非=国民宣言2000


この国は民主主義
社会の失敗だ

鶴見 ノーベルって、爆弾を発明した人ですね。最初はレントゲンとかX線とか、キュリー夫人みたいな放射線研究ばっかりじゃないですか。二〇世紀に人類がやらかした愚行って、原子力、宇宙開発、軍拡。軒並みノーベル賞的なことであって、ノーベル賞みたいな時代だった。めちゃくちゃなんですよ、医学賞って。ロボトミー手術にあげたりしてね。
 人類が、原子力開発と癌医療の、両方とも情報を隠蔽したまま進んでいった二〇世紀の歴史というのは、「人類史上最大の愚行」というふうに、あとで位置づけられるかも。
 東海村の事件は、なんで説明がウソかというのは、一言で言えますよ。「ナトリウム24というナトリウムの放射性物質が検出されているから」。これだけでいい。ウランの分裂過程では生じないんですよ。全部嘘なんです。でも、全部嘘なんて、驚異的でしょう?

――そうですね。

鶴見 確かなのは「我々はどこでなにが起きたか、今でも知らない」だけ。ナトリウム24というのは、自然界にある「塩」に放射線が当たって生じてという苦しい言い訳をしてるんですけど、それだったらヒバク者の携帯電話からもナトリウム24が発見されるのかというのがわからないんですね。そんなことぐらいで反論できちゃう。
 これなんか、ひどいでしょう。臨海が止まった発表は実は嘘だった。毎日新聞に報道されちゃった。あそこで臨海が止まったといわないと、国内はパニック寸前になったので、止まったと言ってごまかしたんですね。

――八〇年代って、すごく反原発運動が盛り上がりましたよね。

鶴見 広瀬隆さんのブームです。

――ついこの間あんなに盛り上がったのに、これだけの大事故があったにもかかわらず、なんで今回はこんなに静かなんでしょう。

鶴見 この間ロフトプラスワンってとこで、原発に関するイベントがあったんです。行ってみたら、ロフトプラスワン史上最低の、一〇人未満。普通、どんなイベントをやっても、流れ客や常連客が来るし、二〇人から三〇人ぐらいは自動的に入っちゃうらしいからそれは明らかに異常らしいです。
 そういう場に出くわして、おれははっきりわかった。これは何らかの意図が働いている、と。知りたくないんじゃないか。「そのことは言わないでくれ」と。一〇月一日の夜中に「臨海だ」と言われた時に起きていた人は、誰もが「夢であってくれ」と思ったと思うんです。
 だけど、それじゃ済まないことがたくさんある。水俣病は二次災害だという話を最近持ち出すんですが、水銀が漏れた時に、漏れているとわかっているくせに九年間ほったらかしにしておいたばかりに、あとで大惨事になっちゃった。その時に環境庁長官で土下座したのが石原慎太郎なんです。だから、ものごとをなかったことにしていても問題は解決しないのだ、と。問題はなかったんだということで、野菜まで出荷しちゃってるでしょ。ひどい話で、東京のほうで「安全な野菜です」と、みんなにただで配ったりしているのね。これはやっちゃいかんことだろう。癌になれば、「それは放射能とは無関係だ」とかいって包み隠しますしね。

――最近、「見たくない」「忘れたい」みたいな無意識の欲求って強いし、実現しちゃいますよね。小林よしのりがうけているというのはそういう理由があるだろうけれども。

鶴見 「社会のせいにするな」って言うじゃないですか。大月隆寛さんや切通理作さんや小林は。要するに「社会のせいにするな」というのは、そっくりそのままおれたちは体制派だという意味ですよね。最近言われている「自己責任」なんてのも、そうすよね。

――あれも下手するとヤバイですね。「自己責任」とかいって、責任を突き詰めれば、たとえば天皇の戦争責任とかの問題が出てくるのに、そういう部分は巧妙に避けられる。

鶴見 もう、NATOにだって助けを呼びたいですよ。助けてくれ、この国を植民地化してくれ、と思っちゃいますね。だって、この国は世界に迷惑かけまくりですもん。いつの間にか貿易赤字国になってるんですよね。債務国になってるとは知らなかったですね。

――いまは、世界一の債務国じゃないですか。

鶴見 世界恐慌の火種になってますね、日本が。
 本当は、ここ二年ぐらいでひどくなったんじゃないか。そこでちゃんと方向転換して、自分の過去、いまやっていることを反省すればよかったのに、どうしてもプライドが邪魔してできない。だから海外に頼るしかないという、珍しいパターンじゃないか。民主主義社会が生まれてから、幾つかの失敗した社会――ナチスドイツとかソビエト連邦とか――を生み出してきちゃったんだけど、日本みたいなパターンというのはなかなかないんですよね。全員が平等であるというのはたしかに守られてるけど、この国は一度決めた方針を変える力はもう持っていない。SF作家しか予想しなかったようなことになってる。たとえば独裁国家のような社会が多数決で生まれてしまったということにだったら納得できるんですけど、こういう形はなかなか理解しがたいと思うんです。まさか、そんなことがあるわけないじゃないか、と。だけど、この国は、民主主義社会の失敗だとおれは思いますね。一〇年ぐらいたって振り返って見てみると、ナチスドイツと並べられるんじゃないかと思います。

――権力は、すごく頭がいいですからね。昔のファシズムみたいにガツーンとくるというよりは、とても巧妙にやる。

鶴見 おれは、全員が責任を押しつけ合った結果、誰も権力を持ってないと思います。でも審議会の連中はそんな感じです。審議会のこと、誰も言いませんね。

――審議会政治は、ものすごく重要ですね。

鶴見 裏国会でしょう、審議会は。

――あれが八〇年代に議会にとってかわって、民主主義は瀕死になっちゃうんです。

鶴見 大企業の会長とか、日経連とかの業界団体とか。審議会のメンバーを見ると愕然とする。朝日とか集英社とかのマスコミも一流大学の教授もみんな入ってる。

――マスコミが勝手に犯人をつくっちゃうように、勝手に争点をつくって、勝手に未来を予測しちゃって、世論調査とかを適当にでっちあげて、あたかも合意ができてることにするんです。

鶴見 内閣支持率のアンケートって、受けたことあります?

――ないですよ。周りにいないですよ、全然。

鶴見 全然聞かないですよね。公開しろと言ったってデータを公開しないですからでっち上げだと思うし、やってても、かなり少ない母体数でやっているはずだから、無効ですよ。

――また、すごく誘導的なんですよ。設問とかが。

鶴見 文民統制――シビリアン・コントロールというのがありますよね。実はシビリアン・コントロールすらできていないんですよね。全員が全員パワーダウンしているすきに、警察が結果的に伸びてきてる。はっきり言って、「敵は警察だ!」と言ってもいい。「警官の人権を侵害しろ」とか、「警官を不当逮捕しろ」。「それが゛平等"だ」と。いちばん言っちゃいけないことでしょうけれども。

――タブーですね。「警察はもっとしっかりしろ」ということは今、誰でも言ってますが、それは、鶴見さんのいう意味で、もっと警察力を強化してひどくなれ、ということですから。

鶴見 本当は警察職員にだって全然力はないと思ってます。でも浮上してきちゃった。武力で反抗する団体は、ヤクザでも連合赤軍でもオウムでも潰してきたんですよね。だから対抗する武力勢力もなくなった。それで警察の一国支配みたいな構造になってる。
 海外でも「結局日本は五〇年間何も進歩しなかった」、それを言われたら「その通りです」と言うと思います。


我々が受けてる仕打ち

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