04/06/18 作成 07/07/20 加筆修正
大張野駅
最終列車が去って行った後、誰も居ないホームに深々と雪が降り積もる…
元有蓋貨車の簡素な駅舎だが、それなりに見せようと苦心の跡が 一夜が明けた早朝、真綿のような大雪が辺り一面を覆い尽くした
訪問日記 2004年3月4日〜5日 駅寝訪問
この“大張野”という駅は、県庁所在地のある奥羽本線の秋田駅から僅か3駅目のところに存在している。 同区間は新幹線「こまち号」が走る秋田新幹線と併用されており、
今日における首都圏との重要な連絡ルートにもなっている。 しかし、この駅の周辺環境は私の想像を遥かに越えていた。 大抵の場合、県庁所在地にもなる大きな都市から
わずか3駅しか離れていない駅というものは、その市内へと向かう通勤通学のためのベッドタウンとしてそれ相当の街が形成され、数多くの利用者が見込める環境であること
が多いからだ。 ところがこの駅の周囲には、鉄道防風林と思われる薄暗い林と僅かな平地が望めるだけで、全くの大自然に囲まれており、およそ人家と呼べるものは駅前に
商店が1軒、少し離れたところに3軒ほどがようやく確認できるだけという状況であった。 今まで数多くの秘境駅を訪問調査して来た私にとって、それはカルチャーショック的な
出来事であり、この日本にはこうした隠されたような秘境駅がまだまだ存在していることに、その驚きを止めることが出来なかった。
今回、私の秘境駅訪問旅は今まで比較的数多くの旅をしてきた東北地方において、新たな秘境駅を発掘すべく自宅のある広島県から青春18きっぷを使い、その行程上にある
様々な駅を訪問しながら旅の歩みを進めていた。 人影も疎らな新庄発の最終列車に乗り込み、真っ暗な雪深い山中を延々と走り続け、日も変る寸前となる23:57にようやく
この駅に到着した。
ワンマン運転であるため持っていた青春18きっぷを運転士に掲示してからホームへと降り立つ際、その運転士氏は作り笑いを浮かべながら何やら訝しげな目付きでホームの
待合室へと歩みを進める私を見送るのであった。 まあ、こんな夜中に冬山登山者風の格好をした男が、普段誰も利用しない時間に独り下車して行くのだから、これを不審に
思わない方が自然ではない。
今夜の宿となる待合室はアルミサッシでぴったりと締め切りが可能で、寝床となる造り付けの長いすも完備しているその充実した快適設備?に、すっかり安心したのか、急に
空腹が込み上げてきた。 新庄駅で仕入れた弁当を僅か5分程で食し、ワンカップの日本酒を煽るとようやく人心地が付いた感じになった。 そしてエネルギーを充電し終わる
とその体は、半ば条件反射的に動き出すかの如く、カメラと三脚を担ぐと大雪降りしきるホームへと飛び出した。
真夜中の静寂感! ぼんやりとした明かりに照らされたホーム! 実に素晴らしい! こうして当時の模様を書いていると、その奇行に対して反省するべきものは多分にあるが、
ここは本能に任せて行動する喜びを味わうことこそが秘境駅訪問旅の醍醐味といえる。 そして、翌日の一番列車への“待ち人”として、読者を含め鉄道会社(JR東日本)にも、
ここで寛容な御計らいをお願いしたい所存である(謝)。
翌朝まで延々と降り続いた雪は、周囲の風景を更に白い厚化粧へと変えて行く。 そして翌朝5時半頃に起き出した私はその跡形を一切残さずに撤収し、予定通り一番列車へ
と乗り込んだ。 そこに見えたのは、あれから3ヶ月が経った今でも変ることの無い、秋田市へと向かう通勤通学の乗客の顔ぶれであろう。