02/04/10 作成  07/07/15 加筆修正

南美深駅

宗谷本線“南美深駅”極寒の朝、誰もが気付かず通り過ぎてしまいそうな駅に、独り降り立つ男は何を思うのか・・・

       

何とも言えない雰囲気を持った待合所   扉が壊れていて、内部にはびっしりと雪が舞い込んできている   停車する列車は少なく、利用者は極少ない

  訪問日記   2002年1月5日 訪問

  この駅は宗谷本線に数多くある秘境駅を訪問してきた私にとって、同じ北海道の中に数多くある同種の駅と比較して、ここはまだ及第点をに及ばない駅だと考えていた。
 しかし、時刻表を見る限りこの駅に停車する列車は3往復/日しかなく、列車の一両分にも満たない板切れホームと牧場に見られるような物置小屋を思わせる、老朽化が著しい
 味わい深い待合室の存在など、興味深いアイテムが揃っているので、思い切って訪問してみることにした。 周囲に人家は2軒ほどあるが、本当にこの駅を定期的に使っている
 かどうかは不明。 今まで、何度かこの駅を通り過ぎては来たが、一度も乗降客を見たことが無かったので、秘境駅として自分自身で勝手に築き上げたイマジネーションは
 怒涛の如く加速して行った。

 今回の旅は東北方面を重点的に周るつもりであったが、電灯に集まる蛾のような気分になって、何となく吸い寄せられてしまい、気が付いたら北海道の大地へと踏み入れて
 しまっていた。 それは、JR線乗りつぶしをする上で、仙石線や石巻線とかあまり面白くないと思われた路線を巡っていたために、フラストレーションが溜まっていたのであろう。
 半ば無意識のうちに仙台駅で秋田駅発着の北海道ゾーンきっぷを購入していたのである。 (^^;
 こうなったら、今まで行けなくて見送っていた駅をトコトン訪問してやろうと考えた。 こうして、秘境駅ファンの魅惑の路線とも言える、まっすぐ北へと伸びている宗谷本線へと
 踏み入れた。 その時の勢いだけは凄かったが、さすがに時間が遅くなってしまったので、今回で2回目の宿泊となる「天塩川温泉」へと投宿した。 公共の宿としては飯は美味いし、
 部屋はシティホテル並の設備とあって、1泊5000円程度なので本当に激安である。 しかし、前回は真冬でも露天風呂に入れたのが、寒暖の差が激しく危険とのこと? で、
 内湯だけだったのはちょっぴり残念ではあった。

 明くる日その宿を6:30の早朝に出発して、一番列車に乗り込み、この“南美深駅”に降り立った。 当然、乗降客は私だけ。 列車は雪煙を残して淡々と遠ざかって行く。
 しかし、このボロい待合室は実に郷愁を誘う。 周囲の状況は本当に判り易く、これ以上行動しても無意味に感じられる。 次の列車まで約1時間、この待合室でぼんやりと佇んで
 いたのだが、流石にこの強烈な寒さには勝てず、意味無く歩き回ることの大切さを噛み絞めていた。
 こんな駅でも、ちゃんと時刻表に掲載され、停車するべき列車は乗降客が誰も居なくても、律儀に停車してきちんとドアを開閉し、汽笛とともに去って行く。 一連の動作は秀作の
 ように出来上がったマニュアルに基いてシステム化されているので、一見するとツマラナイ様に感じてしまうのであるが、もしも駅が廃止されてしまったら? まず時刻表からは
 削除され、停車どころか減速もせず、汽笛も鳴らさず、挙句の果てには運転士でさえも意識ぜず、そのまま通り過ぎてしまう。 そして地元に住んでいる人々の記憶さえも奪って行く。
 これほど寂しいことはない。 秘境駅を愛する私(そして沢山のファン達)にとって、そんな駅でも生涯現役であってこそ意味を成すものと考える。  

 このような誰も降りないような駅に降り立つことで、大方は時間の浪費と片付けて仕舞われがちであるが、それと引き換えにもっと大切なモノが見えた気がする。
 誰かに教わったわけではないが、目の前にあるモノの存在理由、その大切さを考えられる理解力が得られたことは、自分自身にとってこの上ない財産になったような気がしてならない。