01/05/31 作成 07/07/21 加筆修正
竜ヶ水駅

日豊本線 “竜ヶ水駅” 海岸線まで張り出した急斜面の山塊からは、過去に大規模な土石流が発生した…

駅舎は白いコンクリート製の吹き抜けタイプで、ちょっと殺風景な感じ 内部にはプラベンチが4脚あるが、利用者が少ないせいか砂埃で汚れていた

駅を埋めた大規模な土石流が発生した現場は、現在ではしっかりとした砂防壁で固められている 正面には錦江湾を挟んで雄大な桜島を望む
訪問日記 2001年5月10日 訪問
さて、この“竜ヶ水駅”と聞いて、何か思い出せないであろうか? それは平成5年8月6日鹿児島県下を襲った記録的な豪雨は、甲突川の氾濫によって鹿児島市中を水没
させるほどの大規模なものになった。 他にも各地で崖崩れや土石流による災害が相次いで発生し、交通機関もこの日豊本線を含めて多くの道路網も寸断されるという大きな
被害が出た。 そして、この駅も例外ではなく、駅の裏山から発生した土石流は錦江湾へ達するほどの大規模なもので、周囲にある数軒の人家とともにこの駅もろとも大量の
土砂に埋まってしまったのである。 そこには豪雨によって駅で足止めされていた上下2本の列車が停車していたが、そのうちの3両がその直撃を受けて大破してしまった。
このような状況の中、乗務員による咄嗟の機転によって乗客は安全な場所へ誘導され、そこから避難した320人にも及ぶ乗客は、土砂崩落寸前に脱出したため全員が
無事であった。 これは、奇跡と言っても良いのだが、普段から乗客を守るために安全意識が非常に高かったことの現れであり、鉄道員としての誇り高き誉れであると思う。
そして、この日豊本線の1日も早い復旧を願い、昼夜を問わず関係者の尽力によって44日振りの9月15日に再開を果たしている。
今回、私は南九州を中心に秘境駅訪問を目的として旅をしていたのだが、この駅は普通列車でも停車する列車が半分以下であり、急な崖の下にあるために集落が形成
されていないという立地条件に興味がそそられ、降りてみることにした。 そこは県庁所在地駅の隣にある駅でも関わらず、駅の周囲に人家は7〜8軒軒ほどしか見えない。
しかし、並行する国道はなんと片側2車線で交通量も非常に多く、駅の真下にはガソリンスタンドもあって秘境という雰囲気には程遠い。では何故にここで紹介するのか?
という貴兄もいるであろうが、駅として前途の理由により、利用者は非常に少ないことから敢えて取り上げることにした。
こうして、吉松駅から乗車してきた肥薩線を隼人駅から日豊本線へと乗り換えて、波静かな錦江湾に聳え立つ雄大な桜島を眺めながらこの駅へ降り立った。 乗ってきた
列車には私以外誰も乗降せず、列車が行ってしまうと私だけ一人がポツンと残されてしまった。 昼下がりの強い日差しは容赦無く私を照り付け、あちこち撮影しながら歩き
回る私の体力を確実に奪っていく。 そして、あの災害から8年近く経ってこの地へ降り立った私は、その現場を目の当たりにすることになるのだが、現在では強固な砂防壁に
よって見事に固められた姿に驚嘆しつつも、当時の姿のまま土石流の爪あとが生々しく残る廃家にも目が移ってしまうのであった。
この駅の災害復旧記念碑なども眺めつつ、雄大な桜島の姿を存分に満喫していると、ほんの30分ほどで列車はやってきた。 やはり誰も降りず、私だけが一人乗り込むだけ
であった。 475系の元急行型電車はローカルな味を残しつつ、大規模な災害から見事立ち直ったこの山と海に挟まれた駅を後にして行ったのである。