2016/01/30 作成

私の液燃ストーブ遍歴


   はじめに

    唐突だが、20年ぶりぐらいに液燃ストーブを新調した。日本のメーカーである新富士バーナー(SOTO)のMUKA SOD-371という、本体/タンク分離式のストーブだ。
   実際には2011年頃に発売されていたようだ。だが、どうも初モノ、いや新しいモノには正直なところ抵抗があった。面倒でも“味”というか、“旅の相棒”というか、いわ
   ゆる情が移っていたのかも知れない。

   ちなみにキャンプ用のコンロのことを大義でストーブと呼ぶ。念のため、焜炉(コンロ)は日本語だから。もうひとつ、液体燃料とはここではガソリンや灯油といったモノ
   を指す。液燃ストーブとは、これら液体燃料を使用する燃焼器具のことである。他にジェット燃料(成分はほとんど灯油)や軽油(臭いしベタ付くんだこれがw)、燃料用
   菜種油などマイナーな燃料は、これから紹介するストーブにとって何のメリットもないので除外する。予め断わっておくが、ガスはもちろん気体だ。けれども、市販され
   ているガス缶を振ってみると解るが、液化ブタンを主成分とするため、厳密には液体である。しかし、大気中へ出る時には気体になるため、これも除外する。

   さて、こんな面倒臭い(私もか?)ストーブなんて話になるか、圧倒的にガス式が良いに決まっている!という声が聞こえてきそうだ。軽いし、臭くないし、調整が効く、
   さらに言うと安全だ(そこが面白くないのだがw)。確かに8割方は事実であろう。しかし、ガス式には大きな欠点が5つある。@低温に弱い(寒冷地タイプでも雪中では
   役立たず)。A僻地では入手できない。B航空機に乗せられない(液燃は燃料さえ抜けばOK)。COD缶(登山用)は高価。D使用後はゴミになる※CB缶(一般用のカ
   ートリッジ)からアダプターを介した注入では、半分程度しか入らず非現実的。

   そんな私でも、最初はガス式を使っていた。30年以上前の当時、キャンピングガス(フランス製)でCV-250という製品だったが、あまりにも火力が弱くて使いモノになら
   なかった。後にイワタニプリムスの名器2243を使い(現在も所有)、強火力とイグナイター付きでしばらくは満足だったが、やはり林道メインのツーリングではガス缶の
   入手に苦労したため、レギュラーガソリンが使える液燃ストーブを導入することにした。その時、アメリカ製のコールマンのPEAK1、スエーデン製のオプティマス・スベア
   123や弁当箱のような8Rを検討したが、何を血迷ったのか今となっては思い出せないが、米軍用のストーブ(GI)を導入してしまったのである。

   それはともかく、元よりライダーだった私は、ガソリン式が決定的に向いていた。タンクの燃料ホースを付け替え、コックを捻って失敬(自分のだ!)したり、キャブレター
   のドレンボルトを緩めたりして、いつでも給油することが出来た。逆に一度だけ東北道の矢板IC付近でガス欠(リザーブを戻し忘れたw)を起こし、GIストーブの中にあっ
   たガソリンをバイクのタンクに戻して脱出した経験がある。※その姿を見て止まった公団パトロール車も、エンジンが掛かるやいなや退散して行った(笑)

   しかしながら、今まで愛用して来た、SMP-GI、ホエーブス625と725、そしてMSRのXGK2シェイカージェット。度重なる酷使で、どいつもこいつも満身創痍な状況だった。
   高価なホワイトガソリンなど試しに1Lぐらいほど使ったぐらいで、あとは一貫してレギュラーガソリンか、使えるモノは灯油で賄ってきた。林道を飛ばし、バイクに載せた
   荷物の中で押され屁されで、目を覆うほどの惨状。おまけに炎上事故で蹴っ飛ばしたこともあり、見るも無残な姿を晒している。それでも現役で使えるタフな物もある
   が、どうにも成らなくなって部屋のオブジェと化した物もある。

   今回の買い換えのきっかけは、冬の東北で秘湯(野湯)めぐりをしていた時、愛用のXGKのポンプが破損したことに因む。プラスチックの華奢な造りは、当初からの懸
   念を見事に再現して見せた。ポンプのピストン用シャフトがポッキリと折れたのだ。幸い頭の部分だったので何とか修復出来たが、同時にストーブへの燃料パイプ接続
   部のOリングが劣化して、ポンピングで圧力を掛けた段階から燃料がダダ漏れ… これは危険極まりない。後日、ホームセンターで補修用Oリングを購入して復活を遂
   げたが、そろそろ引退させてあげようという心も働いた。

