猫さんの保健室


  猫の皮膚病-痒い、脱毛にもいろいろある

 猫の皮膚病は、日常よく見られる病気の一つですが、一口に皮膚病といっても原因がいろいろなのは人間と同じで、同じような脱毛でも原因が全く違うことや、治療法が違うこともしばしばあります。うっかり様子を見ると、いつまでも治らないような皮膚病もあるし、ほっとくといつの間にか治ってしまうモノもあります。大してひどくないけどいつもちょっとだけどこかハゲていることもよくあるし、ほっとくとあっという間に全身毛が無くなっているようなこともあります。いつもどこか痒くて掻いていたり舐めている猫さんって言うのも、結構居るんではないかと思います。
 皮膚病については、後々各論にて又いろんな病気をそれぞれお話しする機会を持とうと思いますが、今回は猫さんの日常よく見られる代表的な皮膚病だけささっと紹介させていただきます。また、今回あげた症状のいくつかは、いずれ画像を使って紹介していきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。

よく見られる皮膚の症状

 皮膚病というと、人間では痒い、赤くなる、発疹が出る、等々いろいろですが、猫さんでは毛があるためにわかりにくい症状もあるし、毛があるから逆にわかりやすい症状もいくつかあります。代表的な症状をいくつかあげておきます。

痒い:猫はかゆみに大してかなり過敏な性質なので、かゆみがある場合は、その部分を舐める、掻くなどの方法で執拗にいじくります。

脱毛:痒みなどの不快感によって舐める、掻くなどの動作で患部を侵襲した結果、毛が抜けてしまうという例は、猫では非常によく見られます。また、痒みなどで掻く、舐めるの侵襲がないところが脱毛してくる場合もあります。

発疹:毛があるとわかりにくいかもしれませんが、人間でできるような細かい発疹が皮膚表面にできている場合があります。ただ、猫の場合は痒みを伴っていると、その部分を舐め壊してしまう場合が多いので、少しわかりにくいかもしれません。次にあげる痂皮が伴っている場合は、触るとわかりやすいかもしれません。

痂皮:かさぶたのことですが、、、、皮膚の病変から出る分泌物が乾燥して病変の表面を覆ったときに見られます。どちらかというと、少し時間がたった病変で見られます。

びらん:毛や皮膚の表面が削り取られて、じくじくしている症状です。ただれて分泌物が表面にしみ出てべっとりした感じの表面になっております。

潰瘍:びらんがさらに進んだような状態で、皮膚が薄くえぐり取られたような状態になってきます。

フケ:皮膚表面や毛の間に、小さくかさかさしたフケが浮くことがあります。

触ると脂っぽい:猫さんの毛はかなりサラサラしているのですが、部分的に黒く脂汚れのようなものが毛についている場合があります。皮膚表面にも黒っぽくべっとり付いている場合があります。

皮膚の肥厚:脱毛した部分でないとわかりにくいかもしれませんが、柔らかいはずの猫さんの皮膚が、堅く象の皮膚のようになっていることがあります。

皮膚の変色:是も毛があるとわかりにくいし、猫産は経路によって皮膚表面の色も変わっているのでわかりにくいかもしれませんが、本来の皮膚の色でない色に変化することがあります(皮膚が黒くなる、赤くなるなど。全体的に黄色い場合には「黄疸」である場合がありますが、これは内科的な病気が多いです)。

毛が変色:脱毛した毛や新しく生えてきた毛が、本来の色でなく、変化した色になっていることがあります。

水疱:皮膚表面に水ぶくれ状のモノができることがあります。

毛や皮膚表面に見える虫:皮膚や毛に見られる虫の代表はノミ、シラミですが、居住環境によってはダニの吸血の可能性もあります。疥癬も皮膚に住む寄生虫ですが、皮膚の中に潜り込んでいるし、微細なので普通は肉眼では見えにくいです。

