作曲家別アニメサントラ紹介-16

<最初に>
みなさんがイメージするアニメサントラというものの評価というのは、ある程度受け入れられており、それは楽曲として適切に評価されていると行っていいと思います。

でも、私が取り上げるサントラの多くは、そういった一般的にイメージされるような「アニメに使われる」とされているものとは一線を画していると思っております。
実際、レーベルのないCD-Rなどで聴いてみて、と渡すと、質の良いインスト曲と勘違いしてくれるものが多かったりします。さらに、これってTVで使われていない?と聞いてくる人もいて、その作品名を聞かされ驚くことも多かったりします。

そういう意味では、TVドラマや映画のサントラとアニメサントラは、すでに日本では境界線が消失しかかっているのかもしれませんし、汎用性のあるサントラはむしろアニメの方に多く出てくるという事態になっていると、私は考えております。

しかし、制作費用にそれほど音楽はかけることが出来ず、作曲家だけではなく演奏家や制作にかかわる人すべてに対して、厳しい状況になっているようです。
それが、それが売れないことを理由に失われてきているとしたら、やはりこういった形で紹介して、出来れば買っていただきたいと思うわけであります。

そんな中で、音楽プロデューサーの思い入れで、作曲者が選択され、それが世に出て評価されるものも出ていることに、期待をかけずにはいられません。
 

これまで取り上げたサントラのTV番組での利用頻度は、下記URLを参照のこと。
http://hp1.cyberstation.ne.jp/sh-kato/cdf-00.htm
 

(初出 2008/07/06)
 
 
 
140 吉森信 141 菊地創 142 菅野祐悟 143 村松健(紅) 144 三宅一徳 145 羽毛田丈史(夏のソラ)
146 菊谷知樹 147 池頼広 148 井内舞子(とある魔術の禁書目録) 149 百石元 150 中川幸太郎 150 羽毛田丈史(青い花)
152 梶浦由記 153 渡辺剛 154 ダブルオーツ(安部純,武藤星児) 155 村松健(うみものがたり) 156 井内舞子(とある科学の超電磁砲) 157 S.E.N.S. Project(勝木ゆかり、深浦昭彦、森英治)
158 蓮実重臣 159 はまたけし 160 大島ミチル 161 中島ノブユキ
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第140回 吉森信さん
(初出 2008/07/06)

紹介するサントラは、
バッカーノ! オリジナル・サウンドトラック スパイラルメロディーズ (Aniplex SVWC 7499)

作曲者のもともと持っているライブを中心として活動している時に身についたとおぼしき、ジャズやブルースっぽいテイスト。それが、作品が持っている多少昔のアメリカにマッチングした楽曲となって再現されていたというところでしょうか。

メインテーマとなっている楽曲の旋律は、結構小気味よく響くのです。しかし、メインテーマ以外の楽曲の印象に残りにくいのは、案外サントラとしてはベーシックなもので構成されているからかもしれません。下手をすると、類似の感じの良い酒場などで使われそうなサントラ楽曲と紛れてしまうくらい。それは、うまくアレンジが出来ているから余計目立ちにくくなってしまっているという風に思えてなりません。
それと、メインテーマはピアノ・ギター・バス・パーカッション・トランペット・サックスなどなど、かなり楽器を使い込んで作っていますが、その他の楽曲は結構楽器を絞っていることも、影響しているのかもしれません。

確か、学園アリスでもメインテーマとなる楽曲などは印象的な旋律はキーボードでうまく作り込んでいたはずですが、それ以外の場面を説明する楽曲はいまいち響かなかった記憶があります。今回もそんな感じで仕上がったように思えますが、それでも得意とする場面と合わさると、以前と別の方で取り上げたバーテンダーなどと同様に、アルバムとしては聴き応えのあるものとして作れているわけです。それでも、汎用性という部分はこの場合もメインテーマしかなかったという感じではありますが、それが飛び抜けて良いというわけで、ある種定番化しつつあったりするのです。

第141回 菊地創さん
(初出 2008/07/06)

紹介するサントラは、
true tears オリジナルサウンドトラック (Lantis LACA-5772)

すぱっと転調したりして、一つの楽曲で複数の旋律を組み合わせることに特徴あるようです。それでも、そんなに唐突な感じではなく、ベーシックな旋律を確実に固めていって繰り返し聞いても印象が崩れないのは、歌付きの楽曲やゲーム音楽がその中心だったから、と推測されます。

案外場面ごとにベタと思える旋律が来るのですが、作品全体で統一感を感じられるものになっているのは、アルバムとして聞き返しても心地よいものだったりします。作品自体が、メリハリのある場面を音楽も補完して盛り上げることが盛り上げることを求めており、そういった意味で適切だったかもしれません。

それより興味深かったのは、作品の舞台となっている地域の祭りなどで使われる音楽など、たぶんこれまでこの人の作ってきた作品の引き出しとは異なるものが、きちんと作られているという点。さらに、オープニング曲となっているリフレクティアが、インスト曲としてもしっかりと旋律で聴かせられるものになっている点。これは、前作双恋との大きな違いだったかもしれません。

でも、一番個人的に印象に残る楽曲は、track 02 入射光に、右手をかざす の、ポップでありながらスタンダードに旋律を構成し、ゆるやかな起伏でストリングスを響かせているものだったりしたのでした。この雰囲気が、他の楽曲にもうまく作り込まれているという風に、個人的には感じたのでした。

第142回 菅野祐悟さん
(初出 2008/07/06)

紹介するサントラは、
図書館戦争 original SOUNDTRACK (SONY MUSIC SRCL6813)

旋律としてのきれいさはあり、サントラとしての統一感もよいのであるが、そういった技法的な部分の質の良さで楽曲としての評価は高いのではないかと思います。でも、自らが好んでいる曲調以外は、イマイチしっくりしない部分もあって、これまた技法を使ってみたという感じにとどまっている気がします。このため、そこそこ評価されていたと思われますが、汎用性のある楽曲としてはいまいちという印象だったりしたのでした。

