入手情報等に基づく公務員の氏名公表等の基準

 UP 2007.05.03   更新 2007.05.03

 

 下表の主要判例を踏まえ、当ホームページ・掲示板・ブログ等における氏名公表基準等を次のとおり明示する。

@ 専決権のある行為に関する事項を論評する際は、原則、専決権者の氏名は公表しても補助職員の氏名は公表しないものとする。

A 専決権のない公務上の服務等の態様について論評する際は、原則、管理職の氏名は公表しても非管理職の氏名は公表しないものとする。

B @及びAの例外的取り扱いとして氏名を公表する際は、理由を付記するものとする。

C 事実確認のできない情報に基づく氏名公表は行わない。

(適用例:情報公開で入手した旅行命令簿の写しには氏名が実際は記載されているが、旅行命令の専決権者でないのでここでは公開しない。)

番号

主要判例

<個人情報保護と公務員の職・氏名>

<事件名(通称)>
千葉県立高校校外出張情報公開訴訟

<概要>
千葉県立高校の校長の旅行命令票の公開をめぐる訴訟。校長の校外出張に関する情報が個人情報として非公開とされていたもので、最高裁は、旅行命令票は公務員の職務遂行に関する情報が記録された文書であり、校長の私事に関する情報を含まない場合は非公開情報に当たらないとして、個人の収入が明らかとなる「級・号給」欄を除き公開を命じた。

<判決:最高裁>
「個人にかかわりのある情報であれば,原則として同号にいう「個人に関する情報」に当たると解するのが相当である。しかし,県の公務員の職務の遂行に関する情報は,公務員個人の社会的活動としての側面を有するが,公務員個人の私事に関する情報が含まれる場合を除き,公務員個人が同号にいう「個人」に当たることを理由に同号の非公開情報に当たるとはいえないものと解するのが相当である。」
(裁判所時報1351号6頁)

<事件名(通称)>
富山県土木事務所等職員出勤簿等情報公開訴訟

<概要>
県土木事務所等の職員出勤簿の公開をめぐる訴訟。最高裁は、出勤簿は職員の公務遂行に関する情報が記録された文書であり、私事に関する情報を含まない場合は非公開情報に当たらないとして、私事に関する情報である「停職」の記載部分を除き公開を命じた。

<判決:最高裁>
「本件出勤簿の記載のうち,「職」,「氏名」,「採用年月日」及び「退職年月日」の各欄の記載は,それ自体が職員の私事に関する情報を含むものではない。もっとも,「職」及び「氏名」の各欄の記載は,各日付欄の記載と結び付くことにより特定の個人を識別し得ることになるが,それ自体が職員の私事に関する情報を含むものでなく,非開示情報に該当しない公務遂行に関する情報と結び付いている以上,これを開示すべきである。
 また,県の個々の職員の出勤及び出張に関する情報それ自体は,当該職員が公務に従事したことを示すものであり,これが当該職員の私事に関する情報を含まない公務遂行に関する情報であることは明らかである。他方,個々の職員の休暇の種別,その原因ないし内容や取得状況を示す情報は,公務とは直接かかわりのない事柄であって,私事に関する情報ということができるが,公務に従事しなかったことそれ自体は,やはり公務遂行に関する情報としての面があるというべきである。そうすると,出勤及び出張に関する情報を開示することが,その反面として,それ以外の日に公務に従事しなかったこと自体を明らかにするとしても,公務に従事しなかった理由まで直ちに明らかになるわけではないから,私事に関する情報を開示することにはならないというべきである。」
(裁判所時報1352号8頁)

<意見・論評と公務員の名誉>

<事件名(通称)>
名誉および信用毀損による損害賠償および慰藉料請求事件 (公共の利害に関する事実の摘示と名誉毀損>

<判決:最高裁>
判例集: 第20巻5号1118頁

判示事項: 公共の利害に関する事実の摘示と名誉毀損の成否。

裁判要旨: 名誉毀損については、当該行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為は、違法性を欠いて、不法行為にならないものというべきである。

<事件名(通称)>
「夕刊和歌山時事」事件

<判決:最高裁>
判例集: 第23巻7号975頁

判示事項: 事実を真実と誤信したことにつき相当の理由がある場合と名誉毀損罪の成否

裁判要旨: 刑法二三〇条ノ二第一項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。

<事件名(通称)>
「夕刊フジ」名誉毀損事件

<事件概要>
殺人未遂被疑事件で逮捕拘留されて取り調べを受け犯行を否認していたていた被疑者Aに対し、「Aは極悪人、死刑よ」などの見出しをつけ、犯罪事実が実際に存在したと摘示したかのような記事を掲載したことに対する名誉毀損罪嫌疑

<判決:最高裁>
判例集: 第51巻8号3804頁

判示事項:
@ 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損において行為者が右事実を真実と信ずるにつき相当の理由がある場合の不法行為の成否
A 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事における事実の摘示と意見ないし論評の表明との区別
B 特定の者について新聞報道等により犯罪の嫌疑の存在が広く知れ渡っていたこととその者が当該犯罪を行ったと公表した者において右のように信ずるについての相当の理由