・皮膚のしこり:皮膚表面に堅くなった盛り上がりを見ることがあります。結節とも呼ばれますが、皮膚の炎症で起こるほかにも、腫瘍である場合も少なくありません。

 実際の皮膚病では、これらの症状は単独で出るより、複合して出る場合が多く、また、時間がたつと最初の病変部に刺激が加わることで、複雑に変化し、元々の病変や原因をわかりにくくしたり、治療を難しくする場合もしばしばあります。ですから、もし何か毛や皮膚にいつもと違う状態が見られたらば、できれば「少し様子を見よう」ではなく、早めに動物病院に行って、獣医さんに診察していただくのが、治療を的確にして治りを早くすることと思います。

猫によく見られる皮膚病のいくつか

 ここでは実際によく見られる猫さんの皮膚病をいくつかに分けてあげておきます。あくまで「代表的なモノ」ですので、実際の診断は必ず獣医さんに見てもらうようにしてくださいね。

寄生虫による皮膚病
疥癬症:猫の疥癬虫(またはヒゼンダニ)というダニの寄生によって起こる皮膚病です。感染は猫どおしの接触により、ダニが移行して起こります。激しい痒み、耳、頭部、顔面からの脱毛が特徴的で、時には脱毛は背中、四肢などにも広がります。初期には痂皮、ふけ、皮膚の発赤、脱毛の症状ですが、時間がたつにつれ、皮膚が象皮様に肥厚したり、痒みによって激しく掻くために出血が起こり、さらに細菌が感染して皮膚表面が化膿することもあります。治療には殺ダニ剤を使ったシャンプーと薬浴、ダニに対して効果のある薬剤の投与が必要で、放置しておくといつまでも治らず悪化していく一方となります。
シラミ感染症:シラミが寄生することによって起こる皮膚病ですが、シラミには2種類あり、咬んだり体液を吸うシラミと、毛やふけを栄養としているシラミがあります。どちらも痒みを伴い、ひどくなると掻くことによって脱毛、出血を起こしますが、特に血を吸うタイプのシラミでは、貧血によって瀕死の状態になることもあります(子猫など)。治療は殺虫効果のある薬剤の塗布が有効ですが、毛を丸刈りにしたりするのも効果的です。最近ではフロントラインスプレー(ノミの駆除に使われている薬剤)が結構効果を上げています。
ノミアレルギー性皮膚炎:ノミに寄生された猫に多発する皮膚炎で、猫ノミが給血することによって起こるアレルギー性の皮膚炎です。ノミが活動的な春から夏から秋に多発しますが、冬には軽くなります。アレルギー性の皮膚炎ですので、個体によって症状に違いが若干でます。軽いモノでは痒みを伴うだけですが、中度のものでは背中の後部(尾の付け根あたり)を中心に発疹、脱毛、痂皮が見られます。慢性化すると中度のものの症状の他に皮膚の肥厚、ふけ、びらん、などの症状も現れます。治療にはまずノミの駆除が必須でノミ駆除の薬剤(フロントライン、アドバンテージ、のみとり首輪など)を使って確実に駆除します(余談ですが、ホームセンター等で売っている「ノミよけ首輪」では、十分なのみ駆除効果が発揮されないことがしばしばありますので、確実に駆除するならば必ず獣医さんでのみ駆除剤の処方を受けてください)。痒みの症状にはアレルギーですのでステロイド剤の投与が有効です。

菌の感染による皮膚病
皮膚糸状菌症:糸状菌と呼ばれるいくつかの真菌(つまりカビ)の感染によって起こる皮膚病です。猫だけでなく、犬や人、その他の動物にも感染が起きます。感染動物に間接的、直接的に接触することで感染します。症状は円形に近い形の脱毛と痂皮、紅斑で、周囲との境界が明瞭です。初期では痒みは余りありませんが、2次感染が起こると炎症が強くなり、掻くことにより出血、びらんも起きることがあります。診断は患部の毛や痂皮の培養、特殊な光での観察、顕微鏡での観察を行います。診断された場合はシャンプーや抗真菌薬の塗布、服用を行います。
ざ創(にきび):猫のあごの下に多発しますが、皮膚表面の汚れが、毛穴に進入することにより毛穴に感染を起こし、丘疹を形成し、時には化膿することもあります。顔を洗うのがうまくない猫によく見られるほかにもいろいろな原因があるようですが、治療には患部の洗浄消毒と、抗生物質の服用を行います。

