっけ。

:それをタイトルにつけたっていう。なんか…やっぱりあったんだと思うんですよね。

:それで鶴見さんの『人格改造マニュアル』を実際読んだら、あー、なんだ、こういうことかと。僕は昔かなり重度の分裂症を経験したことがあって、今でも結構躁鬱が激しいとこあるんですけど、なんかやたらハイテンションな時期とダウナーな時期を無意識にある程度使い分けながらこういう仕事してるんですよ。で、あの本って、なんかそれをより効率的にコントロールするための手段が書いてある気がして。それで当初のネガティヴ・イメージは消えて。で、あの本の中に(療法としての)プライマル・スクリームって名前出てきたじゃないですか。それ見て、俺、(バンドとしての)プライマル・スクリームの個人的第一印象とその後好きになった過程を思い出しちゃって(笑)。それから、全然関係ないけど『改造マニュアル』、クスリの有効な使い方が書いてあるわけじゃないですか。こういうふうにハマってしまう人もいる、でも自分はこういう風にやって、日常をうまく生き抜く役に立ててるって書いてあって…

:自分の頭ん中では、その頃にイギリスとかで“Just say No(ドラッグはとにかくダメ)”から“Just Say Know(とにかくドラッグについて知ろう)”にっていう、ヨーロッパ全般で政策の変換が行われて、とにかく頭どなしに規制するのを止めて、知識を広める方が全然有効だからそうしようって事になってて、日本でそうならないから、じゃあ俺がやろうよって気持ちだったんですよね。

:ああ、それはよくわかる。クスリに関して言うと、僕としては非常にニュートラルなスタンスを貫きたいと思ってるんですよ。一つにはクスリの今の取り締まる法律が酷いっていうのは、まったくそうだよなって思うんだけど、クスリをやんないとダメですよ、っていう言い方はあんまりしたくないとう…

:俺も絶対それは。そういう人っているんですけど、やらなきゃわからない、日本人やらないからダメだよね、みたいな。ダンス・シーンとかでも、なんかそういうの言われたりするんですけど、全然違うと思って。新しい本(『檻のなかのダンス』)でドラッグじゃない、ダンスが重要なんだって事を書いた。

:うんうん。

:一番問題なのは、そのことを議論されない事なんですよ。シャットアウトされちゃってるのに気付かない。


“♪キ〜ス・ミ〜”なはずだったんですよね

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