裁判要旨:
@ 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉殿損について、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあって、表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない場合に、行為者において右意見等の前提としている事実の重要な部分を真実と信ずるにつき相当の理由があるときは、その故意又は過失は否定される。
A 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事が、意見ないし論評の表明に当たるかのような語を用いている場合にも、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、前後の文脈や記事の公表当時に読者が有していた知識ないし経験等を考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは、右記事は、右事項についての事実の摘示を含むものというべきである。
B 特定の者が犯罪を犯したとの嫌疑が新聞等により繰り返し報道されていたため社会的に広く知れ渡っていたとしても、このことから、直ちに、右嫌疑に係る犯罪の事実が実際に存在したと公表した者において、右事実を真実であると信ずるにつき相当の理由があったということはできない。

<事件名(通称)>
「通知書不交付批判ビラ」事件

<概要>
公立小学校における通知表の交付をめぐる混乱についての批判、論評を主題とするビラの配布行為が名誉侵害としての違法性を欠くとされた事例。
公立小学校教師の氏名・住所・電話番号等を記載し、かつ、「教師としての能力自体を疑われるような『愚かな抵抗』」、「教育公務員としての当然の責任と義務を忘れ」、「お粗末教育」、「有害無能な教職員」等の表現を用いた大量のビラを繁華街等で配布した場合において、右ビラの内容が、一般市民の間でも大きな関心事になつていた通知表の交付をめぐる混乱についての批判、論評を主題とする意見表明であつて、専ら公益を図る目的に出たものに当たらないとはいえず、その前提としている客観的事実の主要な点につき真実の証明があり、論評としての域を逸脱したものでないなど判示の事実関係の下においては、右配布行為は、名誉侵害としての違法性を欠くとした。ただし、住所、電話番号の記載によって夜間の匿名電話や差出人名のない葉書による精神的被害のあったことを認め、民事上の不法行為に基づく損害賠償として2万円の慰謝料を認めた。

<判決:最高裁>
「本件ビラを全体として考察すると、主題を離れて被上告人らの人身攻撃に及ぶなど論評としての域を脱しているということもできない。そして、本件ビラの右のような性格及び内容に照らすと、上告人の本件配布行為の主観的な意図及び本件ビラの作成名義人が前記のようなものであっても、そのことから直ちに本件配布行為が専ら公益を図る目的に出たものに当たらないということはできず、更に、本件ビラの主題が前提としている客観的事実については、その主要な点において真実であるとの証明があったものとみて差し支えないから、本件配布行為は、名誉毀損の不法行為の違法性を欠くものというべきである。」
(判例集第43巻12号2252頁)

<専決権者と担当(補助)職員の責任>

<事件名(通称)>
平成17(行コ)第154号・損害賠償代位請求控訴,損害賠償請求を求める請求控訴事件

<裁判年月日>
平成19年04月19日 (東京高等裁判所第21民事部 )

<概要>
(静岡県教育委員会)財務課職員の事務処理上の過誤によって、源泉徴収した所得税の国への納付が遅滞し、延滞税35万3,900円及び不納付加算税2871万円を県が納付したことによって生じた損害賠償請求を県が怠っているとして起こされた訴訟。
東京高裁は専決権を有する職員(知事の権限に属する事務を直接補助する職員)が予見可能な範囲内のものである限り、担当職員(専決権者を補助する職員)の違法行為は専決権を有する職員の行為と同視できるとして、専決権を有する職員であった当時の財務課長に全額の損害賠償を求める判決を示した。

<判示事項の要旨>
 地方自治法第243条の2第1項後段所定の「同項各号に掲げる行為をする権限を有する職員」又は「その権限に属する事務を直接補助する職員で普通地方公共団体の規則で指定したもの」を直接補助する職員の補助行為が法令の規定に違反し,かつ,当該補助行為に関する違法が同項各号に掲げる行為の違法を構成する関係にある場合における同項の適用

 地方自治法第243条の2第1項各号に掲げる行為に関し,同項各号に掲げる行為をする権限を有する職員又はその権限に属する事務を直接補助する職員で普通地方公共団体の規則で指定したものの補助職員の補助行為が法令の規定に違反する場合において,当該補助行為に関する違法が同項各号に掲げる行為の違法を構成する関係にあるときには,同項所定の要件の下に損害賠償責任を負うのは,同項各号に掲げる行為をする権限を有する職員又はその権限に属する事務を直接補助する職員で普通地方公共団体の規則で指定したものに限られ,同項の適用上は,同項各号に掲げる行為をする権限を有する職員の権限に属する事務を直接補助する職員であっても,普通地方公共団体の規則で指定したものに該当しないものは,自らは損害賠償責任を負わず,その者の行為は,同項各号に掲げる行為をする権限を有する職員又はその権限に属する事務を直接補助する職員で普通地方公共団体の規則で指定したものが予見可能な範囲内のものである限り,これらの者の行為と同視され,これらの者が当該行為を行い,又は怠ったものとして重大な過失があるかどうかが評価される。 (最高裁平成9年(行ツ)第62号同14年10月3日第一小法廷判決・民集56巻8号1611頁参照)