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 10/08/02 作成

冬眠明けの(臨)田子倉 初乗車の旅 Vol.4

  読者の皆さんへ3回に渡りレポートしてきた冬眠明けの(臨)田子倉駅と赤岩駅の旅もよう。駅の訪問だけではなく、周辺の探索など
 もこなし、とても刺激的な日々を過ごした。しかし日程の制約もあり、明日は広島の自宅へ帰らなくてはならない。こうして空腹に打ちひ
 しがれた旅人を抱えながら、米坂線の快速「べにばな」のキハ110系は闇夜を疾走。往年の名車・キハ52系は昨年(2009年3月14日)、
 新型気動車へ置き換えられたのも時代の流れ。腹に響き渡るエンジン音、ガツンと繋がる変直ショック、窓の隙間から微かな紫煙の
 薫り…すっかり過去の遺物になってしまったのは残念だが仕方あるまい。
 坂町からは線路条件の良い羽越本線、新発田から白新線を力走し、定刻の21:19新潟駅へ到着した。駅併設のコンビニで食糧(酒など)
 の買い出しに留まらず、店じまい寸前の駅弁屋さんを呼び止め、「かれいの押し寿司(1,050円)を購入。脂の載った“えんがわ”の寿司
 には葉わさびが効き、菊水のワンカップとともに鼻から突き抜ける、絶妙なハーモニーを奏でるのであった。

 旅のフィナーレに相応しい列車は?やはり私はあくまでも“昭和”を追いかけたい。しかも私と生まれが同年の昭和42年、月光型として
 鮮烈なデビューを飾った583系。世界初の本格的な“電車寝台”として、昼夜を問わず休むことなく長距離を走り続けてきた鉄道車両界
 の苦労人といえよう。色彩こそJR西日本カラーに変更されているが、往年の雰囲気をそのまま残した奇蹟の列車、急行「きたぐに」へ
 これから乗車するのだ。今までこの列車には幾度か乗車したが、経済的な理由のため自由席しか利用したことが無い。そう、寝台乗車
 はしがない鉄道ファンのささやかな夢であった。かなり古い車両なので、廃止されてしまったら2度と乗れない。そう、少年時代に体験
 した“あの感覚”を思い出すためにも!


 

    快速「べにばな」 キハ110系 @羽前椿       新潟駅でゲットした「かれいの押し寿司(1,050円)」 葉わさびがアクセントの美味な寿司!      急行「きたぐに」B寝台 この場所は何処!?                 

 私の少年時代、583系は憧れの車両だった。183系や485系のように昼間に走る車両は珍しくも無いが、基本的に夜行寝台電車として
 運行されるため、夜遊び厳禁の小学生にとって目にする機会は稀だった。当時、中央線の西八王子駅近くに住んでいた私は、この形式
 で運転される「はつかり」「みちのく」のほか、一往復だけ存在した「ひばり」を撮影するため上野駅へ足しげく通った。結局、同形式の
 昼行特急には乗れなかったが、小学4年生のとき、北海道旅行の往きに常磐線経由の「ゆうづる1号」へ夜行寝台特急として乗車する
 機会を得た。出発前までの連日に渡り夢にまで見た大旅行を叶えてもらったにも関わらず、窓の外が気になるため、母親を狭い中段へ
 追いやり、下段を占領するという“大うつけ”ぶりを発揮してしまうのであった。興奮のあまり仙台あたりまで一睡もできず、モーターのない
 クハネ583の防音性と、50トン近くに及ぶ車体が生み出す重厚感たっぷりの走りに心底感激したものだ。
 
※ちなみにこの先は青函連絡船・大雪丸へ乗り継ぎ、特急・おおとりへ。復路は急行・ニセコから八甲田丸、そして臨時の14系客車急行・十和田51号でした。 

 
   
急行「きたぐに」 何と言ってもカッコいい!!    LEDには無い味わい深い方向幕と、差し込みサボ    通路を挟んだプルマン型3段式寝台は狭い      この場所は何とも広い別天地! 

 こうして今、列車の先頭に立つ。“佐渡おけさ”の絵入りヘッドマークはご愛嬌だが、オリジナルは高級感あふれる“金縁の切り抜き文
 字”だったとしみじみ回想。入線から発車まで30分ほどあり、ゆっくり出来るので得した気分。しかし、現代の水準では開放型の3段
 寝台はさすがに狭い。特に閉所恐怖症の人にとっては拷問的な狭さであるが、私の乗車した場所は1編成にたった6か所しかない
 スペシャルエリア!通称「パン下中段」である。秘密の場所は、パンタグラフの下に位置する8号車の1・2・11・12・13・14番の中段は
 屋根が低いため、ここだけ上段の無い2段式寝台になっている。いわばマニアが狙う穴場の寝台だ。ちなみに寝台料金は下段が6,3
 00円、中・上段は5,250円(いずれも運賃・急行料金は別)で、この“パン下中段”も当然安い方の料金に属する。けれども天地方向は
 下段はおろか、A寝台の上段(9,540円)さえも上回り、着替えも余裕で出来る広大なスペースを手にすることが出来るのだ。
 
 このお得なパン下中段にも唯一ウィークポイントがある。それは“シューシュー”とパンタグラフが架線を摺る音。気になる人は寝付け
 ないこともあるだろう。しかし、2つあるパンタグラフのうち基本的に1つしか上げないため、上げていないパンタグラフの真下はまさに
 極楽空間!何と今回私の寝台が大当たりであった。また車端で揺れるかと思いきや、重量があるためか大きく振られることも無く、
 至極快適。長岡あたりまで起きてはいたが、さすがに睡魔には勝てず、少年時代の回想劇も志半ばで力尽きてしまうのであった。
 

   
  
小窓は外気温との寒暖差ですぐに結露する。駅弁のお手拭きを常備しよう!  新大阪でお別れ…。
 
 車内アナウンスで気が付いた。まもなく大津に着き、定刻通りと伝えるが何とも名残惜しい。遅れを肯定化してはいけないが、そんな
 に急がなくても…という気分になる。しかし、列車ダイヤ過密路線で朝のラッシュ時に他の列車へ迷惑を掛ける訳にはいかない。そそ
 くさと荷物の片付けと洗面などを済ませ、行き交う人もまばらな新大阪駅へ降り立った。東京よりも朝が遅いのか?ゆったりとした気分
 でさっきまで乗っていた急行「きたぐに」を見送る。せめてあともう一回乗るから引退するなよー、と心の中でつぶやきながら、新幹線
 ホームへ歩き出した。
                                                                (おわり)

                                   
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