鶴見済『脱資本主義宣言 グローバル経済が蝕む暮らし』レビュー

「生きやすさ」を阻む「経済の仕組み」に挑む本

『完全自殺マニュアル』をはじめとする過去の著作のテーマは何だったろうか? 一言で言うなら「生きやすさ」の追求だろう。本書『脱資本主義宣言』もこの点に変わりはない。かつて「強く生きろ」主義に宣戦布告した著者が今回挑むのは、「生きやすさ」の前に立ちはだかる「経済の仕組み」である。

『人格改造マニュアル』がそうだったように、膨大な資料を分かりやすくまとめるのはお手のもの。本書でも、資本主義による人・地域・自然への害が実に良くまとめられている。ただ、本書の特色はそこではない。グローバルな問題を身近な視点、日常生活とリンクさせている点にこそある。

例えば、反抗のしかたにそれがよく表れている。服は着古す、コーヒーを減らす、自販機は使わない、外食を控える――。どれも普段の生活でできる些細なことだ。しかし、これらなしに大きな問題が改善しないのも事実。我々は無力なように見えるが、できることはたくさんあるのだ。

また、最後の章は「自然界とのつながり」がテーマとなる。ヒトは自然界の一部にすぎないと気付けば“永遠の経済成長”から自由になれる。自然界とのつながりを意識すれば、我々が日々悩む人間関係を相対化できる。日常生活の「生きやすさ」を長年考えてきた著者らしい結論が導かれる。

資本主義という「経済の仕組み」は、人をカネに仕えさせ、「生きやすさ」を奪ってきた。けれども「経済やカネは、我々がよく生きるために役立てばいいのであって、我々がそのために人生を犠牲にするのは間違っている」(16頁)。本書のタイトルにある「脱資本主義」とはこのことだ。

『檻のなかのダンス』で「近代最高!!」と書いたように、著者の理想は前近代に戻ることではない。「社会主義にするのか」「カネを使わないのか」といった批判も的外れだ。本書を読み、経済至上主義ではない「もう一つの世界」を生きる人たちが増えてほしいと思う。ぼくらは経済の奴隷じゃない!

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