   そんな経緯もあって、今回は私が使ってきたストーブ(くどいがガスではなく、液体燃料のストーブ)の話題を提供したいという思いに至ったのである。

   @SMP-GI  アメリカ製

   燃料:レギュラーガソリン(ホワイトガソリン推奨だが、初期に1L程度しか使っていない)
   性能:水1L沸騰レース 7〜8分程度 (と記憶している…)
   
   特徴:大きな五徳と広がる足が安定感抜群。強火力だが調整はまったく効かない。シューシューと煩いが当時はそんなモノかと納得していた。
   使用期間:1987〜1997年頃まで
   
   購入動機:高校時代に登山部に在籍していて、マナスル(灯油ストーブ)と共に馴染みがあり、操作方法を知っていた。1.5万円ぐらいで新品購入。

   コメント:ノズル詰まり多発、幾度も炎上。髪の毛を焼いた事も数知れず。しかも、テント内で突然炎上し、火事寸前のところをライティングウエアーを覆って消火して、
        背中に丸いコゲ痕が付く。最初からまともに起動する方が珍しく、毎回のようにノズル清掃が必須の儀式になった。タンクの錆びによる影響だろうか。
        あまりにも手が掛かり、まともに食事が作れない日々が続く。とどめは、バーナーシャフトとタンクの付け根から、燃料ダダ漏れして強制退場!

        

                  若かりし頃、旅の相棒だったこいつには随分泣かされた。  それでも忘れられないひとつ一つの思い出が詰まっている。  20年ぐらい前に引退し、部屋のオブジェと化している。



   Aホエーブス725  オーストリア製 (通称:小ブス)

   燃料:レギュラーガソリン(ホワイトガソリン推奨だが使用したことはない)
   
   性能:水1L沸騰レース 7分25秒 (2016.1.30測定)
   
   特徴:ポンプレスで燃焼による自然加圧式。強火力だが調整は苦手。耐風性も良い。ローラーバーナーは相当に煩い。言うなればジェット機のような
      ゴーゴー音にブーンというプロペラ機みたいな音が混じる。静かな山中では却って頼もしい。
   
   使用期間:1995年頃〜現役 
   
   購入動機:度重なるGIの故障に代替えを決意。中古品屋にて発見し、数千円ほどで激安購入。

   コメント:ノズル詰まり知らずで、現在まで絶大な信頼をおいている。調子に乗って連続使用を続けると安全弁から火を噴く。※最初は相当ビビった
        スタート前にタンクの窪みにメタ(固形燃料)かアルコールでプレヒートするが、時間が掛かるため面倒。タンク容量が小さいため、補給が頻繁。
        タンク本体が熱を持つせいか、安全弁兼給油口のパッキン寿命が短い。部品が無い(入手しずらい)ため、現在は予備機の扱い。
         

        

                     嵩張るのが難点だが、故障知らず。却ってポンプがあるからこそ壊れると認識させた逸品。  太いが不安定な五徳は今一つ。   味わい深い缶だが、いつもパッキングに悩まされ、出番は少ない



   BMSR XGKU シェイカージェット  アメリカ製


   燃料:レギュラーガソリン/灯油/軽油ほか(レギュラーガソリンと灯油しか使用したことはない) 
      本来、燃料切り替えでノズルも替える必要がある。が、ガソリンノズルを紛失… だが、実態は灯油ノズルでガソリンを使っても問題は起きない。
   
   性能:水1L沸騰レース 8分30秒 (2016.1.30測定)
   
   特徴:ジェット機みたいなシューシュー音にガラガラ蛇のようなシュタタタタといった連続音が混じり迫力こそあるが、火力は大したことはない。
      火力調整は苦手だが飯炊きは何とかなるレベル。耐風性は抜群!
   
   使用期間:1997年頃〜現役 ただし、度重なるポンプ破損のためオブジェ化の予定
   
   購入動機:タンク別体式ゆえ、バイクの予備燃料代わりに最適と判断。巷ではウィスパーライトが流行っていたが、ハードな使用状況を勘案しこちらに決定。
         新品で2万円以上した…

   コメント:使用前に振る(シェイカーという名の由縁)だけでノズル詰まり知らず。あらゆる燃料が使え、燃料ホース中のワイヤーをしごくだけで徹底的にクリー
        ニング出来る。この単純さは、まさにエクスペディション機に相応しい。その反面、不完全燃焼ぎみで煤は盛大に出る。コッフェルの底も真っ黒に…
        本体は良いが、情けないのが華奢なプラ製のポンプ。ちょっと落下で簡単に破損。おまけに経年劣化でポンピング中にシャフトが折損。こんなポンプ
        Assyが数千円以上もする!長年に渡って騙しだまし使って来たが、高性能機の導入にて2016年1月を持って引退決定!