そういった中で、この図書館戦争という戦闘部分の表現はあるものの基本がラブコメという作品では、印象に残りやすい旋律を作り込んだものとしてのメインテーマが作り込めたようです。そのアレンジバージョンがサントラとして多くを占めておりますが、この多用なアレンジした楽曲というのがいい感じに仕上がっていたりします。

旋律やアレンジの両方を変え、巧みにいろいろな場面を表現する音楽を作るのは、確かに自らの音楽を作り出す引き出しを増やしていくことになり、作品を作る側の要求にも確かに応えることになります。しかし、作曲家の編曲(アレンジ)としてのスキルアップという部分では、多少難があると言わざるを得ません。その点から、今回のメインテーマ以外の楽曲は、力量があることは感じられるのですが、イマイチ旋律に響くものが感じられなかったりします。
しかし、メインテーマのアレンジバージョンには、これまでとは違った、編曲でも楽曲の印象を変えることを会得した風に感じられたのでした。そのための楽器の選択や音の重ね方など、たぶんこれまでのではあまり行わなかったこともやってきたように思え、それが興味深く聞くことにつながったと思われます。
 
 
140 吉森信 141 菊地創 142 菅野祐悟 143 村松健(紅) 144 三宅一徳 145 羽毛田丈史(夏のソラ)
146 菊谷知樹 147 池頼広 148 井内舞子(とある魔術の禁書目録) 149 百石元 150 中川幸太郎 150 羽毛田丈史(青い花)
152 梶浦由記 153 渡辺剛 154 ダブルオーツ(安部純,武藤星児) 155 村松健(うみものがたり) 156 井内舞子(とある科学の超電磁砲) 157 S.E.N.S. Project(勝木ゆかり、深浦昭彦、森英治)
158 蓮実重臣 159 はまたけし 160 大島ミチル 161 中島ノブユキ
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第143回 村松健さん
(初出 2008/10/07)

紹介するサントラは、
紅 オリジナルサウンドトラック(Lantis LACA-9117〜8)

村松健さんの楽曲が表現される場としては、自然や人が生活する街の中でそれでもゆったりとした時間の流れでいろんな出来事が過ぎている感じと、人の中でいろいろな出来事が渦巻いていて、その中でも人としてきちんと暮らしていることを現しているような感じの2つの場があるといえます。前者のような場は、すでにスケッチブックのサントラで表現されていて、今回は後者のような場であるといえそうです。かつて、そういった場を表現した楽曲では、闇にとらわれて楽曲としての表情に乏しい感じがしたのですが、この紅のサントラでは表現すべき作品のイメージに寄り添うことで、うまく表情をつけることが出来たのではないでしょうか。

前にも述べたように、どちらかというと普通のインストゥルメントアルバムの楽曲の作り方に近いため、一つの場面を表現するような楽曲にはなっていません。それでも、短めの楽曲にはなっていますが、スケッチブックよりは長めの楽曲が多いようです。そのことは、むしろ場面というより登場人物の心情やイメージを表現した曲に近いものになっているからかもしれません。

サントラとして特筆すべき点は、結構旋律が同じでアレンジした楽曲が多いこともあって、emotional sideとswingin’ sideの2つに楽曲を分けて収載しています。通常だと、結構中途半端にイメージ分けしてアルバムとしてのバランスを欠いている場合が多いのですが、かなりすっきりと分けられていてバランス良く作られ、それでいて2枚まとめて聴いても1つのコンセプトによるアルバムとして聴くことができていたりします。
その意図や楽曲ごとの解説は、CDのライナーノーツにご本人が書いておりますのでそこに譲るとして、ジャケットの絵とは対照的に気分に合わせてCDを選べる村松健のアルバムという感じになっていたりします。だからといって、作品の場面とあわせて違和感があるかというと、これがまたしっくりと来るものになっていますし、制作側からの要求を見事に取り入れたものになっていたりします。

第144回 三宅一徳さん
(初出 2008/10/11)

紹介するサントラは、
二十面相の娘 オリジナルサウンドトラック(Lantis LACA-9127〜8)

この作品の舞台は、昭和後半よりやや前のいま見ると多少古い印象があるものの、ある種無国籍感が漂う雰囲気。ただし、そこにあわせたアレンジとしてしまうと、作品そのものが持ついわゆる冒険活劇としての生き生きとしたものや登場人物が負っていて解き放とうとしているものを表現するのが困難となってしまいます。

そこで、ジャズとある種のトラディッショナルミュージックの要素を核に置いて作ったと、ライナーノーツとして三宅さんが述べています。でもこれら音楽のテイストが感じられるというものと私には感じられ、むしろ多少ゆったりとした印象に残りやすい旋律に、アレンジとしてジャズなどの表現を借りたというものではないかと思います。

三宅さんの作品で個人的に印象が残っているものとして、ふたりのスピカ があります。こちらは、この作品以上に輪郭がはっきりしない作品ではありましたが、メインテーマとなる楽曲など旋律ははっきりしており、作品の雰囲気として表現したいものをきちんと浮かび上がらせていたという記憶があります。

このサントラを聴くと、たぶんルパン三世などの曲と作品がうまく混じり合った、作品のテイストに合わせたこの手の作品の王道を行く楽曲というものかもしれません。でも、むしろ三宅さんが持つ旋律の引き出しの多さを反映した、作品の設定などとは多少ずれた独自なものになったといえそうです。それゆえ、他の映像に対しても汎用性の高い楽曲になったと思えるのでした。
 

第145回 羽毛田丈史さん
(初出 2008/10/13)

紹介するサントラは、
魔法遣いに大切なこと〜夏のソラ〜 オリジナル・サウンドトラック(Geneon GNCA-1164)

