猫さんの保健室


   消化器疾患について
   
ーどんなことを調べているのか

 普段の診察の中で、飼い主さんからの主訴(訴え)として、非常に多いものに、「便がゆるい(下痢をしている)」と「吐く」があります。このような状態の場合で考えられる病気の種類は、実にたくさんあるのですが、それらを確定して行くには、いろいろな手順を踏んで検査していかなければなりません。今回は、このような症状出来た場合に、どのような検査をして、どのような病気を疑っていくのか、少しお話ししたいと思います。

まずは詳しいお話を、、、、

 消化器の症状が出ている場合、家で飼い主さんが見ている間の情報は、とても重要です。どんなことが重要かいくつかあげておくと、、、

・いつから吐く、または下痢(あるいは両方)しているのか?

・1日に何回ぐらい、その症状があるのか、毎日続いているのか、間欠的か?

・食欲はあるのか、食欲があって食べて吐いたりするか、食欲が無くて吐いているのか?

・下痢はどのような便が出ているのか。回数は多いか少ないか、血が混じったりしていないか、かたちがあるのか、かたちがあってもやわらかいのか?

・症状が出た前後で、食事で何か変わったものを食べていないか、あるいは、食事の内容を変えていないか?

・症状が出た前後で、いつもと違う生活になっていないか?(客がきていた、近所で工事をしていた、車に乗せた、など)

・吐いている場合、吐くものの内容物は食事か、液体か、液体なら何色をしているか、何回ぐらい吐いているか?

・ほかの猫との接触はなかったか、あるいは、飼い主さんがほかの猫に触ったりしていなかったか?
・ふだん、食事以外のものをかじったりする癖はないか(紙、毛布、包装のプラスチック、ひもや毛糸や糸など)?
・ワクチンは接種歴があるか?

 これらの情報を、出来るだけ詳しく、獣医さんにお話ししてくださると、診断の助けになりますので、何らかの症状が出てきているのならば、できるだけよく猫さんを見ていてください(メモしてくださるとありがたいです)。

病院でする検査

・まずは糞便検査
 消化奇病が疑われるときに欠かせないのは、糞便の検査です。下痢だけでなく、吐く症状でも糞便からの情報が得られる場合がありますので、これは欠かせません。糞便も直接顕微鏡で見るだけでなく、時には染色したり、特殊な方法で糞便中の虫卵を集める検査をしたりします。

・吐物も一応見せてもらう
 吐物(吐いた内容物)も飼い主さんにはわからなくても、血が混ざっていたりなどの痕跡がある場合もあります。一応見せてもらいましょう。

・レントゲン検査
 嘔吐がある場合は、腹部(場合によっては胸部も)のレントゲン検査が重要な役割を果たすことが多いです。下痢のある場合にも、レントゲンは有力な情報をもたらしてくれることが多いです。

・血液検査

 嘔吐、下痢などの消化器症状の原因が、ときには胃や腸以外の臓器(肝臓、腎臓、膵臓、その他色々)からのものである場合もしばしばあります。それらの臓器による疾患の場合は、血液検査の結果が有力な情報をもたらしてくれることも多いです。また、ウイルス性の胃腸炎の場合は、血液検査で白血球が減るなどの所見も見られますので、それに対してもチェックは必要です。

・その他の特殊な検査

 上記の検査で確定がまだ出来ない不確かな状態である場合は、さらにいろいろな検査を進めていく場合もあります。内視鏡検査は、食道から胃、十二指腸の内部に起こった異常の発見に役立ちます。バリウム検査は、消化管の動きや、腫瘍や異物などによる消化管の閉塞の原因がないかを調べるのに有効です。腹部超音波検査は、消化管以外の問題から起こる原因の探査に非常に有効な情報をもたらしてくれます。これらの検査で確定できない原因がさらにある場合は、試験的な開腹手術によって、原因となる臓器を探査するための処置を行う場合もあります。

異常が見つかった場合の処置は?
 
消化管の異常に対する処置は、見つかった原因によって様々なので、それはいずれ個々の病気の部分でふれることにしますが、その他に大切なのは、嘔吐や下痢の症状が続いている場合、脱水症状がほとんどの患者さんで起こってくるので、それに対する処置も必要であるということです。脱水症状に対しては、軽度であれば皮下補液(皮下に点滴の液を一定量注射する)、重度であるならば血管を確保して点滴を行う必要があります。
嘔吐については、吐くことを止めるというのが大事なのではありますが、吐くという行為自体が、生体が体を防御するために行う反射的な行動であるため、場合によっては吐くことで摂取した中毒物などを排出できる場合もあるので、これは原因をよく見極めた上で、行わなければいけません。下痢については、たとえば寄生虫などでも、居ても虫卵が糞便に出ないなどの場合もあるので、必ず何度でも検便をする必要がありますし、寄生虫が原因であることを除外していくために、まず先に駆虫剤を投与しておくこともあります。

その他大事なこと
 
吐く、下痢などの症状について、以外と「様子を見てしまう」場合がしばしばありがちです。(ご飯抜けば治るだろうとか、猫の場合毛玉が吐く原因だろうと単純に考えがち)しかし、単純な症状でも長引けば脱水で命を脅かすこともありますし、胃腸以外の原因の嘔吐は重症である場合も多いので、出来るだけ症状が出始めたら、早期に動物病院で診察を受けるように心がけてくださいね。

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