2009/1/26 作成

紋穂内駅



眩い雪原のなか、通りの行き止まりに貨車駅が佇んでいた。

  

懸命な除雪作業でも、僅かな時間しか持たない虚しさ。    ようやく暖かい日が差してきた。   駅名標の文字は、何か“ぽつん”とつぶやいているようだ。


    訪問日記   2009年1月18日 訪問

  宗谷本線を旭川から乗って100kmあまり、手前の初野駅付近で水田は見納めになる。以北は畑作か酪農地帯となるため、期せずして最北の地に来たと実感するだろう。
 そして雄大な天塩川を見ながら、紋穂内という小さな駅に着く。待合室になっている貨車の表側に出ると、廃墟になった倉庫だけが目に飛び込んで来る。一体ここはどうい
 う所なのか?駅前で行き止まりになった道路をしばらく進むと人家が2軒だけあった。しかし、集落は天塩川の対岸にあるため、閑散としている。駅の構造は単純な1面1線
 のホームと同線に多い元車掌車が待合室として据えられている。ここもまた、他の貨車駅と同様に外板の痛みが激しい。まるでパッチワークのようにひび割れた姿に、思
 わず芸術的な美しさを感じてしまう。内部には自転車が2台、駅の利用者かどうか判らないが、雪の上を走った形跡がないため、このまま室内へ放置されているのかも知れ
 ない。

 ここには正確に言うと再訪となる。1986年(昭和61年)6月某日、19歳の若かりし日にオートバイで立ち寄ったことがあった。「もんぽない…」この何か力が抜けそうな名前
 に、幼き頃、時刻表で眺めていた時の駅名が蘇り、吸い寄せられるように駅前にやって来た。当時は駅前に数軒の人家があり、商店もあったように記憶している。このとき
 既に、貨車が待合室になっていたので、既に23年を越えて建っていることになる。どうりで風格が備わっている訳だ。
 
 今回は列車での訪問である。前夜を天塩川温泉(住民保養センター)に投宿した。食べ切れない程ボリュームのある夕食、シティホテル並みの客室設備、さらに非常に温
 浴効果の高い天然温泉がある。これらを含めた宿代は6000円ほどで済むため、コストパフォーマンスは高い。実は、3度目になるほどのお気に入りで、私にとっての道北エ
 リアの一大拠点になっている。翌朝を7:20ごろ宿を出発し、駅までの1kmあまりを歩く。天塩川に氷の塊が流氷のように流れている。清々しい朝の運動は、重たい荷物を持
 った雪中歩行のため、少しばかりハードだ。だが、これから待っている秘境駅の訪問に期待が膨らみ、苦になることは無い。やはり体から湧き上がる元気は、こうして生まれ
 るものと実感。天塩川温泉駅にたどり着くと、待合室内にストーブが点いている。体はすっかり温まっていたが、列車を待つ短い間であっても有難いものだ。こうして7:49発
 の名寄行きに乗車するが、僅か18分後の8:07にはこの紋穂内駅に降りてしまう。駅に着く頃から、空はどんよりしていて大雪が降っている。時間が無いため、構わず撮影を
 始めたが、しつこいほどレンズに付着する雪に正直ウンザリしていた。しばらくして晴れ間が覗いてきた。ほの暖かい日差しは私だけでなく、この貨車待合にとっても嬉しい
 ことであろう。