直近にアニメサントラとしてバンパイヤ騎士や西洋骨董洋菓子店〜アンティーク〜、TV番組としてはROOKIES、NHKスペシャル 病の起源 といった、引き出しの多い羽毛田さんらしく作品世界に寄り添ってフィットした楽曲を作っていたりします。それらは、メインとなる旋律は思いの外聞こえてこなくて、そつのないサウンドトラックという感じが強かったりします。それは、たぶんCDでまとめて聴いてみると、テーマ性に書いた雰囲気を感じてしまうというものになるのではないか、と思えたりします。

その点から前作である 魔法遣いに大切なこと は、作品のコンセプトから受けた印象を元にしつつ、かなり自由に自らの楽曲として作ったという印象が強かったですし、それが作品にもいい影響を与えたと思えるものになっていたりします。その点は、今回の〜夏のソラ〜でもアイルランド系のものという一つの柱ではいかんなく発揮されています。ただし、メインテーマとなる旋律とそのアレンジが多くを占めており、楽曲としてのバリエーションの多さにつながっていないのは、前作を気に入っていた人にとっては不満が多少残るものになっていると思います。

もう一つの柱であるロックなものというのは、直近ストリングスの大きな編成やオーケストラ系のきれいな感じとは対極を成すものですが、実はこれも羽毛田さんの得意分野といえるものだったりします。いわゆるアメリカン・ロックといったものは、それほど旋律にキャッチィなものはないのですが、この〜夏のソラ〜では、作品の映像表現にもぴったりと合っていたりします。しかし、作品にあっているものは、作品自体の評価も良くないと楽曲としてあまり評価されないという前例通り、あまり評判は芳しくないかもしれません。

アイルランド系のものとロックなもの。このちょっと合わさらない2つのコンセプトの楽曲が、一つのサントラとしてきちんと並び立って響いているというのは、個人的には気に入っていたりするのでした。

第146回 菊谷知樹さん
(初出 2008/11/09)

紹介するサントラは、
「ひだまりスケッチ×365」オリジナルサウンドトラック(Lantis LACA-5817)

日常に近い場面を表現するアニメでは、あんまり劇的な変化を表現する楽曲を必要としないため、前作と作品世界が全くといっていいくらい変化しない場合、新たに書き起こされる楽曲はどうしても印象が薄くなってしまいます。それと、どうしても前作で作られた楽曲にない音楽を補完するものとなるため、サントラCDを通しで聞くと何か食い足りないものを感じたりするものです。

そういった印象を受ける場合は、前作と主旋律が似ていたりアレンジしたものが多くを占めたり、間合いとかがそんなに変わらないことによると思われます。それと、楽曲1つを切り離して聞いてもいまいちピンと来ないようです。

そういった印象を持ってしまいそうになったのですが、前作以上にいろんなジャンルのテイストを盛り込んでいて、菊谷さんの引き出しの多さをあらためて感じたのが、ひだまりスケッチ×365のサントラだったりします。
今回は、1つの楽曲にそれほど多くない楽器を使い、旋律がイメージするものにかなりマッチした楽器を選択しているという、かなり厳しい条件を強いて作られている印象です。それは、ブックレットの冨田明宏さんのTEXTにもあるように、絶妙なタイム感つまり”間”がうまく作り込まれていることにつながっているのかもしれません。映像表現や台詞、音楽をつける時の間は比較的意識されることがありますが、音楽自体が場面の雰囲気を作り出す場合、そういった間を作り出せるかどうかが重要です。それに前作と今回の作品いずれでも作り出せたことは、アレンジャーとして多くの作品を作ってきた能力のなせるワザということなのでしょう。

第147回 池頼広さん
(初出 2008/11/10)

紹介するサントラは、
テレパシー少女蘭 オリジナルサウンドトラック (COLUMBIA COCX-35133)

他の映像でも合わせられる汎用性のあるアニメサントラでは、一つのメインテーマとなる旋律である程度雰囲気を統一させ、そのアレンジ楽曲で構成していくという、いわゆる映画やTVドラマで多用される楽曲構成が多くあります。対照的に場面やキャラクターに合わせた楽曲を多数作るというのもあり、こちらはアニメサントラでは一般的な手法といわれています。

この2つの音楽構成のうち、場面や心情を表現する場面では前者、緊張する場面やコミカルな場面では後者が、とライナーノーツでは述べられているようですが、ちょっと疑問符がつくように私には感じられます。もともと、2分程度の楽曲が多く、アイキャッチやサブタイトルといった短めの楽曲を作らず、場面全体の雰囲気を複数に絡めて旋律を重ねていった感じに仕上がったという印象だったりします。ただ、その起点となる主人公の蘭のテーマの旋律ができるまでに結構時間がかかったようです。それだけに、蘭のテーマは印象的な旋律を作り出せており、それに沿うように他の楽曲も紡ぎ出されたという感じがします。

蘭のテーマとそのアレンジ楽曲は比較的ゆっくりだが軽快なのですが、それ以外はリズム的にはゆったりと進んでいくものが多かったりします。このため、思ったよりもキャッチィに楽曲を響くものにはなっていないので、引っかかりが少なく、すんなりと流れて聞こえてしまっています。この作品の楽曲としては適切なのですが、心地よすぎて印象に残りにくく、他の映像ではちょっと使いにくくなっているのではないか、と思ったりします。
 
 
 
140 吉森信 141 菊地創 142 菅野祐悟 143 村松健(紅) 144 三宅一徳 145 羽毛田丈史(夏のソラ)
146 菊谷知樹 147 池頼広 148 井内舞子(とある魔術の禁書目録) 149 百石元 150 中川幸太郎 150 羽毛田丈史(青い花)
152 梶浦由記 153 渡辺剛 154 ダブルオーツ(安部純,武藤星児) 155 村松健(うみものがたり) 156 井内舞子(とある科学の超電磁砲) 157 S.E.N.S. Project(勝木ゆかり、深浦昭彦、森英治)
158 蓮実重臣 159 はまたけし 160 大島ミチル 161 中島ノブユキ
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第148回 井内舞子さん
(初出 2009/07/29)

