非=国民宣言2000


我々が受けてる
仕打ち

――日本は今、内側から瓦解しているという感じがあるんですよね。学級崩壊にしても、核心から腐食してるという感じ。その腐敗を取り繕おうと、権力はどんどん高圧的になっていく。

鶴見 秩序の維持ということ、それだけです。治安維持。国民の利益なんて何も考えていない。
 本当は原発の放射能漏れ事故――放射能漏れだとは思っていないですけれども――が起きたら、住民を逃がさなくちゃいけないんですよ。なのに、秩序を維持するために何キロまでは家で動くなとか言う。でもあれは無根拠で、つまるところ戒厳令です。おれがなぜ逃げたかといったら、九月三〇日なんですけど、異常な数の人身事故で常盤線がずっと停まりっぱなしだったんです。とっくに交通を封鎖してる、だったら早いとこ、東海道を停められないうちに関西に逃げようと思ったんです。行政の対応の遅れなんて言うけど。

――そうなのか。驚いた。

鶴見 逃げようと思ったって、道路も交通も全部封鎖されたから、もう逃げられないんですよ。あの人たちは逃げる権利あるのに。

――緊急事態における外出禁止令。

鶴見 戦後初めての。物理学の法則で「ヒバク量は距離の二乗に反比例する」というのがあるんですよ。だから、被曝したくなかったらとにかく離れること。それだけなんですね。ということは、おまえらは被曝してもいいから秩序を守れ、と。
 我々が受けてる仕打ちというのは、そういうことですよ。「おまえらの金利は払わないけれども、日本のために、それで我慢しろ」とかね。東海村の人たちがそれで納得したように、我々も全体的にそうしちゃってるに過ぎないんですね。窓なんか閉めなくてもいいから、家の中でも原発よりいちばん離れてる部屋にいろとか、新聞で学者がちゃんと言ってるのに、大阪から東京に電話して、「これはレベル4だろ。スリーマイルと同じぐらいのが起きてるから危なくないわけない。ちょっとでも離れたほうがいい」と言っても、「そんなこと誰も言ってないじゃん」という理由だけで退ける。

――「誰も言ってない」ということの威力は強いですね。何かおかしいんだけれども、自分がおかしいのか、で終わってしまっちゃいますから。

鶴見 おれも、逃げようとした時に、周りがあまりにものほほんとした雰囲気なので、「普通の人だったら、ここでアッと思って足を止めるだろうな」と思いました。だけど、おれはたまたま覚醒剤の取材していて、国民が一斉にだまされることがあるんだと知っていた――とあえて言いますが――ので、自分だけ新幹線の中で『危険な話』読みながら逃げることができたんだな、と思う。

――ぼくも覚醒剤に関しては、鶴見さんの話は驚きました。

鶴見 そうですね。「人間やめますか、覚醒剤やめますか」の威力というのは、おそるべきものがありますね。でも、そのあと、そのことを言えば言うほど「あいつはシャブ中だから」なんて言われちゃって損だから、言うのはやめましたもん。

――ぼくはフーコーの研究もしているんですけれども、『檻のなかのダンス』読んで、こんなにいいフーコーの解説はないと思いました。

鶴見 ほんとに? おれも卒論はフーコーが中心だったんです。大々的に影響受けてます。

――これほど説得力があるフーコー解説書はないと思う。

鶴見 そうですか。素晴らしい(笑)。でも、フーコー解説から一歩踏み込めたかなと。ディシプリンが広まる理由までは考えてなくて。

――フーコーはどうやったら檻を脱出できるかというのはあまり具体的に提示しなかったけれども、『檻のなかのダンス』はいま何ができるか具体的に提示してますよね。

鶴見 理由がわかれば、対処法も考えられるから。

――だからますます明確になるんですよ。何がまずいのかということが。

鶴見 フーコー読んでやってんだから、当たり前なんすけど、実は。脳のことも研究してなかったし。一応大脳生理学について知ってるので、前頭連合野っていう考えるとこだけ肥大していく結果そういうことになってるんだ、みたいなことも見えてくるんです。


ダンスで不自由が見えてきた

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