猫さんの保健室


   ワクチンで病気を防ごう

 ワクチンというのは人間でも動物でも、ある種の伝染性の病気に対する抵抗力を付けるモノですが、そのワクチンで予防できる病気は、実際に猫さんが感染すると命に関わるような恐い病気が多いです。ワクチンを打つことでその恐い病気の感染を防いだり、あるいは感染しても軽症で済むようにするのが目的です。                    日本では猫のワクチンは現在4種類の病気について予防効果が得られるようになっています。ワクチンの接種は子猫時代はしっかりした免疫を付けるために約1ヶ月間隔で2回接種し、その後は約1年事に追加接種しておくと、予防効果がしっかりしたモノになります。感染して大変な思いをしないように、恐い病気から猫さんをどうか守って上げるために協力して上げて下さいね。

ワクチンで予防できる病気の種類

 猫パルボウイルス感染症(猫汎白血球減少症、猫伝染性腸炎)

 猫パルボウイルスという病原体が原因で起こる伝染性の胃腸炎です。(犬でパルボウイルス感染症というのがあり、恐い病気ですが、その猫版です)感染力が非常に強く、またウイルスの環境での抵抗性が高い、やっかいな病気です。
 症状は、最初は食欲、元気が無くなり、じっと動かなくなります。また、突然嘔吐や下痢の症状が起こり、病院で検温すると39度以上の高熱が見られます。血液検査をすると、血液中の白血球の数が極端に少なくなっています(正常で6000から15000位の白血球数が、3000以下になり、時には500以下にも成る)。嘔吐や下痢の症状は過酷なモノで、ひどくなると出血したような血便になり、脱水症状で衰弱してきます。死亡率は非常に高く、体力のない子猫では1日の間に命を失ってしまうこともあります。
 感染は、この病気に感染した猫との接触の他、感染した猫の吐物や便、尿で汚染されたモノとの接触でも感染します。また、前述したようにウイルスの抵抗性は非常に強く、消毒は塩素系の消毒薬でないとウイルスは死滅せず、環境中でチリや埃に混じってウイルスが長期生存していることも知られています。

  

 猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス感染症)

 猫のヘルペスウイルスが原因で起こる、猫の風邪の一つです。(猫の風邪は、人間の風邪と同じように、色々な細菌やウイルス、その他病原体が原因になります。ヘルペスウイルスもそのひとつです。)猫の鼻風邪とも言われていますが、実際は鼻だけの症状でなく、風邪で起こり得る全ての色々な症状(咳、くしゃみ、目やに、発熱、食欲不振など)が出てきて重症になりがちで、更に下痢などの胃腸症状も出ることも多く、多くの場合は食欲が減ったり、あるいは食べられなくなるため急激な衰弱や脱水症状が起こり、亡くなってしまうこともあります。

 猫カリシウイルス感染症(猫のインフルエンザ)

 猫のカリシウイルスが原因で起こる猫の風邪の一つで、昔は猫のインフルエンザとも呼ばれたりしていました。上記のヘルペスウイルス感染症と同じ様な症状が出るほかに、口や舌に潰瘍や水泡ができ、痛くて食事が食べられなくなったり、大量のヨダレが出てくることがしばしばあります。また、拗らせて肺炎などの症状も起こすやっかいな病気です。
 

 猫白血病ウイルス感染症

 猫のレトロウイルスが原因で起こる病気です。このウイルスが原因で起こす病気は様々で、いわゆる白血病のような病気(血液の細胞にさまざまな異常を引き起こす病気)の他、リンパ組織に悪性腫瘍を起こしたり(リンパ腫)、骨髄に腫瘍を起こしたり、免疫性の腎臓疾患を起こしたりするほか、他の病気の感染があったときに、免疫力を著しく低下させたりします。この病気に関連した症状が出たときは非常に死亡率が高いといえます。

以上の病気は動物病院で3種混合ワクチン(猫汎白血球減少症、猫伝染性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症)と、猫白血病ワクチンを打ってもらうことで、予防、あるいは発症が軽度で押さえられます。(今年中には、上記の4つが一緒に予防できる4種混合ワクチンが出る予定です)                                  これらの病気はまた、大人よりも抵抗力の弱い子猫でより症状が強く出て、また死亡率も高いものですので、もし子猫をお家に迎えたらば、健康状態が良ければ時期を見てきちんと予防して上げて下さいね。(この中で、猫白血病だけは、事前に抗体検査をしてからの接種をおすすめします)


残念ながらワクチンで予防できない病気

 上記の4つの他にも色々な伝染性の病気があるのですが、その中にもかかったときにやっかいな病気や、発病したら非常に死亡率の高い病気で、ワクチンが残念ながら未だ開発されてないモノがあります。その代表的な病気2種を紹介しておきます。

 猫免疫不全ウイルス感染症(猫のエイズウイルス感染症)

 猫のエイズウイルス(レトロウイルスの一種です)が原因で起こる病気ですが、人のエイズとはまた異なる病気です。(人のエイズが猫に移ることもなく、猫のエイズが人に移ることもない)猫エイズウイルスの感染猫との接触で感染し(喧嘩などの咬傷からの感染がもっとも多いと思われています)この病気が発症した場合は免疫不全を起こし、猫エイズとなりますが、その他、いろんな病気の感染に際して、免疫力を低下させて病気の治癒を送らせたり悪化させることもあります。ウイルスに感染していても発症していない猫も多く見られ、これらは無症状キャリアと呼ばれます。

 猫伝染性腹膜炎

 猫のコロナウイルスが原因で起こる病気ですが、このコロナウイルスにはいくつかの種類があり、伝染性腹膜炎を起こすコロナウイルスと、腸炎を起こすコロナウイルスに分けられるようです。ウイルス自体の感染力は弱いようですが(外界でのウイルスの抵抗性は非常に弱い)、実際にはコロナウイルスの感染は多くの猫で見られているようです(不顕性感染といいます)。その中で、伝染性腹膜炎を発症するものは更にわずかなようです(或データに寄れば、感染猫の5%くらいらしい)。ただし、何らかの症状が見られたときは、現在の獣医学では治癒は非常に難しい病気です(発症した場合の死亡率は限りなく100%に近い)。                                     発病初期には食欲が減ったり、何となく痩せてきたり、検温すると発熱(平熱は38度台ですが、39度以上の慢性の発熱が見られる)があります。症状が進んでくると、腹水や胸水がたまったり、神経症状(歩行困難、頭を傾げる)目の症状(目が濁ったように見える、結膜炎など)などがみられたり、あるいは臓器が冒され腫瘍のような症状も見られます。

 これらの病気はワクチンなどの予防方法がないため(伝染性腹膜炎はアメリカではワクチンがあるようなのですが、効果は確実ではないようです)、病気を回避するには、感染の恐れがある他の猫の接触に注意し、室内で育てるのがもっとも確実と思われます。また、血液検査で感染の有無はわかりますので、心配な場合は一度動物病院で検査を受けると良いでしょう。

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