紹介するサントラは、
とある魔術の禁書目録 ORIGINAL SOUND TRACK 1(ジェネオン GNCA-1202)
とある魔術の禁書目録 ORIGINAL SOUND TRACK 2(ジェネオン GNCA-1203)

サントラ収録の楽曲全体を聞いていて、打ち込み系で一通りならした感じがあって引き出しが多いなぁ…と思ったら、I’veのメインコンポーザーの一人として活躍していたんですね。ゲーム音楽は多数の音を作り込む必要がありますが、TVアニメのサントラとなるとアレンジなどをかなり変えて作る必要がありますが、この初作となる とある魔術の禁書目録(インデックス) では、きちんと作り込めたんじゃないかと思いました。ただし、この紹介の趣旨である汎用性があるかというと微妙なところでして、気にかかったのでご紹介という感じのものだったりします。

もともと作品自体表情豊かで、日常的な場面があれば超能力や魔術による変化、戦闘シーンなどゲームより時系列に旋律で表情を変える必要が出ていましたからね。そういった意味で、作曲家の持つ引き出しを一通り出す必要が出るだけの大仕事だったのは想像に難くないです。でも、ライナーノーツの中で一つの芯として出た、「音楽的なノイズやシンセサイザーのデジタルな音、エフェクト、打ち込みの音をたくさん使うこと」。ゲーム音楽なら当たり前と思われそうなことだが、これを制作側から依頼され作れたというのは、彼女にとって幸せな作品との出逢いだったのではないかと思います。

サントラの曲調の種類としてはベタとまでは行かないけど、標準的な種類がでたように思いますが、意外とメインテーマとなるような旋律はなく、よくまあこれだけの種類の楽曲を作ったなぁ、と感心するくらいバリエーションに富んだものになっています。でも、まだオリジナリティを感じるほどの楽曲が目立つわけではなく、ぼんやりとした感じだったりするわけで、今後またサントラを作る時に別の楽曲の表情を見せてくれることに期待をしたいなぁ、と思ったのであります。

第149回 百石元さん
(初出 2009/08/12)

紹介するサントラは、
K-ON! ORIGINAL SOUND TRACK (ポニーキャニオン PCCG-00961)

2009年4月改編のアニメで、当初から終わってもいろいろとネット上で話題となった「けいおん!」。軽音楽部を舞台にしているから音楽も…ということではなく、アニメで表現している学園ものの部活動を結構リアルな感じを、音楽もきちんと補完していて、かつ汎用性があるなぁ…と思ったからご紹介ということです。

百石(ひゃっこく)さんは、スタジオミュージシャン/アレンジャーとしての仕事が多いこともあって、どちらかというと歌詞のある歌に添えていくという仕事が目立つようです。そのため、メロディラインはしっかりと作り込んでいる感じですし、打ち込みが中心の楽曲なのですが、それほどたくさんの音源を使わず、のほほんとした日常にマッチしたものが作られているという印象です。

ライナーノーツでは、「おまぬけ」&「少しいもな感じ(いい意味での)」というのが今回のサントラのキーワードだそうです。日常生活を描くという意味で、壮大になるような音楽はなく、本当にキーワード通りの音楽が作られていると感心いたしました。個別の楽曲すべてにライナーノーツで百石さんのコメントがついているので、どんな雰囲気の音楽として作られたかはそちらに任せましょう。

個人的に感じたのは、1990年代やそれ以前ではよく使われたであろうベタなサントラの旋律が、この作品では結構ふんだんに使われていたように思いますし、そのちょっと古くさいともいえる曲調が、逆に最近のサントラと比較すると新鮮に感じられたのかもしれません。意外と最近のサントラは、自分の音楽の引き出しを総ざらいしてバリエションは多様なものがありますが、どうも旋律自体は似たように感じたりするんです。そういった感じのちょうど逆の位相に、けいおん!のサントラはあると思ったのでした。

第150回 中川幸太郎さん
(初出 2009/08/17)

紹介するサントラは、
「ハヤテのごとく!!」2nd season オリジナル・サウンドトラック (ジェネオン・ユニバーサル GNCA-1176)

元となるアニメの第2期用の音楽ですから、制作スタッフが大きく変わっても第1期の音楽を使うのを前提にしているかなぁ…と思ったら、意外と第2期の音楽を作品中で多用しているのが、まずこのサントラの大きな特徴になります。それは、いろんな場面に対応するだけの数の音楽を作っていて、かつベースとなる音楽のバリエーションは変わっていないんですが、当然メロディは異なり、さらに音の数(インタビューの中では演奏者の数)も減っているんです。それだから、あくまで「ハヤテのごとく」の作中音楽だと第2期を見ていなくても第1期を見ていれば誰もが認識してもらえるものに、仕上がっているといっていいでしょう。

この第2期の特徴として大きいのは、金管楽器系の音が前より減り、メロディもシンプルに、鍵盤楽器が多用されたという点だと、中川さん自身がブックレットの中のインタビューでも述べています。また、中川さん自身もピアノ曲が得意ということで、そんな偏り(というより特徴)が出たようでして、それはいろんな映像へ合わせやすい音楽の特徴にかなり合致したものになったといえそうです。

論より証拠、実際サントラが発売されたのが7月下旬で、8月に入る頃にはいくつかのTV番組での利用が確認されたくらいですから、アニメが開始してしばらくしてTV番組の音楽効果などの方々はサントラ発売を待っていた気がしますからねぇ。
いろんなシーンに対応した多くの音楽、メロディのシンプルさ またはメインテーマを中心としたバリエーションの多さ、作品が持つ日常的な場面が中心であること、比較的作曲家が持つ特徴がうまく表現されかつ作品世界と合致する
こと。そういった、汎用性のあるサントラの特徴が、結果としてたくさん要素として入ったことが分かりやすく出ているのが、このサントラだったんじゃないかと思ったのであります。
 