その他いろいろな原因からなる皮膚病
スタッドテイル:猫の尾の付け根にある皮脂腺からの分泌物が、べっとり毛に付着した状態で、汚れなどが付いて分泌腺に感染を起こすと化膿することもあります。若い雄猫、特に去勢していない猫に多発し、発情期には特にひどくなるようです。尻尾の洗浄、抗生物質の投与が有効ですが、ひどくなる場合もしばしばあるようです。
・粟粒性湿疹:猫に多発する皮膚炎ですが、原因ははっきりしないことが多いです(アレルギー性といわれている)。背中を中心に痂皮に覆われた丘疹が多数出現しますが、痒みについては強いものもそれほどでもないものがあるようです。ひどくなる場合にはステロイド剤の投与が有効ですが、以外と完治せずに慢性化する場合が多いようです。
・光線過敏性皮膚炎:外に出る猫さんで多く見られる、耳に起こる皮膚炎です。耳の白い猫、色素の薄い猫に多発する傾向があります。時期的には日差しの強い夏に悪化し、冬には沈静化します。耳に発赤、痂皮、脱毛が見られ、ひどくなると耳が反り返って変形したりします。ひどくなると痛みを起こすこともあり、又、長期化すると皮膚ガンに移行する場合もある、怖い皮膚炎です。発病した猫さんはできるだけ日光に当たることをさけるようにして、出ている症状に対してはステロイド剤の塗布、服用を行います。又、耳が変形してしまったひどい症例では、将来的にガンに移行するのを予防するために、耳の切除手術を行うことが進められます。
・心因性脱毛:猫は元々毛繕いが好きですが、ストレスにさらされることで、過剰なグルーミング、舐める、咬むなどの行為をおこすようになることがあります。あらゆる年齢の猫で発生しますが、かなり長い年月がたってからこのような行動を起こす猫さんもいれば、早い内に発症する猫さんもおります。また、既にストレスが消失しているにもかかわらず、舐める行為が繰り返されることによって、皮膚に刺激を受け、又それが気になって舐めるという悪循環に陥ることもしばしばあります。治療はストレスの除去はもちろんですが、是には場合によっては薬物治療が必要な場合もあります(精神安定剤のようなモノの服用)。又、舐め続ける行為の悪循環を断ち切るために、ステロイド剤で症状の不快感を取り除くことがよく行われます。
・好酸球性肉芽腫&潰瘍:これらは猫のアレルギー様疾患の症状として出てくる場合がありますが、原因についてはよくわかっておりません。好酸球性肉芽腫は太股の内側に発生することが多く、皮膚表面のびらん、、脱毛が見られ、ひどくなると皮膚が隆起して腫瘤状になります。好酸球性潰瘍は、上唇、口腔内によくみられ、紅斑と腫脹が初期の症状ですが、時間が経過すると表面が壊死して潰瘍に変化します。症状がひどく見える割には、痒みなどの症状や痛みが少ない場合が多いようです。治療には基礎疾患がアレルギーである場合はステロイド剤の投与が非常に有効です。
・アレルギー:アレルギーと一口に言っても、実際様々な原因のモノが猫にとってアレルギーになり得るため、今回は細かい説明を割愛しますが、アレルギーというのは基本的にはアレルゲン(刺激となり得るモノ)に対する過敏反応ですので、可能ならば原因を突き止めて、それを除去するのがもっとも確実な治療です。

 以上、比較的よく見られる皮膚病のいくつかをあげましたが、このように文章で述べても、ピンと来ない方が非常に多いと思いますので、近い内には画像をちゃんとアップして、だいたいどういう感じのモノなのかご紹介できればいいなあと思っております。
 いずれにせよ言えるのは、これだけ多くの皮膚病があれば、原因は一様ではなく、治療法も又一様ではないので、決して自分の判断に頼って様子を見るのでなく、できるだけ病変を見つけたら早い内に獣医さんで見ていただくのが、早期治療、早期解決になりますので、心がけてくださいね。

戻る 

保健室トップに戻る