2000/3/30  作成

道後山駅

芸備線 “道後山駅” 当路線の最高所にあるこの駅は、誰も来ないスキー場と朽ち果てて行く廃屋が寂しく迎える


    

駅舎は古く、割と大きめで消防車の車庫となっている    待合室は扉もピッタリと締め切りが出来るし、水道もあって駅寝に最適な環境である


  訪問日記  2000年3月18日訪問

  中国山地を縦断する芸備線。ここは同線の中でも最も標高が高く、611mにも及ぶ。周囲の人家は7〜8軒あるが、ほぼ半数は既に廃屋となり、人影も稀で寂しい雰囲気が漂って
 いる。開業当事から建っていると思われる駅舎は、木造モルタル張りの古いもの。無人化されて久しく、待合室と隔てた元駅務室は、消防ポンプ車の車庫になっていた。短い階段を
 上がってホームに出ると、眼前にゆるやかなスロープが見える。ススキが揺れる古いスキー場の跡地だった。ふもとにはレストハウスを兼ねた民宿が残り、賑わった頃が偲ばれる。
 近年の地球温暖化で雪が少なくなったのか、新たに開発された大型スキー場の影響か、そもそも列車を使ってスキーへ行くスタイルが廃れたことにも大きな要因があろう。時代の
 流れとともに、ただ吹き抜ける風も冷たく頬を刺す。かような場所へ人恋しくなる季節に訪れるものではない。言葉を返せば、それだけ心情に沁みる風景に出会える駅である。

 今回の中国山地の秘境駅を巡る秘境駅の旅で、ここに来る前夜、2駅先である“内名駅”での駅寝を敢行したが、待合室が締め切り出来ずに寒い思いをした。それに引き換えここ
 には古い駅舎が残り、扉もしっかり閉められるうえに、造り付けの椅子に座布団も備わっていた。さらに外には水道も出る蛇口もあり、居住環境は最高ランクに値すると思われた。
 附近の散策を終え、人気もほとんど感じることのない駅の待合室に暫し佇んでいると、何処からともなく一人のおじさんがやって来た。彼の方から「おはようございます」と挨拶され
 たので、こちらも遅れ馳せながら返したのを皮切りに、色々とこの駅について話を聞いた。今ここを利用しているのは5人だけ。以前は沢山利用者も居たが、皆この地を去ってしまい、
 残されたのは老人ばかり。昔はスキー場が家族連れで賑わったことなど、訛りが強くて良く聞き取り辛かったが、しみじみと話して下さった。こうして何もかもが自然に還って行くの
 だろうか…。しばらくして先程乗ってきた列車が備後落合で折り返して来た。おじさんに別れを告げ、山間の駅を後にした。