 
 
140 吉森信 141 菊地創 142 菅野祐悟 143 村松健(紅) 144 三宅一徳 145 羽毛田丈史(夏のソラ)
146 菊谷知樹 147 池頼広 148 井内舞子(とある魔術の禁書目録) 149 百石元 150 中川幸太郎 150 羽毛田丈史(青い花)
152 梶浦由記 153 渡辺剛 154 ダブルオーツ(安部純,武藤星児) 155 村松健(うみものがたり) 156 井内舞子(とある科学の超電磁砲) 157 S.E.N.S. Project(勝木ゆかり、深浦昭彦、森英治)
158 蓮実重臣 159 はまたけし 160 大島ミチル 161 中島ノブユキ
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第151回 羽毛田丈史さん
(初出 2009/08/28)

紹介するサントラは、
Sweet (Glory Heaven LASA-5009)

CDやジャケットをかなりじっくり見ないと、これが「青い花」という深夜アニメのサントラであることが分からないくらいのものです。Glory HeavenというレーベルはLantisから出ていますが、これまでよく見てきたLantisから出たアニメのサントラというより羽毛田さんのアルバムといった装いが感じられています。
そういったアルバムの見かけ同様に、たぶん黙って聞かせれば、心地よいインスト曲が並んだ感じのものに仕上がっています。op,ed曲もインストゥルメント(Sweet ver.と表記)で収録されているくらいですし、作者紹介に出ている「魔法使いに大切なこと」のサントラのような、場面を表現するより、場面の周囲に流れていくような楽曲が並んでいるように思えました。

このSweetというサントラはピアノ曲が多用されていて、室内楽っぽい音源が少ない中で、ゆったりとそれぞれの楽曲ごとで物語となる多様なメロディーが作り込まれている感じになっています。羽毛田さんといえば、サントラ絡みだと「魔法使いに大切なこと」でメインだったヨーロッパを感じさせる楽曲をまず思い浮かべそうですが、それとはずいぶん趣が違って感じられるはずです。

「青い花」という作品は、鎌倉あたりが舞台で登場するのは女子高生が多くを占める、ある意味日常的な風景や出来事の中で、登場する娘たちの心情を台詞にして見せていくというものです。そのため、風景や出来事と同様に、場面の中で登場する人たちのいろいろな思いの中に寄り添って、長めの楽曲で場の雰囲気を形成していくための楽曲が必要になるといっていいかと思います。
そうすると、メリハリがあってイメージしやすい場面にあった楽曲よりも、メロディーを際立たせて、でも全体として室内楽的な落ち着いた曲調のもので作られたといえそうです。また、このためメロディーを同じくして、音源などのアレンジを変えた楽曲もそこそこあるのですが、それを感じさせないくらい曲調が違った別の楽曲と思わせることが出来ていたりします。
これまでの羽毛田さんのサントラは、比較的テーマとなる曲調やメインテーマ曲があったりと、透明感があっても輪郭がはっきりしたものが多かったように思うのですが、それとは違った、かなり淡い印象の楽曲になったかなぁ…と、思ったのであります。

第152回 梶浦由記さん
(初出 2009/09/21)

紹介するサントラは、
歴史秘話ヒストリア オリジナル・サウンドトラック (SME RECORDS SECL 778)

TV番組のテーマ曲も含めたフル・サウンドトラックなのですが、アニメサントラの作曲家としての成果として取り扱うべきと思ったので、今回取り上げました。直近の梶浦さんのアニメサントラ作品としてなら、Pandra Heartsなどを掲げるべきなのでしょうけど、比較的よく知っている梶浦ワールドをきちんと作品の持つ世界観との制作側との練り合わせが出来ていて、確かに奥行きのあり聴き応えがあります。だったら取り上げたら、と思うのですが、TVでアニメを見ていてもCDを買っても聴きたいと思えるまでの何かが欠けているんです。

ノワールにせよツバサ・クロニクルにせよ、かなり梶浦さんに音楽を作るための自由度が大きく、実はあんまり制作側も明確な作品世界を説明せず、必要最小限しか資料提示しなかった(または説明しきれないくらい、映像作りも作りながら世界観を広げていくものだった)ように思えるのです。そういう点において、歴史秘話ヒストリアというNHKの歴史番組というどんな素材が来るか分からないもので、掲げたアニメ作品とその点におい類似したことにより、かなり自由度の高いサントラが作られるものだったのではないか、と確信したのでした。実際、歴史秘話ヒストリアのチーフ・プロデューサーも「梶浦ワールド全開でお願いします!(=好きにやっちゃってください!)」と、依頼したとライナーノーツで書いていますから。それは、作品の世界観をひとりの作曲家の音楽で、女性的かつ幻想的なイメージでまとめたいという思いがあったからとのこと。既存曲から描かれるイメージに合わせて選択すると、どうしてもステレオタイプというか、このシーンにはこの音楽というイメージが出来ているといっていいでしょう。それを外して、これまでと違う演出手法で歴史番組と作るとなると、その演出の中核となる音楽も全く新たに作って、それでもきちんと疾走感や、憂い、決意やスペクタクルなどを表現した、一つの楽曲群を作る必要があったということで、それらを過去のアニメサントラとして作り込んでいた梶浦さんに依頼したということのようです。

