2002/04/10 作成

南美深駅

宗谷本線“南美深駅”極寒の朝、誰もが気付かず通り過ぎてしまいそうな駅に、独り降り立つ男は何を想うのか

      

何とも言えない雰囲気を持った待合所   扉が壊れていて、内部にはびっしりと雪が舞い込んでいる   停車する列車は少なく、利用者は極少ない

   訪問日記   2002年1月5日 訪問

  ここは宗谷本線にある小さな駅。時刻表を見る限りこの駅に停車する列車は3往復/日しかなく、列車一両分にも満たない板切れホームと、物置小屋を思わせる待合室が
 印象的だ。周囲に人家は2軒ほどあるが、駅を定期的に使っているかどうかは判らない。今まで、幾度か停車時に観察したが、一度も乗降客を見たことは無かった。やはり
 自身で降りて調査するしかない。こうして自分自身で勝手に築き上げたイマジネーションは怒涛の如く加速して行った。

 今回の旅は東北方面を重点的に周るつもりであったが、北海道の地図を眺めているうち、電灯に集まる蛾のような気分になっていた。これは、JR線を乗りつぶす上で、仙石
 線や石巻線などあまり興味をそそらない大都市の近郊路線を巡っていて、フラストレーションを溜めてしまったことも一因だ。旅の日程に余裕があったことも追い風になった。
 仙台駅で秋田駅発着の北海道ゾーンきっぷを購入し、こうなったら今まで見送っていた駅をトコトン訪問してやろうと決意する。こうして秘境駅ファンの魅惑の路線として名高
 い宗谷本線へと踏み入れた。勢いだけは凄かったが、さすがに時間も遅くなったので、今回で2度目となった“天塩川温泉”へ投宿。公共の宿としては飯は美味いし、部屋は
 シティホテル並の設備で、しかも1泊あたり5000円ほどでコストパフォーマンスは最強ランクの宿である。ただ、前回は真冬でも露天風呂に入れたが、寒暖の差が激しく危険と
 のこと?で、内湯のみだったのは少々残念ではあった(厳寒期の野外給湯によるコスト増を避けた可能性も否めないが…)。

 明朝6:30の出発し、一番列車に乗り込んで、この“南美深駅”に降り立った。当然、乗降客は私だけ。列車は雪煙を残して遠ざかって行く。周囲はあまりに開けた雪原のため
 判り易く、これ以上行動しても無意味に感じられ、次の列車まで約1時間は待合室にぼんやりと佇んでいた。しかし、容赦なく襲う強烈な寒さには勝てず、意味も無く歩き回る
 ことの大切さを全身で噛み絞めることになった。こんな小さな駅でも、時刻表に掲載され、停車する列車は乗降客が居なくても、律儀にドアを開閉し、汽笛とともに去って行く。
 一連の動作は完成されたマニュアルに基いているので、一見するとツマラナイ様に感じてしまう。だが、駅が廃止されてしまったら?まず時刻表から削除され、停車どころか
 減速もせず呆気なく通過して行くに違いない。時間も経てば地元に住んでいる人々の記憶さえも奪って行くであろう。これほど寂しいことはない。秘境駅を愛する私にとって、
 小さな駅でも生涯現役でこそ意味を成すと思うのだ。かような駅に降り立つ趣味とは、大方は時間の浪費と片付けられて仕舞いがちだが、時間と引き換えに、大切なモノが
 見える気がする。誰かに教わったわけではないが、目の前にあるモノの存在理由、大切さを考えられるようになったことは、自身にとってこの上ない財産になった気がしてな
 らない。