        

                  燃料ホースは金属の棒状で柔軟性こそ全くないが、折れたことはない。   荷物のパッキングが悪いのか、使い方が荒いのか、満身創痍である。   ポンプはまさにプラモデル級のもろさ。補修も限界だ…



   Cホエーブス625  オーストリア製 (通称:大ブス)

   燃料:灯油/レギュラーガソリン(ホワイトガソリン推奨だが使用したことはなく、灯油用ノズルしか装着されていないため、灯油専用機になっている)
   
   性能:水1L沸騰レース 9分05秒 ※灯油のためか? (2016.1.30測定)
   
   特徴:灯油なのに奇跡の青火!火力こそ大したことは無いが、調整はかなり効く。サイレントバーナーは非常に静か。未だに実生活で使われている国もあるとか。
   
   使用期間:2012年〜現役 
   
   購入動機:単なる趣味的な欲求で購入。ネットオークションで中古のリペイントモデルを1万数千円ほど

   コメント:スタート前にタンクの窪みにメタ(固形燃料)かアルコールでプレヒートするが、時間が掛かるため面倒。スタート以後、燃料が空になるまで抜群の安定感。
          重く大きく嵩張るので、自宅の庭で使うか、クルマで出るとき以外は使用しない。昔の人はこんなモノを背負って登山していたとは恐れ入る。大きな故障は
          ないが、ポンプのOリングを何処かで紛失。知らずに組み付けて缶の中を灯油でびっちゃり浸した経験あり(笑)
   

        

大きくて重いが家庭用品級の安定感。  慣れれば機嫌を伺うことなく、安定した点火が可能。  灯油使用でランニングコストは最強。   近年モノなので缶も真新しい。



    DSOTO MUKA SOD-371  日本製

   燃料:レギュラーガソリン/ホワイトガソリン
   
   性能:水1L沸騰レース 5分10秒 (2016.1.30測定)
   
   特徴:プレヒートはスタート時の10秒だけ。驚異の4000kcal!怒涛の強火力で他のストーブを圧倒!調整は効くが、最小でもちと強いか?レギュラー使用でもキレイ
   な青火で、ほとんど煤が出ない。シューシュー言うが、まあまあ静か。使用後に燃料追い出しのパージ機能(Air)があり、ホースから燃料が垂れてこないことは特筆
   に値する。MSRで不満だったプラモデルのようなポンプが金属を多用したヘビーデューティー仕様となり、デザイン的にも機能的にも満足度は高い。

   使用期間:2016〜現役 
   
   購入動機:XGK2が寿命のため、メインストーブの後継機として購入。ネットオークションで新品(ボトル込み)が1万3500円だった。

   コメント:当初、MSRのドラゴンフライを導入する予定でいた。だが、火力調整こそ得意だが、ポンプも然り華奢な作りに不安を感じていた。本体側もバーナー部の
        溶接が破損して使えなくなったモノも多いらしい。そんな中で、ベストチョイスへ導いたのがこのストーブ。広口ボトルは給油がラク。まだ試運転段階だが、さ
        すがの強火力に惚れた(ただし、燃費は悪い)。五徳が滑りやすいか少しばかり不安。耐風性に難あり(付属のウィンドシールドは使いたくない)。使用燃料
        15L毎にジェネレーターの交換が必要?という噂だが、先々の評価を待たれよ。
    

        

                          正にいぶし銀の雰囲気を醸し出す。  金属シャフトのポンプは安心感も抜群!   極めてシンプルな造りは信頼性も抜群。  見事なコンパクトさだが、耐久性は如何に?


   おわりに
   
   他には過去、SIGG ファイヤージェット(スイス製)を所有したこともある。アウトドアショップで在庫処分品が6,500円程度だったので衝動買い(笑)。だが、点火の難
   しさと、安定性の無さに苦慮した。おまけに火力も弱小であった。正直、マニア気質なストーブで、GIの苦労が想起されて、早々に手放すことを決意。コンパクトにな
   るのが最大の利点だったが、やはり現場で使いにくいことは最大のネックだ。ネットオークションで出品したところ、8,500円程度に高騰して終了。次なるオーナーの
   手に渡っていった。

   今後、液燃ストーブがどのような形で進化を遂げて行くのか楽しみだが、あまりに手軽過ぎるのも詰まらない。そもそも不便さを楽しむ精神こそが、アウトドアの
   真髄なのだから。