ジャンルに縛られない多彩な楽器構成と、美しく厚みのある女性ボーカルのハーモニーで、個性鮮やかに描き出している。
番組のチーフ・プロデューサーの渡辺圭さんは、この様に適切に梶浦ワールドの音楽を語っており、この言葉からも全28曲がどのようなものであったかが分かるといってもいいと思います。NHKの番宣で、テーマ曲は聴いたことがある方も多いと思いますが、実際に番組を聴いていただいてその世界観に浸りつつ、新しいスタイルの歴史番組を楽しんでみてはいかがかと思います。また、番組中では既存の楽曲も使われており、その中にかつて作られた梶浦さんのサントラなどが使われることもありますが、それらは全く違和感なく入っていることも、注目すべきことかと思ったりもしました。(同じ作曲家の楽曲でも、世界観がある程度違うと、連続した映像で使われると違和感を感じることも多いことから、そう思いました)

第153回 渡辺剛さん
(初出 2009/10/02)

紹介するサントラは、
咲-Saki- オリジナルサウンドトラック (Glory Heaven LASA-5018)

作品が学園もので部活動を描いたものということで、日常的な雰囲気を演出する楽曲と試合を盛り上げるための楽曲という2つに音楽として表現すべき場面の違いがあります。ただし、部活動といってもスポーツものではなく麻雀であることと、女子がメインの話なので、この2つの演出すべき場面も楽曲としてそんなに大きな違いがなくつくられている感じです。

渡辺剛さんは、以前に苺ましまろを作られた時と同様に、打ち込み系でありながら音源はシンプルでそれほど数を使わず、主旋律はメリハリをつけて作り込んでいて口ずさめる感じのやさしい感じで作られていたりします。それは、日常的な場面の楽曲だけではなく、試合を盛り上げるための場面の楽曲でも同様に作られている点が、このサントラの特徴ではないかと思うのです。麻雀で戦うというより、試合の中で少女たちが舞っているような雰囲気を形成し、優雅に戦っている風に感じられるように作り込まれている感じです。(たぶん、似たような事例は、田中公平さんの機動天使エンジェリックレイヤーがあるかな)

苺ましまろ同様に、メインテーマとなる楽曲はなく、一部アレンジを変えたのものもありますが、比較的楽曲ごとに旋律をきちんと作り込んでいるという感じで仕上がっています。意外と(場面の音楽として)ベタな感じの曲も今回はあったりしますが、メリハリのあるパターン化されたサントラというよりは、柔らかな感じの曲調でバリエーションをそろえて、作り込まれた汎用性のある音楽という感じのものになったのではないかと思います。

第154回 ダブルオーツ(安部純さん、武藤星児さん)
(初出 2009/11/15)

紹介するサントラは、
GA -芸術科アートデザインクラス- music palette
(avex AVCA-29463〜4)

ダブルオーツといえば、曲調は多少ノスタルジーを感じるポップスといった雰囲気で、最近作るものは作曲 安部純さん、編曲 武藤星児さんと明確に役割分担をして作っていて、曲調と作品がマッチングすれば安心して聴けるといった感じかな、と個人的に思っていたりします。

今回のGA-芸術科アートデザインクラス-は、制作側が提示したものからまず1曲を作ってみたとのこと。そのイメージが、制作側が考えていたイメージとぴったりしたもので、かつ他の場面やキャラクターのための楽曲がするすると決まっていったとのこと。とにかくDisc2 track01の楽曲で感じられるイメージから、作品の表現テーマである色をパレットに並べたように紡ぎ出されているという感じです。キャラクターのための曲もかっこ書きで色が当てられているくらいですし。

ただし、作品自体が学園での日常の出来事を描いていくだけに、そんなに目立つ(引き付けられる)楽曲がないので、サントラよりもDisc1にあるキャラクターソングの方が楽曲単独では特徴があってイメージしやすいかもしれません。このため、サントラとしては色という淡いイメージをメインテーマの曲を元として全体でいい感じに仕上がっているという風なのではないか、と思ったのでした。
 
 
140 吉森信 141 菊地創 142 菅野祐悟 143 村松健(紅) 144 三宅一徳 145 羽毛田丈史(夏のソラ)
146 菊谷知樹 147 池頼広 148 井内舞子(とある魔術の禁書目録) 149 百石元 150 中川幸太郎 150 羽毛田丈史(青い花)
152 梶浦由記 153 渡辺剛 154 ダブルオーツ(安部純,武藤星児) 155 村松健(うみものがたり) 156 井内舞子(とある科学の超電磁砲) 157 S.E.N.S. Project(勝木ゆかり、深浦昭彦、森英治)
158 蓮実重臣 159 はまたけし 160 大島ミチル 161 中島ノブユキ
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第155回 村松健さん
(初出 2009/12/12)

紹介するサントラは、

うみものがたり〜あなたがいてくれたコト〜 オリジナルサウンドトラック
(Mellow Head LHCA-9005)

アニメサントラというより、前作のアルバムのテーマを拡張して作ったという方がふさわしい作品といえるかもしれません。村松さんは、2009年に「My Spiritual Home」という、在住している奄美大島の風景をテーマにしたアルバムを出しています。ピアノや三線とストリングスを交えた、懐かしくでも島の光や影をしっかりと浮かび上がらせる楽曲です。
「うみものがたり」というアニメ作品の舞台がその奄美大島でして、制作側が材料を提示する前に作られたこのサントラのメインテーマが、まるで奇跡のように(アニメの)プライベートビデオとして作られたどのシーンにもフィットしていたとのこと。人々の喜びも諍いも、悲しみさえも温かく包み込む空気感が、すでにその音楽の中に存在していたというくらい、のものだったそうです。こういった楽曲は、実際に作品を見るなりサントラを聴くなりして感じてもらうしかなかなか実感としてわきにくい「空気感」なので、サントラを購入して聴いて納得してもらった方が早い気がします。
今回のサントラは、以前紹介した「紅」同様2枚に分かれていて、Light Side track1などの永久の渚(メインテーマ)とShadow side track1などの”でぃだぬひきゃり”(島唄)の旋律が強く印象に残るものになっています。また、同じメロディでアレンジが異なる楽曲が連続した trackに入っていて、それぞれがきちんと聴き応えがあるものになっていることも分かるんじゃないかと思います。逆に言うと、奄美大島の空気感が詰まっているだけに、他の映像への汎用性は薄いかもしれませんが、あえて取りあげさせていただきました。

