猫さんの保健室


   猫から移る人の病気(人畜共通伝染病)総論

 とっても堅苦しい、耳慣れにくい言葉「人畜共通伝染病」。どんな意味を持つことかと言いますと、定義として「人と脊椎動物の間で、相互に移行し得る感染あるいは感染症、伝染病」とされています。もっとかんたんにいうと、私たち人間と、その回りにいる動物たちの間で、同じ病原体(ウイルス、細菌、寄生虫、原虫など)が起こす感染症を言います。この用語は、主に人側から見て人に害を及ぼす病気を重要視して定義しています。実際、同じ病気の病原体を動物が保有していても、外見上全く病気がわからないこともあったり、動物と人で病気の出方が違うことも多々あります。

 この問題を取り上げると、動物から病気が移る、ということだけがとかく表面化しがちで、動物を飼っている=病気が移る、と、必要以上に心配される方も多く、動物が悪者にされてしまうという本意でない事態も起こることが多いようです。(こういう話がマスコミで取り上げられるときは、主に人のお医者さんからの話だもので、人中心の話となるため、動物側の意見もほとんど採り上げられないし)しかし、心配する前にちょっと考えてみましょう。あなたは実際に動物を飼ったからと行ってヘンな病気になったりしましたか?動物に対して、基本的な扱いがしっかりと理解され、実行されてさえいれば、基本的には人畜共通伝染病というのはきちんと防げるのです。ですから、まずは病気を心配する前に、病気のいろいろについてきちんと理解して、それを防ぐための方法もきちんと理解しましょう。そして、動物を扱うときは基本を忘れないこと。そうすれば、怖い伝染病から動物もあなたも身を守ることがちゃんとできますから、、、。

どんな病気が猫から人に移る?
 人畜共通伝染病は、病原大別に約200種類の病気があげられていますが、猫から移る病気は、以外とそのウチの少数です(日本で発生する病気に限れば、さらに少ない)。ただ、いくつか有名な病気もありますので(トキソプラズマ症がもっとも有名でしょうか)まずは、どんな病気が猫から移る病気なのか、いくつかあげておきます。

細菌から移る病気
・パスツレラ症・猫ひっかき病・カンピロバクター症・連鎖球菌感染症・サルモネラ症・ 

 あげてみたら、意外と少ないです。猫ひっかき病は以前は病原体不明とされていましたが、今では細菌による感染が原因と判明しています。他にも原因となり得る感染症はあるのですが、日本では可能性がきわめて低いか、発生がないので省略します。

真菌から移る病気
 ・皮膚真菌症・クリプトコッカス症

 皮膚真菌症はもっともポピュラーに見られる人畜共通伝染病と思われます。その他の真菌の病気は、猫から伝搬する可能性がきわめて低いか、病原性が非常に低いか、日本にない病気であったりするので、省略します。

ウイルスから移る病気
 ・狂犬病

 日本では現在全く発生がありませんし、主に犬の病気として知られているのですが、ほとんどすべての動物が感染源になり得る恐ろしい病気であり、発生国に置いては、猫からの感染が意外とあるようなので、特別に解説することにします。

原虫から移る病気
 ・トキソプラズマ症・クリプトスポリジウム症・

 有名なトキソプラズマはここにあります。人のエイズで病原性が強いことが知られているクリプトスポリジウムはほとんどの哺乳動物が感染源となり、猫はそのウチの一種なだけで、猫が特別に多いというわけではないです。

寄生虫から移る病気
 ・回虫症・鈎虫症・包虫症(エキノコッカス症)・

 ほとんどの寄生虫症は、じつは何らかの形で人にも猫にも移るのですが、猫から直接移る虫はかなり少ないです。

外部寄生虫から移る病気
 ・ハエ幼虫症・疥癬・ノミ・

 ほとんどの寄生虫症は、何らかの形で人にも猫にも移るのですが、猫から直接移る虫はかなり少ないです

病気を防ぐには、、、
 動物から病気が移る、というのはとかく大騒ぎされがちですが、ワタシ的に考えると、人から人に移る病気の方が、よっぽど怖い病気が多いと思っております。動物のことをきちんと理解して、きちんと飼っていれば、ほとんどの人畜共通伝染病は防げるはず、とも考えています。また、トキソプラズマのように、猫ばかりが悪者扱いされて、実際には猫からの感染がきわめて少ない病気というのもありますので(この先の回で解説しますが、トキソプラズマの実際の感染源は、ほとんど豚肉だったりするのです)、それらの病気についても、正しく理解し、回りに対して啓蒙していくこともまた大切なのではないかと考えます。

 ほとんどの病気は、動物とのつきあい方のちょっとした間違いから起こりえます。・動物をさわった後きちんと手を洗う。・動物の排泄物は正しく処理する。・動物も常に健康診断を定期的に受ける。これだけのことを守るだけで、十分防げる病気がほとんどですので、まずは原点に返って、きちんとした動物とのつきあいをしていきましょう。

 次回は、主な人畜共通伝染病の解説をしていきます。

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