第156回 井内舞子さん
(初出 2010/02/03)

紹介するサントラは、
「とある科学の超電磁砲」ORIGINAL SOUND TRACK "SPARK!!"
(GENEON UNIVERSAL GNCA-1251)

以前紹介した「とある魔術の禁書目録」のサウンドトラックの曲目が一部入っていまして、作品同様新たに付け加えたという位置づけのものだったりします。でも、実は作品の色づけとしてそこそこの楽曲を新たに作っていまして、これが意外と学園ものっぽい(という意味でベタな)楽曲になっていたりします。また、ノリのよい打ち込み系の楽曲もあるのですがストリングスを使ったりして落ち着いた感じの楽曲も、このサントラでは作られているかな、という印象を持ちました。
さらにいうと、前作である「とある魔術の禁書目録」ではゲーム音楽からの引き出しを結構多く出していたという感じでしたが、「とある科学の超電磁砲」ではむしろメロディの方が前面に出ている印象が強く、落ち着いた感じと相まって汎用性が高い楽曲に仕上がったのではないかと思いました。(Track2 常盤台中学校 やTrack13 大切な友達 など)
それと、危機感を高める打ち込み系の楽曲も、比較的起伏がうまく作れて、前作とは違う緊張感を演出できていたんではないかと、個人的には聴いていて感じたのでした。(そう言う意味では、サントラタイトル通りSPARKしている)

第157回 S.E.N.S. Project(勝木ゆかり、深浦昭彦、森英治)
(初出 2010/02/07)

紹介するサントラは、
君に届け オリジナル・サウンドトラック (VAP VPCG-84901)

TVシリーズのアニメサントラは、透明感のあるきれいな旋律で作られたテーマとなる音楽とそのアレンジで構成できる映画やTV番組の音楽と異なり、比較的短いカットで変わることもあり、場面やキャラクターを表現した音楽をある程度の種類そろえる必要があります。前者のテーマとなる楽曲はS.E.N.S.は得意としていますが、後者のような場面などを表現した音楽はちょっと不得手ということか、森英治さんを加えたS.E.N.S. Projectとしてアニメサントラには取り組んでいるようです。

具体的には、雰囲気とかイメージになる英語のタイトルの曲はS.E.N.S.の勝木ゆかりさんが作曲、場面の具体的な日本語のタイトルの曲は森英治さんが担当しています。こういった役割分けをしていますが、サントラ全体で聞いてみると、S.E.N.S.らしい透明感のある音楽館というかコンセプトから外れることなく作られているという印象があります。そういった一体感のあるサントラとして、S.E.N.S. Projectということをかなりうまく活用しているのではないかと思って聴いたのでした。

第158回 蓮実重臣さん
(初出 2010/03/01)

紹介するサントラは、
「ささめきこと」オリジナルサウンドトラック ささめきおと
(flyingDOG VTCL-60178)

蓮実さんは、(実写映画の音楽を作る仕事では)映像を見てから音楽をつけると言うことには慣れていた、ということのようです。それは、見たイメージに合う音楽を作り上げればいいわけで、そう大外れになることもないわけです。逆に、極端にずれた作曲者の意図を投影した音楽が作りやすいということでもあります。ところが、TVドラマやTVアニメでは、映像が無く設定などの骨格だけで音楽を作らなければなりません。蓮実さんは、この想像力を膨らませるのにずいぶん苦労したと、ライナーノーツとしてコメントしています。そこで、たぶんいくつかのアニメサントラの例を参考としたような気がします。「青い花」とか「ARIA」などの音楽が、私としてはすっと出てきたんですが、それでなんとなく曲調が分かるんじゃないかと思います。

蓮実さんは、登場人物をちょっと突き放して距離を持って音楽を作る、という選択をしたとのこと。音源は少なく、メロディをかなりしっかりと響かせている感じの曲がその多くを占めます。それでも、いろんな音源を使って作ったこともあって、音楽のジャンルとして特徴的なものにはならず、それでいてきれいな旋律は、意外と個別の曲ごとに際立つことなく、全体として「ささめきこと」という作品の中でまとまっている印象を与えています。それは、意外とシーンと一体になると印象が残る音楽であることが多く、「ささめきこと」でなくても使える汎用性を持ち得たかもしれません。

第159回 はまたけしさん
(初出 2010/03/08)

紹介するサントラは、
「こばと。」O.S.T.1 春のうたかた
(FlyingDOG VTCL-60185)

アニメサントラでは、一定のパターンのような感じが楽曲の旋律なりアレンジにあるのですが、そういったテーマ付けをした楽曲と言うより、クラシックの室内楽みたいにテーマ付けした感じの楽曲が並んでいるなぁ…というのが、「こばと。」のサントラを聴いた時の感想だったりします。それくらい、品のいい室内楽のアルバムといっていいくらいのものに仕上がっています。
あと、合唱なんかで使われそうな旋律で、主人公が挿入歌として歌っている楽曲の印象も、アニメを見た人には強いかもしれません。いずれにしても、打ち込み系とは対極のアコースティックな印象が使われている楽器も楽曲の旋律にも感じられるものに仕上がっています。

このサントラ、ブックレットに楽曲一つ一つに楽器と演奏者が記されているという意味でも、特筆すべきものだったりします。それは、クラシックの室内楽のようにどんな楽器を使って演奏されている曲か、というのを味わうというのに便利になっています。クラシックの楽曲などを聞き慣れている人ではなくても、これだけの楽器でこんな場面が浮かび上がる音楽が紡ぎ出されていることが分かる、というのは、実際アニメを見ていない人でも十分サントラをインストアルバムのように楽しめる工夫という風に、私には感じられました。
 
140 吉森信 141 菊地創 142 菅野祐悟 143 村松健(紅) 144 三宅一徳 145 羽毛田丈史(夏のソラ)
146 菊谷知樹 147 池頼広 148 井内舞子(とある魔術の禁書目録) 149 百石元 150 中川幸太郎 150 羽毛田丈史(青い花)
152 梶浦由記 153 渡辺剛 154 ダブルオーツ(安部純,武藤星児) 155 村松健(うみものがたり) 156 井内舞子(とある科学の超電磁砲) 157 S.E.N.S. Project(勝木ゆかり、深浦昭彦、森英治)
158 蓮実重臣 159 はまたけし 160 大島ミチル 161 中島ノブユキ
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第160回 大島ミチルさん
(初出 2010/10/26)

紹介するサントラは、
ソ・ラ・ノ・ヲ・ト オリジナル・サウンドトラック (Aniplex SVWC7681)

たすきにあった紹介文章を多少付け加えて、
大島ミチルが奏でる、優しく切ないギター系オーケストラサウンド
と銘打ってみた表題をあるサイトのカスタマーレビューで書いていたりします。そのレビューに多少加筆したもので紹介はいいかなぁ…なんて思って今回は書きました。

大島ミチルさんといえば壮大なオーケストラの楽曲を思い浮かべますが、今回はギター系の楽器をメインにしてオーケストラや打楽器を組み合わせているとのこと。具体的にはリュートやウクレレ、マンドリンなど東京・パリでそれぞれ録音したものを組み合わせ、はかなく、やさしく、そして切ないサウンドが作られています。
大島さんがタイトルを聞いた時イメージした、茜色に輝く空の風景と自然の中で響く音をイメージしたとのこと。これが、実際の映像を見た時の感想としてある、とても美しい背景とチャーミングなキャラクターと生き方が表現されている ともいっております。これだけ、作品のイメージが作曲家の持ったものと(かなり思い込みっぽいですが)合致した作品というのは、とても幸せな音楽と映像との出逢いだったのではないかと思います。

夢を持っている少女の物語だけど、どこか哀愁がほしい。そういった監督である神戸守さんの持っていた企画段階から漠然と持っていたイメージに、実は大島さんの「シャ・リオン」という楽曲だったそうです。いつか劇中にこんな音楽を使えたらいいなぁと思っていた曲の作曲家に実際に同様のイメージの楽曲を作ってもらえたというのも、またこのサントラの幸せな出逢いだったのかもしれません。(その同様のイメージの楽曲が何かは、実際聞いたら分かると思うのであえて曲名を書きません。)

こういった映像のイメージがかなり具体的になっていて、映像と音楽とのイメージがしっくりと来る楽曲は、意外と汎用性を持っていて、他の映像でも使われるかなぁ…と思ったら、やっぱり使われちゃってるなぁ というのが、その後の感想だったりします。
 

第161回 中島ノブユキさん
(初出 2011/02/14)

紹介するサントラは、
たまゆら オリジナルサウンドトラック (フライングドック VTCL-60234)

たまゆらという作品自体、ARIAのスタッフを集めて作るというのがウリだけあって、音楽もARIAに似た雰囲気のものを期待されていたんじゃないかと思います。ただし、それは同じ作曲家に依頼するのではなく、あくまでも作品のイメージに合った楽曲を作れる作曲家を選択することだったと、このサントラを聴いて納得したのでした。

「旋律は、ドラマよりも目立たない程度にシンプルで、でも一度聴いたら頭の中に回りつづけるくらい印象に残って、聞いたひとがみんな懐かしさを感じて、それとあとかわいい曲、そんな感じでお願いします。」という、佐藤順一監督の無茶なオーダーに、中島ノブユキさんは、個々の曲に必要な色や時間帯や空間の広さといった「大まかな場面のイメージ」を質問したそうです。
そういった形で作られた音楽たちは、ライナーノーツでの紹介にもあるように「多種多様な音楽的造詣に目指したエレガントかつスリリングなアンサンブルを構築」しているといっていいかと思います。

個別の曲は中島ノブユキさんが全曲解説していますので、そちらを参照してもらうとして、長尺の短いアニメ作品でもおおむね1〜2分でしっかりと旋律を響かせた音楽をつくっています。作品中ではもう少し短くなって使われているのですが、それがもったいないくらい、キチンと、でもゆったりとした世界観を奏でているという感じです。また、きっと中島さんのもともと作る音楽と、このアニメ作品との世界観が合っているんじゃないかとも思えたのであります。

あと、興味深いのはTrack20の曲で、もともとはドヴォルザークのピアノソロ曲をヴァイオリン、チェロ、バンドネオン、ギターで編曲したんですが、これがうまい感じで仕上がっているんです。もちろん、Track03のメインテーマもうまくできていると思います。

約60分のOVAで、27曲収録されているのはそこそこかなぁ…と思ったんですが、TVアニメ化が決まったとのこと。そうするとこれだけでは足らないわけで、もっと多くの楽曲が作られるという期待がわき起こるわけで…そんな期待をさせてくれる、いい感じのサントラになっていると思います。
 
 
 
140 吉森信 141 菊地創 142 菅野祐悟 143 村松健(紅) 144 三宅一徳 145 羽毛田丈史(夏のソラ)
146 菊谷知樹 147 池頼広 148 井内舞子(とある魔術の禁書目録) 149 百石元 150 中川幸太郎 150 羽毛田丈史(青い花)
152 梶浦由記 153 渡辺剛 154 ダブルオーツ(安部純,武藤星児) 155 村松健(うみものがたり) 156 井内舞子(とある科学の超電磁砲) 157 S.E.N.S. Project(勝木ゆかり、深浦昭彦、森英治)
158 蓮実重臣 159 はまたけし 160 大島ミチル 161 中島ノブユキ
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